『NieR:Automata』発売7周年記念!
プラチナゲームズ スタッフのアニバーサリーアートをお届け!

2024.02.23

全世界累計出荷&DL販売数が800万本を突破!
2017年2月23日に発売された『NieR:Automata』は、本日でリリースから7周年を迎えました。※日本国内版

TVアニメ化や、シリーズ楽曲のオーケストラコンサート世界ツアーNHK総合「ゲームゲノム シーズン2」での特集など、今なお話題が絶えない『NieR:Automata』!7周年を記念し、プラチナゲームズのスタッフが制作したアニバーサリーアートをご紹介します。


7th アニバーサリーアート


西井智子


” シリーズの未来に栄光あれ~ ”
(高画質はこちら)

石丸真衣


” この子の7つのお祝いに。。。
7周年おめでとうございます ”
(高画質はこちら)

高橋佑佳


” 出会えてよかった。
7周年おめでとうございます! ”
(高画質はこちら)

笹谷幸矢


” 本当に、本当にありがとうございました ”
(高画質はこちら)

澤田蒼生


” 7周年おめでとうございます。 ”
(高画質はこちら)

関隼利


” 作戦開始から7年が経ちました。
作戦完了まで、一緒に頑張りましょうね!
以上、定期連絡でした。 ”
(高画質はこちら)

daible


” この世界に捧げます ”
(高画質はこちら)

 


メディア出演情報

NHK総合「ゲームゲノム シーズン2」
『NieR:Automata』

出演
MC 三浦大知さん
2B役声優 石川由依さん
クリエイティブ・ディレクター ヨコオタロウさん
シニアゲームデザイナー 田浦貴久 (プラチナゲームズ所属)

NHKプラスで見逃し配信中(放送後1週間)
https://plus.nhk.jp/watch/st/g1_2024022116312

 


製品情報

『NieR:Automata』

[PS4版]
対応機種 : PS4 | ジャンル : アクションRPG | 発売日 : 2017年2月23日 | 価格 : 8,580円(税込) | レーティング : CERO D | 発売元 : 株式会社スクウェア・エニックス | 開発元 : プラチナゲームズ株式会社 | 著作権表記 : © SQUARE ENIX Developed by PlatinumGames Inc.

[Steam版]
対応機種 : Steam | ジャンル : アクションRPG | 発売日 : 2017年3月18日 | 価格 : 8,424円(税込) | レーティング : CERO D | 発売元 : 株式会社スクウェア・エニックス | 開発元 : プラチナゲームズ株式会社 | 著作権表記 : © SQUARE ENIX Developed by PlatinumGames Inc.

『NieR:Automata BECOME AS GODS Edition』
対応機種 : Xbox One, Windows(*ダウンロード販売のみ) | 発売日 : 2018年6月26日 (Xbox One), 2021年3月18日(Windows) | 価格 : 5,280円(税込)| 著作権表記 : © SQUARE ENIX Developed by PlatinumGames Inc.

『NieR:Automata Game of the YoRHa Edition』
対応機種 : [PS4], [Steam]
| 発売日 : 2019年2月21日 (PS4), 2019年2月27日(Steam)| 価格 : 5,280円(税込)| 著作権表記 : © SQUARE ENIX Developed by PlatinumGames Inc.

『NieR:Automata The End of YoRHa Edition』
対応機種 : [Nintendo Switch] | 発売日 : 2022年10月6日 | 価格 : 5,280円(税込)| 著作権表記 : © SQUARE ENIX

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『NieR:Automata』世界累計出荷・ダウンロード販売本数400万本突破記念★プラチナゲームズスタッフからのお祝いコメント&イラスト

2019.05.28

こんにちは!プラチナゲームズでゲームデザイナーをやっています、根岸です。『NieR:Automata』では、RPG要素・レベルデザインを担当させていただきました。

今回、ヨコオタロウさんによるディレクションの下、プラチナゲームズが開発を手掛けた『NieR:Automata』の世界累計出荷・ダウンロード販売が400万本を突破しました!

先ずはプレイしてくださった皆さん、サポートしてくださった皆さんへ、感謝の気持ちをお伝えしたいです。本当にありがとうございます!

そして、プロデュースしてくださったスクウェア・エニックスさんをはじめ、プロデューサーの齊藤陽介さん、ディレクターのヨコオさん、キャラクターデザイナーの吉田明彦さん、コンポーザーの岡部啓一さん、『NieR:Automata』に携わられた沢山のクリエイターの皆さん、400万本の達成おめでとうございます!

正直、僕としてはこの巨大な数字自体にはあまり実感が無いのですが、今でもTwitterやYoutubeなどで話題に挙げていただくことも多く、多くの方に愛され遊んでいただいているのだなぁと、日々ありがたく思っております。

そして、今回は400万本達成を記念してプラチナゲームズの開発スタッフからお祝いコメント&イラストをもらいましたのでご紹介させていただきます!それではどうぞ!


◆ ◆ ◆

ふと気がつくと発売からもう2年が経過し、400万本というプラチナゲームズ史上未踏の数字が積みあげられておりました。全て支え続けてくださった、ファンの皆様のおかげかと思います。本当にありがとうございました。
ヨコオさんとスクウェア・エニックスさんが作り上げた世界に、我々がお邪魔させていただいた形になりますが、この数字を見てようやく安心できた気がしています。今後とも、よろしくお願い致します。

プロデューサー 西村 栄治郎

400万……。想像のつかない未到達領域過ぎて、正直実感が全く湧いていないのですが、これだけ多くの方々に遊んでいただけている事実に、ただただ感謝の気持ちでいっぱいです!『NieR:Automata』を、これからもよろしくお願いいたします。

VFX 田中 孝治

400万本達成おめでとうございます!『NieR:Automata』という作品の制作に関われたこと、『NieR:Automata』を買ってプレイしてくれた全ての人に感謝します。2B達ヨルハ部隊は普段黒い眼帯をしていますが、眼帯が外れた後の表情がプレイしてくれた皆様のイメージ通りの印象になっていれば幸いです。

シネマティック 岩神 崇博

400万という数字はなかなか実感が湧かないですが、『NieR:Automata』が400万本という数字になるまで支えてくださったファンの方々には感謝してもしきれません!これからもジワジワと売れ行きが伸び続けて、500万本のお祝いコメントを寄稿できることを夢見ています……。

プログラマー 平川 祥一

『NieR:Automata』400万本おめでとうございます!!ひとえにファンの皆様のおかげで、達成された数字です。只々感謝!!の一言です。多くの皆様に楽しんでいただけたのなら、喜ばしいことです。

キャラクターモデル 田崎 一軌

知らない間に大きくなった親戚の子供。
それが『NieR:Automata』。
(訳:400万本達成オメデトウゴザイマス)

プログラマー 大西 亮

400万本達成おめでとうございます!そして遊んでくださっているユーザーの方々、本当にありがとうございます。これだけ多くの方々に遊んでいただけることは、制作に携わった側としてはとても嬉しく、まさに開発者冥利に尽きます。

サウンドデザイナー 中 康洋


400万本達成おめでとうございます!
世界では400万本も売れているのに、うちの家族はゲームをしないので一本も買ってくれませんでした。なので、買って遊んでくださったユーザーの方々への感謝の気持ちを忘れずに生きていこうと思います。本当に、本当にありがとうございました。

ゲームデザイナー 宮田 真帆

自分がこの業界に入って初めてキャラクターモデラーとして関わったタイトルなので、たくさんの人に遊んでいただいてとてもうれしいです!本当にありがとうございます!!モデル作成が終わらなさ過ぎて情熱以外のさまざまな感情が練りこまれて生まれた飛行ユニットで、今後も機械生命体をたくさん駆逐していただけたら凄くうれしいです。人類に栄光あれ!!

キャラクターモデル 松下 祥風

400万本すごいですね!こんな経験ははじめてなのでとてもうれしいです。ファンの皆さんには感謝しかありません。ありがとうございました!!!

ライティング 亀岡 昇平


400万という多くの方の手に届いたことは大変嬉しく思います。
さまざまな受賞や今回のようなニュースなど、発売されてから嬉しい出来事が続きましたが、開発中にゲームが形になっていく楽しさと、完成して初めて世に出せたときの嬉しさが未だに一番印象深く、『NieR:Automata』は自分にとってそれだけ思い入れのあるタイトルだと感じています。

UI/コンセプトアート 木嶋 久善


400万本達成おめでとうございます!
いつのまにかそんなに売れていたなんてビックリですね!たくさんの方に愛される『NieR:Automata』の制作に関われたことが嬉しいです。

エンバイロメント 山本 佳奈

発売から2年たった今でもこのように売れ続け、ユーザーの皆様に愛されるのは、本当に素晴らしいことだと思います。開発に関わられたすべての皆様へおめでとうございます!そしてユーザーの皆様、ありがとうございます!
ニイチャン……ウゴイテ……、400マンウレタカラ、ニイチャンウゴク。ニイチャン、モウダイジョウブ!

サウンドデザイナー 進藤 美咲

こんなにも沢山の方から愛されるゲーム制作に関われたことを嬉しく思っています。発売後は色々な意味でドキドキしていました。遊んでくださった皆さんありがとうございます!

アニメーター 村中 高幸

400万本、とても多くの方にプレイしていただいていることに驚いています。大変光栄で委縮してしまいます。ご購入いただいた方も広めてくださった方も友達の隣で盛り上がってくださった方も、このタイトルに興味を持っていろいろな形で応援してくださったこと、本当にありがとうございました。

ゲームデザイナー 藤田 真理

発売してから月日は経ちますが、さまざまなメディアを通して今もまだ『NieR:Automata』がユーザーの皆さんに愛されていることを目にするたび、やる気元気を頂いています。皆さん、本当にありがとうございます!これからももっと発信してください!!

シネマティック 高島 正規


これだけ日にちが経って、まだまだこんなお知らせが聞けるとは驚きです。作業に取り掛かるにあたって、初めにシナリオを読み「こりゃすごい……」と思ったことを思い出しております……

アート 須田 裕貴

400万本達成おめでとうございます!!すごいなあ……
制作に関われたことがとても光栄です!!

エンバイロメント 比嘉 奈美恵

400万本おめでとうございます。発売からそこそこ経ちましたが、未だに話題に上るし、大きくなったなぁ……と目を細めるばかりです。制作に関われて本当に幸せでした。

アート 西井 智子

400万本達成オメデトウゴザイマス!!イッパイ売れてワタシ嬉しい!!皆様アリガトウゴザマス!!

ゲームデザイナー 髙田 翔平

ちょっとお手伝いしただけですが、たくさん売れてよかったです。おめでとうございます。

プログラマー 井上 和憲

400万本おめでとうございます!こんなにも長くたくさんの方に楽しんでいただけてとてもうれしいです!この作品に少しでも携わることができてよかったなぁと思います。

エンバイロメント 久保田 操

『NieR:Automata』の開発に関わった期間は短いですが、これからも語り継がれていくであろう偉大なタイトルの開発に少しでも携われたことを光栄に思います!!

UI 大倉 健太

発売日が話題作に挟まれて売れるかな~と危惧していましたが、じわじわ売れて400万本!おめでとうございます!!

プログラマー 岡部 健信


あんなに身近にいたヨコオさんが400万本売った男として遠い存在になってしまい、嬉しい気持と寂しい気持ちで胸が締め付けられています。心から、おめでとうございます。そして、遊んでいただいた多くの方々には感謝しかありません。本当に、本当にありがとうございました。

ゲームデザイナー 田浦 貴久

◆ ◆ ◆



さらに、弊社の神谷からコメントを預かりましたので、ご紹介させてください!

いかがでしたでしょうか。
各々のコメント・イラストから、驚きと喜び、そして遊んでくださったユーザーの皆さんへの感謝の思いが伝わったかと思います。我々は、今後も『NieR:Automata』に負けないくらい魅力あるタイトルを開発していきますので、皆さん応援よろしくお願いします!

それでは、ごきげんよう!

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『NieR:Automata』における空間音響表現と多様なゲーム性に対応するWwise制御【後編】

2019.01.17

【前編】はこちら>>



2. 多様なゲーム性へ対応するWwise制御

最初にお話ししたように、本作ではカメラポジションが通常のバックビューに加え、トップビュー、サイドビュー、シューティングビューなど頻繁に切り替わるので、音響空間表現もそれらのあらゆる変化に対応する必要がありました。


・リスナーポジションをインタラクティブに切り替える

先ず、基本となるデフォルトのリスナーポジションをどこに配置するのかという問題ですが、どのカメラアングルにおいてもアクションの爽快感が損なわれないようなバランスを目指した結果、プレイヤー付近にデフォルトのリスナーポジションを配置することがベストだという考えに至りました。

プレイヤー付近に配置することで、カメラがどのようなアングルになろうと、基本的なMIXバランスや、アッテネーションなどは大きくずれることはないので、ユーザーは特に違和感なくゲームをプレイすることができたのではないかと思います。

デフォルト リスナーポジション

シューティングを除くトップビュー、バックビュー、そしてサイドビューのほとんどは、デフォルトのリスナーポジションでカバーすることができましたが、カットシーンなどは、演出上特別な対応が必要な箇所がありました。

こちらのシーンは、2B達が劇場で敵である機械生命体の演劇を観る、という少し特殊なシーンになるのですが、プレイヤーから劇が行われるステージまで距離があるので、リスナーポジションがプレイヤーの位置のままだと、演劇の音が狙った音量バランスになりません。このような場面に対処するため、リスナーポジションをサウンドデザイナー側から、必要に応じて切り替えられる機能を用意しました。

ステージからプレイヤーまでの距離
(小さく見えていますが赤い点がリスナーポジションです)

リスナーポジションをデフォルト位置からステージの中央付近に移動
(プリセットNO.11)

このように複数のリスナーポジションのプリセットを用意しておき、サウンドデザイナーが任意に指定したエリア位置や、WwiseEventから切り替えられる仕組みになっています。

上記のシーンでのWwiseEventの操作画面
(リスナープリセット切り替え中)

またリスナーポジションの切り替えの際に、3D配置の音飛びが出ないよう、パラメーターを調節し補間処理を行っています。特にディレクターのヨコオさんは、こういった、いわゆる繋ぎの部分での音のシームレスさにもこだわりを持たれていたので、ゲーム全体を通して、違和感のない音の繋ぎを目指しました。



・特殊なアッテネーション
 
アッテネーション設定においても、特殊なカメラアングルに対応するために特別なアッテネーションカーブで対応しているものがあります。

こちらのシーンは、カメラがプレイヤーから大きく離れ、ステージ全体の広さを見せつつ、ゲームプレイが進行するという場面の実際のゲーム画面ですです。ほとんど見えないですが、画面中央の赤い小さな点の場所にプレイヤーがいます。リスナーポジションについては、デフォルトのプレイヤー付近よりも遠い位置に配置し、音自体が少し遠目に聞こえる演出にしています。

プレイヤーキャラクターと、リスナーポジションとの距離
(右下の赤い丸がリスナーポジション)

リスナーポジションとプレイヤーまでの距離は常に固定されているので、少し離れたイメージの音量バランスは保たれますが、敵キャラクターとの距離は通常の想定よりも大きく離れているので、この状態ではすぐにアッテネーション外になってしまい、敵キャラクターのSEはほとんど聞こえなくなってしまいます。

リアルに考えると正しい挙動なのですが、ユーザーが敵キャラの存在に気付けなくなってそれがストレスになることがあります。(グラフィック的にも、離れているのでキャラクターが小さく、視認が難しい)

そこで、少し特殊なアッテネーションカーブを用いて、一定以上の距離は減衰しないよう設定することで、ユーザーが音で感じる違和感を補間する処理をしています。



・多数の音源の発音制御

最後に、本作で採用した発音制御システムを紹介したいと思います。この作品は、シーンによって多くの敵キャラクターが配置されるため、全ての音を素直に鳴らしてしまうと、CPUが足りなくなってしまいます。

同時に発音される音は、常に50~60音の間で推移するよう調整し、発音の制御については、大きく2段階に分けて行いました。

  1. ゲームプログラムが、WwiseにEventのコールを行う前の段階での制御
  2. Wwiseが、Eventを発音してからの制御

「2」については、Wwise内での、VoiceLimitや、DistanceによるPriorityで制御するといった、一般的なものですので、今回は、「1」の制御についてご説明したいと思います。

大きく分けて、カリング機能、通過音制御、同時発音制御と分類される3つの機能をメインに使用しており、これらはWwiseのEventをコールする前に処理されます。この工程を入れることで、Wwiseに大量の不要なWwiseEventの命令が送られ、Wwiseがhang upするのを防いでいます。

また、これらの機能はWwiseのそれぞれのEventもしくはアッテネーションのパラメーターのメモ内にコマンドを書き込むことで制御が可能になります。

アッテネーションへのコマンド記述の例
(カリング: –C、同時発音制御:–L2)



・カリング制御

先ず、アッテネーションのMax distance より遠くで発音される音を、カリングする処理が入ります。多くのアッテネーションパラメータに書き込まれています。

コマンド パラメーター 内容
-C [level] [distance] level 0-15 (def 1), distance 0-65535 (def 0) level を 1 以上に設定すると Maxdistance より遠くで発音されるイベントが呼ばれなくなります。また、distance より遠くで発音するイベントが概ね level 回に 1 回呼ばれるように間引かれます。性質上 -P との共存はできません。



・通過音制御

次に、通過音制御になります。今作では待機ループSEなどの制御に使用しており、敵の浮遊音などのループSEがそれにあたります。これらのキャラクターはMax distanceより遠くで配置されることも少なくないので、その場合は上記のカリングは使用せず、WwiseEventが遠くでコールされた場合でも、実際のWwiseEventのコールをMaxdistance内になったタイミングでコールされる仕組みを入れています。

コマンド パラメーター 内容
-P [distance] distance 0-65535 (def Maxdistance) イベントが遠くで呼ばれた場合に、実際のイベント起動を distance まで近づいてから行うようになります。性質上 -C との共存はできません。



・同時発音制御

最後に、MaxDistance内の距離でコールされるものの内、大量に同時コールされそうな特定のWwiseEventについて、発音制御を設定します。指定したフレームより短い時間内に同じ名前のWwiseEventが繰り返しコールされた場合に、後から発生したものをコールしないよう制限をかけています。

コマンド パラメーター 内容
-L [frames] [target] frame 0-63 (def 1) target g or o (def g) frames を 1 以上に設定すると、同じ名前のイベントが frame で指定したフレームより小さい間隔で呼ばれた場合に、後から発音した側を呼ばないようにします。target に o を指定した場合は同じオブジェ(パーツ番号は問わない)から呼ばれた場合のみに制限がかかります。

これらの制御は、プログラマーの手を介さず、全てサウンドデザイナーが自ら設定・調整することが可能で、この仕組みを確立することこそ、最も重要視した点でした。




3. オーディオをよりインタラクティブに表現する
オリジナルWwise Plug-in



・LoFi Plug-in

lo-fi 処理は割と一般的ですが、不快にならない lo-fi 感を出すのは難しく、こういった表現を自由に行えるようにするのは、リアルタイムオーディオの役割の一つだと思っています。

実際、『NieR:Automata』でのlo-fi のエフェクトは、通信時の音声やプレイヤーの感覚に異常が起こった時の演出など、非常に多くの場面で使用していますが、エフェクト自体の動作がとても軽く作られているので、多くのAudio busやActor Mixerにインサートしています。また、lo-fiエフェクトはMultiエフェクタープラグインの一部であり、実際は下記のように、ディストーションや、フィルター、フランジャーなど、いくつものエフェクトの機能を兼ね備えたプラグインとなっています。ハードウェアのギターエフェクターなどの制作経験がある木幡らしい、シンプルな操作感で音はしっかり変わるという、サウンドデザイナー目線でもありがたいコンセプトで作られています。

プレイヤーキャラの2Bがウイルスに汚染されていく演出の際の、LoFiのパラメーター
※左が汚染レベル0で、右に行くにつれ汚染レベルが上がり、loFiのかかり具合が強くなる。

lo-fi の DSP を図で表すとこちらのようになっています。モノラルの場合の図ですが、多チャンネルある場合にはチャンネル毎に同じ処理を行います。

lo-fi DSP Diagram



・lo-fi処理の流れ

  1. サンプリングレートを一旦半分の 24kHz に落とす。
    (これは処理負荷の軽減と lo-fi なので高レートが不要なため)
  2. 前回値に一定量近づけた後、Quantize処理を行う。
    (前回値に近づけるのは、Quantize によるノイズ感やザラザラ感が強く出過ぎてしまうのを防ぐため)
    ※前回値に近づける量を増やすと、音の途切れ途切れ感が増し、Quantize を粗くすると、音のノイズ感やザラザラ感が増します。全体としては単純な作りになっているのですが、前回値に近づける処理がポイントになります。
  3. サンプリングレートを戻して、Outputする。

このように一見ありふれた処理でも、ひと工夫加えることで、没入感のある雰囲気を作り出すことができます。



・Voice Changer Plug-in

インタラクティブな表現とは異なりますが、このVoice Changerも本作の世界観を表現するうえで重要なWwiseプラグインです。ゲーム内で特定の条件を満たすと、オプション設定から、操作プレイヤーのボイスにエフェクトをかけることが出来るようになるという仕組みです。

2B達はアンドロイドなので、設定によって声を変えることもできるだろうという考えの元、ピッチのシフトだけでなく、ロボットが話しているようなイメージなど、様々なバリエーションを作れるものを目指しました。

ピッチシフター、タイムストレッチ、グリッチエフェクト、ピッチコレクトなど、複数の機能を組み合わせたエフェクターです。

実際のゲームでは11種類のプリセットを用意しましたが、ユーザー目線で変化がわかりやすく、そして効果が重複しないようパラメーターの値を決めました。このプリセットを決める作業は楽しくもあり、苦労した点でもあります。市販のエフェクターやシンセのプリセットを考えておられる方を尊敬します……。

本作でのボイスチェンジャーの設定パラメーター



・機械生命体ボイスエフェクト

Wwiseとは直接関係ないのですが、聞かれることも多いので、機械生命体のボイスエフェクトのメイキングをご紹介させていただきたいと思います。

本作で敵キャラクターとして出てくる機械生命体のボイスには、それぞれロボットをイメージさせるエフェクト加工がされています。その肝は、ピッチを揃えるロボット加工ですが、ピッチコレクトエフェクターは色々なメーカーから発売されており、選択肢も幅広く、いくつか試してみました。最終的にはNuendo付属のPitchcorrectを採用したのですが、それ以外も性能面では問題なく、きっちりとピッチを揃えることが出来ました。

Nuendo付属のものを採用した理由は、他のものに比べ、元音のピッチの揺れ具合によって少し癖のある音がゆらぐようなかかり方をすることがあったのと、Formantの機能が他のものにはないデジタル感もあり、人間臭さも感じるような良いかかり方をしたからです。ピッチが揺らぐ感じは、機械生命体達が人間を模倣しようと、なんとか頑張ってイントネーションを再現したようにも感じられました。

・機械生命体のボイス加工に使ったプラグイン

個人的にはここが重要なポイントでした。クールで感情を出さないアンドロイドの2Bとは逆に、敵キャラである機械生命体は、ロボットだけど温かさや感情を感じられるものにしたかったからです。

実は、機械生命体のボイスは、音声収録の際、ピッチをなるべく一定にして収録したパターンとピッチを揃えず普通にイントネーションをつけて収録したもの、2パターンを用意していましたが、最終的にはピッチを揃えないものを採用しました。

ピッチの雰囲気が決まった後は、DelayやFlanger、Speakerphoneで、機械生命体に内蔵されているであろうスピーカーから、聞こえるようなイメージになるよう、エフェクトを足していきました。




4. 最後に

改めて開発過程を思い返すと、あらゆる表現をWwise上で制御することに成功した、と言えるかと思います。一つのツールで制御出来るということは、パラメーターの管理や、デバッグにおいても大変便利で、他のプロジェクトへの応用も容易になりました。

今回は、音響空間表現に主軸をおいて、ゲームオーディオのクオリティアップを目指しましたが、今回用いた手法や、プラグインは、まだまだ発展の余地があるものばかりです。

例えば、Simple3Dは簡単に立体感のある音像を表現できるプラグインですが、今作では音の方向を立体的に表現するにとどまっていました。今後はリスナーと音源位置の距離に応じた、立体感の表現などにも挑戦していきたいと考えています。K-verbについても更なる質感の向上を行っていきたいですし、遮蔽情報と絡めたより網羅的なシステムを構築したいと考えています。

また、音響空間表現とは異なりますが、ハードの進化によって、膨大になりつつあるゲームモーションへの音付けの自動化についても、現在挑戦しています。単純な工数の削減を狙うだけでなく、そこから新しい発想や、表現が生まれるようなツールにすることが、近い将来の目標です。

ゲーム制作をする上で、ツールはたくさん用意されており、また課題もたくさんあります。日々、この課題にどう対応していくかという議論が、サウンドデザイナー、コンポーザー、プログラマーの間で繰り広げられていますが、これはどこのゲーム会社でも同じなのではないかと思います。そんな訳で今回は、Wwiseを使用している各国のゲームクリエイターの皆さんに、微力ながら何か役に立てることがあればと思い、記事にさせていただきました。少しでもヒントや、アイディアの種となれば幸いです。

Audiokinetic Blogより転載





shindo進藤美咲 Misaki Shindo
バンドでのインディーズ活動や、楽器販売店での勤務を経て、2008年にサウンドデザイナーとしてプラチナゲームズに入社。最新作『NieR:Automata』では、リードサウンドデザイナーとして、SE制作、Wwise実装、SE全体のシステム構築を担当。



kohata木幡周治 Shuji Kohata
電子楽器の開発会社を経て2013年にプラチナゲームズへ。オーディオプログラマーとして、サウンド表現の技術面を支えている。『NieR:Automata』では、システムの整備やオーディオエフェクト(音響効果)の実装を担当。“新しい感触のサウンド表現の研究とゲームへの反映”を目標に、日々関連技術の研鑽に努めている。

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『NieR:Automata』における空間音響表現と多様なゲーム性に対応するWwise制御【前編】

2018.12.14

NieR:Automata』は、異星人の侵略によって人類が月へと追われて荒廃した地球を舞台に、地球を取り戻すべく人類側が製造した「アンドロイド」と、異星人が製造した兵器「機械生命体」との戦いを描いたアクションRPGです。

基本的なアクション部分は後方カメラの三人称視点ですが、ステージによってはトップビューからサイドビューに変化したり、ゲーム性もサウンドノベルタイプやシューティングに変化したりと、アクションだけにとどまらない多岐にわたるゲーム性が特徴です。

制作チームが最初に取り組んだのが、舞台となる荒廃した地球の表現です。人類がいなくなって高層ビル群が廃墟化し、そこに植物が生い茂るという、廃墟と大自然のコントラストをいかに表現するかが課題でした。加えて、オーディオについては、フィールドで足を止めてその雰囲気を味わってもらえるように、「没入感」を出すことに重点を置いて制作を進めました。

さらにアクション部分では、以下に代表されるようなカメラアングルの変化への対応、数多く配置されるオブジェクトの発音などの「制御」が課題となりました。

サイドビュー

トップビュー

シューティングビュー

ハッキングゲームビュー

オーディオチームが本作でどのようなWwise実装を行ったか、ひとつずつ解説していきたいと思います。




1. 没入感を高めるための音響空間表現

音響空間表現とは、リバーブやオクルージョン、3D オーディオエフェクトなどを指しています。これらは、グラフィクスにおけるシェーディングにあたる部分で、音響に現実味を与え、没入感や臨場感を高めるためのものです。また、共通の雰囲気付けを行うことで、サウンド全体を馴染ませる役割も果たしています。

先ずは、今回我々が新しいアプローチで取り組んだ3D オーディオエフェクトとインタラクティブリバーブについてご紹介したいと思います。


【1】3Dオーディオエフェクト

3Dオーディオについては、「再生環境に依存しないエフェクトを作る」というコンセプトでスタートしました。『NieR:Automata』 は VR やヘッドホン推奨といった特徴を持ったゲームではないため、普通のステレオスピーカー環境においても、立体感を感じられるような表現を実現する必要があったからです。また、サウンドデザインし易いよう原音を損なわないことも重視しました。

特に、正面から聞こえる音をデザインした通りに鳴らすことは、バランス調整をする上で重要なことです。ただし、殆どの音にエフェクトを適用できるようにしたかったので、処理負荷を低く保つことが大前提でした。数音にしか適用できないものになってしまうと、プレイヤーに音に囲まれた臨場感を体験してもらうことができないからです。

これらのコンセプトは、社内のサウンドデザイナーとサウンドプログラマーがディスカッションを重ねながら作られていったものです。


・Simple3D Plug-in

先ほどのコンセプトを元に、3D オーディオエフェクト「Simple3D Plug-in」をゲームに実装しました。こちらは、Simple 3D の DSPです。

Simple 3D DSP Diagram

Simple という名の通り、とても単純な処理の構成になっています。音源の方角によって、各経路の音量とバンドパスフィルターのパラメーターを可変させて、『方角の感じ』を作り出すしくみです。

上の 3つの経路はそれぞれ、4kHz の LPF と 500Hz の LPF を両方通る経路、4kHz の LPF だけを通る経路、Input がそのまま通る経路になっていて、それらのボリューム比率を変えることによって高域と低域の上げ下げを行うことができるようになっています。

一番下の経路は、音源が後ろに回った時など、周波数の移り変わりを表現するための経路で、高域と低域の上げ下げ以外に効果が高そうな要素を探した結果、この周波数可変のバンドパスフィルターにたどり着きました。

続いて、先ほどの DSP の設計や係数の調整を行っていくために取った方法をご紹介したいと思います。このエフェクトの特徴をよく表していると思います。

Subjective EQ

図にあるように、一方のスピーカーはプレイヤーキャラの正面に固定し、もう一方は任意の方角に配置できるようにしました。両方から交互にピンクノイズを再生するのですが、正面の方には EQ を適用しています。

その後は、ピンクノイズを聴き比べて、主観で同じような音がしていると感じるまで EQ を調整します。全ての方角で同様の操作を行って、方角毎の EQ パラメータを記録し、そのパラメータを元に、エフェクトを設計しました。

このように感覚的な調整方法をとることで、変化の違いを感じやすく、HRTFの係数とは違う変化を出すことに成功しました。



【2】インタラクティブリバーブ

音響空間表現の 2 つ目の話題は、インタラクティブリバーブについてです。



・Raycastシステム

こちらは周囲の地形を自動認識し、状況に応じた反響を作り出したいという考えで作り始めましたが、将来的にはそれに限らず全てのパラメータが連続的に変化するようにしたいという展望も持っていました。ゲームならではのインタラクティブ性を最大限生かし、折角自動でやるのなら手動では難しいことにも挑戦したかったからです。地形の材質なども加味して、方角によって異なる反射強度や時間、音質の違いを再現し、地形変化にリアルタイムに対応することを目標にしました。

地形判定についてはレイキャストを使いました。1フレームに数本、ランダム方角にレイキャストを行い、衝突点を寿命付きで記録します。得られている衝突点群とプレイヤー位置から、方角毎の距離や反響の強さ、フィルターの強さを算出する仕組みです。本作は秒間60フレームで動作するので、1フレームに8本、1秒間に480本のレイキャストを行っていました。

次の2つの画像はレイキャストの様子を可視化したもので、衝突点を緑の点で表示しています。1枚目の画像が狭い空間、2枚目が比較的広い空間で、それぞれの違いが見て取れるかと思います。各画像の右下にある図が空間の広さを表しています。



・K-verb Plug-in 

レイキャストから取得した地形情報に応じてパラメーターを設定し、リバーブを鳴らすという構成になったのですが、それに対応するリバーブPlug-inも新たに設計することになりました。試作を重ねるうち、リスナーの向きに追従するのではなく、しっかりとその場に残る反響を表現することで説得力が増すことが分かり、その表現にもこだわって設計しています。

Simple 3D Plug-inやRaycastシステムは、正確なシミュレーションを行うということよりも、心地よく、 変化を楽しめる音を作ることに注力しており、エフェクターPlug-inに限らず、サウンドデザインのアイディアにおいてもそれを意識しました。また、これらのPlug-inを用いて処理負荷を最低限に抑えることも重要な課題でした。

ちなみに“K-verb” というのはこのエフェクトを制作したオーディオプログラマーの木幡のイニシャルのKを取って仮にそう呼んでいたのですが、名前の響きも良く、名づけ親の進藤がお気に入りだったのでそのまま定着しました。

K-verbのDSP の特徴的な部分をご紹介させていただきたいと思います。

“K-verb” DSP Diagram

左側の Input がドライ成分用、AUX がウェット成分用のミックスになっています。AUX はリスナーから見た 5chで、それを絶対的な水平 8 方角ごとの 8ch にミックスしなおしています。

中心のループ部分がリバーブの本体で、各方角の衝突点から算出したパラメーターによってディレイ長、レベル、フィルター強度が決定されます。それだけだと、ディレイ感が強く出てしまうので、オールパスフィルターと各方角のクロスフィードによってリバーブ感を出しています。その後は、作られたリバーブ音をリスナーからみた 4ch に戻し、メインの Output にミックスしています。

【後編】へ続く>>

Audiokinetic Blogより転載





shindo進藤美咲 Misaki Shindo
バンドでのインディーズ活動や、楽器販売店での勤務を経て、2008年にサウンドデザイナーとしてプラチナゲームズに入社。最新作『NieR:Automata』では、リードサウンドデザイナーとして、SE制作、Wwise実装、SE全体のシステム構築を担当。



kohata木幡周治 Shuji Kohata
電子楽器の開発会社を経て2013年にプラチナゲームズへ。オーディオプログラマーとして、サウンド表現の技術面を支えている。『NieR:Automata』では、システムの整備やオーディオエフェクト(音響効果)の実装を担当。“新しい感触のサウンド表現の研究とゲームへの反映”を目標に、日々関連技術の研鑽に努めている。

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『NieR:Automata』のメカデザイン:機械生命体編

2018.06.19

こんにちは。『NieR:Automata』で、メカデザインの片手間にUIデザインしていたとヨコオさんから評されたアーティストの木嶋です。(UIも真剣にデザインしてましたよ!)

以前に書かせてもらったUIの記事に続いて、本作については2回目のブログ執筆ですが、この度めでたく2Bのオマケとして機械生命体のフィギュアが発売されたことで、記事公開の運びとなりました!

▼NieR:Automata BRING ARTS
http://store.jp.square-enix.com/category/NIER_BA

マニアックな話も入ってきますが、なるべくわかりやすくなるよう図やフィギュアの写真も交えて機械生命体のデザインについて解説していこうと思います。




■機械生命体のコンセプト:形にするまで

コンセプトをデザインするにあたって、まずディレクターのヨコオさんから以下の方針が提示されました。

・女性にも親しみやすくかわいいデザイン
・キャラクター性を感じるアンバランスさ
・汚くレトロで武骨なデザインライン
・デザインの統一性を考えたユニット構造

これらを元にスケッチを始めましたが、ニーアらしいデザインというには物足りなく、なかなか自分の中で納得できるものができませんでした。

そこで「前作のデザインはあまり意識しないでほしい」と言われていたものの、前作で印象深かったエミールをモチーフとしたシルエットでデザインをしてみました(図左下)。

このデザインは自分でもかなりしっくりきていましたが、ヨコオさんや周りのスタッフの食いつきも段違いで一発OKが出ました。

余談ですが、この時点で自分が考えていた機械生命体がエミールに似た姿である理由は「収斂進化(しゅうれんしんか)」のようなイメージでした。

収斂進化とは、全然違う系統の生物が似通った姿になることがあるという自然界の現象です。厳密な意味とは若干異なりますが、ニーアの世界で最強の兵器を作ろうとしたら、あの形が最も適していた、という理屈です(※あくまでデザイン時のイメージです)。

他にも駆動方式や技術設定、製造方法など勝手に色々妄想していました。これは個人的な楽しみでというのもありますが、デザインをまとめやすくなるので自分の中では大事なプロセスです。





■機械生命体のコンセプト:発展と洗練

最初のスケッチをもとに、かわいらしさやキャラクター性を立たせるため、更に自分の中で次のような目標を立て、デザインをまとめていきました。

・子供でも描ける記号的な特徴
・わかりやすいシルエット

途中、口や耳のような要素を入れたデザインも描いていましたが、最終的にはキャラクター性を引き立たせる「シンプルな引き算のデザイン」にするべく、要素を取捨選択し必要最低限の要素でまとめました。

結果的には、シンプルにしたことでかわいらしく見えたり不気味に見えたり、場面によって様々な表情を持たせることができたと思います。

ちなみに、これのしばらく後にデザインすることになるUIにも、この「引き算のデザイン」の方針が活かされています。

OKが出たデザインをさらに詰めるため、ユニット構造を活かした敵バリエーションのスケッチも描いていきます。

これらのスケッチも好評で、設定や遊びの話で色々盛り上がり、そこで出た話が実際のゲーム中にも反映されていたりします(このくらいのタイミングがゲーム作りで一番気楽で楽しい時期かもしれません)。 

一つだけヨコオさんから注意が入ったのは「三次曲面などの複雑な立体は禁止」という点でした。

これは「レトロなデザイン」「独自性のあるデザイン」のために必要と説明されましたが、単調な立体になりやすいため、聞いたときは思わず「なかなかの無理難題を仰る……」と心の中で呟いてしまいました……

後の章で説明しますが、様々な工夫を凝らすことでシンプルながら魅力的な形状に仕上げることが出来たと思います(これが機械生命体のデザインで一番難しかった点です)。




■機械生命体のコンセプト: キャラクターとしての完成度の追求

本デザインとして仕上げるにあたり、機体の各所に「特徴的なネジのディテール」を取り付けています。

このネジが付いているだけで機械生命体に見える、という一種の記号になると考え設定しました。加えて、このネジ穴には武器類を取り付けられるので、ユニット構造であることを強調する役割もあります。

武器類は、シンプルな本体とのギャップが出るようにゴツゴツした見た目でデザインしました。かわいらしい顔でも攻撃的な武器を持っていることで、敵らしさや不気味さを表現できれば、と考えてこの方針を立てています。



デザインを考える上で、ゲーム中のアクションについても想いを巡らせていると、キャラクター性をさらに引き立たせる動きを思いついたので、デザイン画に描き込んでいます。

・まばたき(設定的にはカメラカバーの開閉)

・小鳥のような首の動き(かわいらしくもあり、薄気味悪さもある動き)

これらの動きが加わることで、無機質な身体を持ちながらも生物的な柔らかい印象も持つ独特のキャラクター性を生むことができたのではないかと思います。

デザインに加えて、ヨコオさんによる性格付けやセリフも合わさることで、ただの敵キャラクターに収まらないほどの人気が出たのではないでしょうか……(想像以上の人気に自分でも驚いています)



■細部のメカ的なこだわり

上記のコンセプトで親しみやすいキャラクターとして確立できたので、細部はメカ好きならではのこだわりを盛り込もう!と割と好き放題にデザインさせてもらいました。(一応、世界観の説得力アップや画面の密度感に貢献する、という建前もありましたが……)

□現実の機械や兵器をモチーフに取り込む
機械生命体の設定は、『宇宙人が作ったため高い技術を持つものの過去の人類の文化を模倣している』ということだったので、表面的には『第一次世界大戦頃~現代レベル』がごちゃ混ぜになったイビツな技術体系で製造されたものとしました。

さらに、イビツな感じを出しつつ説得力を持たせるため、実在する特殊な用途の変わった機械や、珍兵器と呼ばれるような独特の設計思想で作られた兵器を参考にしました。

これにより、いろんな機械や兵器モチーフを取り入れるという自分の欲望を叶えつつ、キャラクター性の強い特殊なシルエットやギミックを作ることができたと思います。



□関節構造のこだわり
“ロボットのデザインは関節構造との戦いである”と言われる(持論)くらい、ロボットのデザインにおいて重要な関節についての解説をしていきます。

関節は以下の2つのコンセプトを掲げてデザインしていきました。

1:一軸オフセット関節による高い可動性
多くのロボットは人間のように柔らかい体ではないため、一軸の関節だとパーツ同士が干渉しやすく可動範囲に制限が出ます。

そこで世のメカデザインでは、下図のような『二重関節』を用いて可動範囲を確保していることが一般的です。

今回採用した『一軸オフセット関節』は、関節位置をずらすことで一軸ながらも干渉を少なくし高い可動範囲を得る構造です。

一軸オフセットは構造がシンプルなので、レトロな機械生命体にふさわしいと考え採用しました。また、シンプルなので強度や整備性に優れているところも兵器のデザインとして嬉しいポイントですね!

ちなみにこれはモーションを作る際にも二重関節に比べれば作りやすいので、ゲームのメカデザインとしても相性が良い構造になっています。

2:一軸の組み合わせ関節
肩や股関節、手首など様々な方向に曲がる関節は、一般的には下図のようなボールジョイントで処理されることが多いです。

今回はボールジョイントではなく、一軸関節を複数組み合わせて多方向へ可動させる構造を多用しています。現実のロボットや重機などもこういった構造になっていることが多く、機械らしさを強調するために採用しました。

ただ、モーションとしては作りづらく、アニメーターの方から顰蹙を買ってしまったので前者の構造とプラマイゼロに……


□シンプルながら凝った面構成
前述したように「三次曲面禁止」を言い渡されてしまい途方に暮れかけましたが、これまでの人生で見てきた様々なメカや工業製品の記憶を駆使して、大きく二つの工夫を考えました。

1:折れの箇所をずらした構成

正面と側面で折れ目がつながらない箇所を設けることで、見る角度によって印象が変わる形状をいくつか取り入れています。これによりパッと見シンプルな形状ながら、三次曲面並みの情報量をもつ立体に仕上げることができたと思います。

2:くびれを意識した色気のある形状、人体の流れを意識した立体
メカといっても直角や水平ばかりで構成すると味気のない形になってしまうので、きっちりした平面や曲面でありながら様々な角度で組み合わさるように構成していきました。

形の作り方として、シルエットにリズムが生まれるようなくびれや、人や生物の体の流れを意識した構成にすることで、生理的に落ち着くような形状になるようデザインしています。

□足裏や手の平の滑り止め用のミゾ
これも地味ですがかなり意識して取り入れていた要素です。地面を踏ん張る足裏や物を持つ手の平に、多方向へのグリップが働くよう全方向に伸びた複雑なミゾのパターンを入れています(靴の裏のミゾが複雑な理由と同じですね)。

特に小型短足タイプは、足が大きく倒れた時に足裏がかなり目につくので、こだわって情報量を増やした甲斐があったとホッとしています。




■オマケ:一部敵デザインに対するコメント

□小型飛行
飛行タイプは現実の航空機や飛行ロボットの技術を参考にして、実際に飛べそうな構造を意識しています。

ゲーム中ではクラゲのようなふわふわとしたかわいらしい動きがつき、理屈を固めて作ったデザインが有機的に作用したことに一人喜びを覚えていました……


□大型二足

最初は力強いイメージでゴリラのようなシルエットでデザインしていましたが、ゲーム中の攻撃を想像すると野蛮で激しいアクションがイメージされ、ゲーム全体の退廃的な雰囲気にそぐわないのではないかという懸念が生まれました。

そこで大きく印象を変え、巨体でユラユラと歩く不気味なイメージを軸にしてデザインしなおしています。

おかげで制作発表時のイメージアートに使用されるなど、機械生命体の中でも象徴的なデザインになったと思います。


□エンゲルス
ゲーム中で初めて戦うことになるボスで、開発でもごく初期に制作した機体です。最初のスケッチでは随分みすぼらしい見た目ですが、この時点で『トラス構造の巨人』というイメージや構造・攻撃方法など、コンセプトとしては合体機構を除けばほぼ完成しています。後は、合体機構と合わせて体型やディテールを整えていったのみです。

スケッチを見せながらヨコオさんたちと話した際に合体の話が出たため、ギミック大好き人間の自分はそれはもうノリノリで合体の機構を考えました。

クレーンで両腕を引き揚げる様がまるで建物の建築工程のような合体プロセスがお気に入りです。

□ボーヴォワール
このボスは、原案担当、ラフデザイン担当、ディテールアップ担当の3人で作り上げたデザインです。自分はディテールアップを担当しました。

ボスとしてのコンセプトはラフの時点でほぼ完成しており、自分は他の機械生命体のデザインライン・密度感にあうように調整したり、モデルにする際の構造を考えたりしながらクリンナップしました。
三次曲面が使えない中で女性的なフォルムを表現するため、パーツ単体の形状ではなくパーツの組合せと配置でしなやかさを表現しています。

これらの他にも発売中の美術記録集設定資料集には多くの設定画と妄想コメントが載っているので、興味がある方はぜひそちらもご覧ください!



■おわりに

自分はデザインの解説話を読むのが好きなので、ついつい書くのも長くなってしまいましたが楽しんでいただけたでしょうか……?

機械生命体のフィギュアはこだわりの詰まったデザインを素晴らしい再現度で立体化されているので、ぜひ手に取っていただきたいです!
既に入手済みの方は、この記事を読みながら遊んでもらえると、より一層楽しんでいただけるのではないかと思います。

NieR:Automata BRING ARTS <2B&機械生命体>

▼2B&機械生命体
http://store.jp.square-enix.com/item/MNRBA01.html

また、この記事が公開されているころには機械生命体の2体セットも発売されていますので、こちらもよろしくお願いします(頼まれてもいないのに勝手に宣伝)。
こちらは豊富な武器と、小型二足に組み替えられる脚パーツがついているので、さらにプレイバリュー満載です!

NieR:Automata BRING ARTS <機械生命体セット>

▼機械生命体セット
http://store.jp.square-enix.com/item/MNRBA02.html

あと、今回以上にマニアックな話になることが必至の飛行ユニット編は、そちらも立体化の暁に公開できる……かもしれません(※現在そんな情報は耳にしていません……)





kijima木嶋久善 Hisayoshi Kijima
2011年にプラチナゲームズに入社。『ベヨネッタ2』『メタルギア ライジング リベンジェンス』『The Legend of Korra』(日本未リリース)『TRANSFORMERS: Devastation』(日本未リリース)のUIデザインを担当。メカ好きが高じて大学では機械工学を専攻していたという変わった経歴のアーティストで、最新作『NieR:Automata』ではUIデザインのほか、メカニカルデザインを手がけるなど幅広く活躍している。
関連記事:
『NieR:Automata』のUIデザイン
#Illustrator30_30 #Ai30th 記念連載 | Vol.21 ゲームUIデザイナー 木嶋久善
『ベヨネッタ2』のUIデザイン

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『NieR:Automata』イベントシーンの効果音制作現場

2017.10.03

みなさま、こんにちは!
サウンドデザイナーの進藤です。

NieR:Automata』では、リードサウンドデザイナーとして、SE制作、実装、サウンドディレクションなど幅広く担当しました。

まず、少し前の事になりますが、8/30~9/1の3日間CEDECに参加してきました。

いつもなら、一般参加で他の方のセッションを受講し、お勉強をさせていただくのですが、今回は大変名誉なことに、オーディオプログラマーの木幡とセッションを担当する機会をいただき、登壇者として参加させていただきました!!



登壇のきっかけは、3年前のCEDEC 2014。
大手ゲーム会社さんのサウンドチームによる、数々の素晴らしいセッションに感銘を受けると共に、ある種の悔しさを感じ、一緒にいた木幡と「『NieR:Automata』では、出来る限りの面白い技術を盛り込んで、完成したら絶対にCEDECで発表しよう!」そう誓い合いました。
そんな目標もあった中での登壇だったので、3年越しの想いもあり、感無量でした。

セッションの内容は少し専門的な内容になりますが、詳しい記事がたくさん上がっているので、興味のある方は、そちらも併せて見ていただければと思います。



◆ ◆ ◆



さて、CEDECでは技術的な内容を紹介させていただいたので、今回はイベントシーンの効果音制作現場をご紹介させていただききます!イベントシーンの効果音制作は、スクウェア・エニックスさん、ビー・ブルーさんに協力していただきました。

場所は東映デジタルセンター。
こちらで、イベントシーンのフォーリーを収録しました。

フォーリーというのは、足音や、アクセサリーなどによる人物動作音や、ものが落下した際の衝撃音、破壊音などを、映像を流しながら登場人物の動きに合わせて、効果音を収録する工程です。

主に2Bや9S達の足音や、衣擦れ音、機械生命体の動作音などを、収録しました。

こちらはコントロールブースです。スクウェア・エニックスの細江さんがイベントシーンのディレクションをされており、ここから、収録した音に対してOKや修正など具体的な指示を出されます。奥に見えるのは録音ブースで、フォーリーのための小道具や、様々な素材の床などが所狭しと並んでいます。

こちらが録音ブースです。音素材になる小道具が所狭しと並んでいます。この中からシーンに合う小道具をチョイスして、叩いたり、こすったり、振り回したりしながら、理想の音を作っていきます。中にはサウンドデザイナーの私でさえ、何に使うか分からない物もたくさんあります・・・。

作戦会議中・・。
これだけ色々な素材があっても、ぴったりな小道具がなかなか見つからない場合もあります。みんなで何が合いそうか検討中のシーン。手前に見えるモニターに映像を流し、その映像を見ながら音を出していきます。

靴がたくさん並んでいますが、この中に、2Bや9Sの靴音に使用したものも。イベントシーン用に収録したものを、インゲームにも転用しています。(足音を合わせておかないと、インゲームとイベントシーンの音の繋がりが不自然なものになってしまいます。)

機械生命体達の体の動き、ギコギコ、キーキーした音などに使用したガラクタ達。これらのガラクタは、敷地内のガラクタ置き場から拝借してきたものです。機械生命体達は、まさにガラクタから効果音を作っています。




◆ ◆ ◆



機械生命体の効果音の収録風景です。
演者はビー・ブルーの染谷さん!フォーリー収録に関してかなり知識が豊富で、さらに、とても力持ちな方です!鉄のタライをベコベコ鳴らしたり・・・。

水汲みポンプをギコギコ・・・。錆びの嫌な感じの擦れ感、だけどどこかで聞いたことがあるような少し懐かしい音が、機械生命体にぴったりハマります。

でっかい鉄板同士を擦りつけギギギギ・・・。これは超大型機械生命体エンゲルスの動作音を収録しているシーン。市販ライブラリにはない良い感じの擦れ感がでました。(あの鉄板、超超重いんです・・・)




◆ ◆ ◆



学校机を床に擦りつけてギギギギ・・・。小学生の時によく聞いた懐かしい擦れ音・・・。こうやってこだわって収録した音たちによって、「機械なのにどこか温かみがある」機械生命体が表現できたのではないかと思います。

さらに大きなサイズの机をギコギコギコ・・・。擦れ音と共に、引き出しがガタガタ揺れる音も加わって、複雑な金属擦れ音になります。


◆ ◆ ◆



このような、一見がらくたに見えそうなものを駆使して、『NieR:Automata』の効果音が作られていきました。

本作のメカ系に関するサウンドデザインは、アンドロイド側の「人に近いはずなのに、温かみの少ない未来的な動作音」と、機械生命体側の「人とかけ離れているが、どこか温かく懐かしさもある音」の表現を目指しましたが、ガラクタ等を用いたフォーリー収録は、機械生命体の温かさをうまく表現できたのではないかと思っています。

もちろん、全ての音がフォーリー収録で作られているわけではないので、ここから更にシンセサイザーで作られた音を重ねたり、環境音を混ぜたり、ボイスを鳴らすなどして、カットシーンの効果音は出来あがっていきます。

いかがでしたでしょうか。
あまり効果音の制作現場というとピンとこないかもしれませんが、実は、このようなアクティブな制作現場だったりします!本当に体を鍛えていないと、すぐにぜえぜえなりますよ。(泣)

また、環境音については、そのほとんどをフィールドレコーディング(外で実際に録音)しています。プラチナゲームズの開発スタジオは大阪ですので、時には音を求めて府外にまで足を運んでレコーディングしていました。レジスタンスキャンプ前の、あの川が流れる憩いの空間は、実は関西地方の音で出来ております(笑)

工場廃墟エリアの音なんかは、大阪の造船所の近くで工場音を拾わせてもらったりしました。収録中は、工場のおじさん達が、テレビクルーと間違えたのか、こちらに向かってピースしておられました。(カメラの人おらんやん!と心の中でつっこみ笑)

縁の下の力持ち的な役割の効果音ですが、このように音響技術的にも、音質的にもかなりこだわっておりますので、BGMの合間に是非効果音もお楽しみくださいませ~!

スクウェア・エニックスさん、ビー・ブルーさんと記念の一枚





shindo進藤美咲 Misaki Shindo
バンドでのインディーズ活動や、楽器販売店での勤務を経て、2008年にサウンドデザイナーとしてプラチナゲームズに入社。SE制作、Wwise実装、またリードサウンドデザイナーとしても多くのタイトルを担当し、サウンドディレクションも行う。
担当プロジェクト:『ベヨネッタ』『ベヨネッタ2』『The Wonderful 101』等
最新作『NieR:Automata』では、リードサウンドデザイナーとして、SE制作、Wwise実装、SE全体のシステム構築を担当。

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『NieR:Automata』のUIデザイン

2017.08.25

こんにちは。『NieR:Automata』で UI (ユーザーインターフェイス) とメカデザインを担当した木嶋です。開発ブログを書くのは『ベヨネッタ2』以来になります。(以前書いた記事)

普段あまり注目されないUIですが、ありがたいことにユーザーの方々からの要望があり、当記事を執筆することになりました。UIにもヨコオさんのこだわりがたくさん詰まっているので、その一部も併せて紹介していこうと思います。

■はじめに:UIアーティストの仕事

UIアーティストは、体力ゲージや会話ウインドウ、各種メニュー画面などゲーム内表示物を作っています。

大まかな仕事の流れはこんな感じです。
1:UIのコンセプトデザイン策定
2:仕様に合わせて各メニュー画面や表示物のデザインを量産
3:UIのゲームデータを作成してプログラマーに実装してもらう
4:動くUIを触ってみてアニメーションなどの調整、クオリティアップ

今回は主に1のコンセプトの作り方と、2のメニュー画面のデザインで工夫した点について説明したいと思います。



■UIのコンセプトデザイン: SFとファンタジーのバランス
今作『NieR:Automata』の世界観はかなりSF寄りになっていますが、前作 『NieR Replicant/Gestalt』はファンタジーの世界であるため、その延長線上のSFという点を意識してUIのコンセプトを組み立てていきました。

まずは前作のUIデザイン、SF要素、2Bのキャラクター、退廃的な世界といったイメージから妄想して「システマチックで清潔感のある美しいデザイン」を今作のUIのキーワードとしました。この時点で、装飾は華美ではなくレイアウトの丁寧さを重視したフラット基調のデザインにしようと強く心に決めます。しかしそのままデザインしていってもどうにも味気ない……。

そこでさらに「システマチックで清潔感のある」というキーワードを膨らませて、「楽譜」を隠れたモチーフに据えて、ファンタジーな印象を加えました。

楽譜と言ってもト音記号のような流麗さではなく、五線譜やヘ音記号の点々、終止線など、キーワードに沿った記号的な要素を拾い上げていきます(タイトル名やポッドのセリフで使われている:←このコロン記号も楽譜モチーフを反映してもらったものです)。

また、メニュー画面上下の飾りは前作メニュー内の本の飾りのイメージです。こういったアナログなファンタジーっぽい要素を、デジタルな記号の組み合わせで表現することで、ファンタジー感とSF感のバランスをコントロールしながらコンセプトデザインを組み上げました。



■UIのコンセプトデザイン:フラットデザインへの+αとアニメーション
コンセプトのベースはほぼフラットデザインとして制作しましたが、さらに世界観になじませるため、モニター表現を強調するグリッドテクスチャと、カメラのレンズによる歪みと周辺減光を加えて最終デザインとして仕上げています。




こうしたスキュアモーフィックな+αを加えることで、単なるフラットデザインではない、より実在感のあるデザインになったのではないかと思います。

また、フラットな画面で無味乾燥とならないようにアニメーションはしっとりとした心地よいアニメーションになるよう細かく調整しています。しっとり感は薄めですが、システムメニュー出現時のアニメーションは個人的に特に気に入っています。



■UIのコンセプトデザイン:ベージュ基調のカラーコントロール
ヨコオさんからの一番初めのUIの要望は「温かく柔らかいベージュのカラー」というオーダーでした。

そう言われたものの、最初は無機質なデジタル表現に温かいベージュを組み合わせたイメージが出来ずに悶々とします……。

まずは自分でイメージできるデザインから作ろうと考え、黒と白のコントラストの強いデザインから考えて、徐々にやさしいベージュに寄せていく、という形でカラーを決めていきました。柔らかい印象の低コントラストに加え、ベージュの同系色でまとめたので、各カラーを組み合わせたときの視認性の確保には苦労しました。

初期のカラー。最終版よりコントラストが高い色合い。

最終版のカラー。

また、あまり色を散らばらせたくないというディレクターオーダーもあり、できるだけ色に頼らない表現になるよう工夫しました。

  • パラメーターの増減は、フォントの太さ・色の濃さで表現。

  • どうしてもカラーを使う部分は淡い赤橙のみ使用(白と淡い緑もごく一部で使用)

  • カテゴリ毎の色分けが必要なプラグインチップは試行錯誤して統一感がありつつ視認性が確保できる多色を用意

こうしたカラー設計は、ハッキング画面やマップ画面の3Dモデルにも反映してもらい、ゲーム全体で統一感のある絵作りを徹底しました。

ハッキング画面のコンセプトデザイン。

マップ画面の3Dモデル。



■メニュー画面のデザイン:ゲーム初心者でも触りやすい操作系
ヨコオさんはメニュー画面について「普段あまりコンシューマーゲームをプレイしない初心者、むしろお婆ちゃんでもプレイできるように操作系をシンプルにしたい」ということを開発中に口酸っぱく話されていた記憶があります。

メニューの基本ルールはこんな内容です。

  • 基本操作はスティックによる移動操作と、○×のボタン操作のみですべての機能にアクセスできること
  • ボタンヘルプも基本的に上記の説明のみ、なるべく表示物は減らすこと

普段のゲームUIで使えたL1・R1や△□での操作ができないため、画面遷移や移動箇所など、かなり頭を悩ませて設計しました。開発中はシンプルな操作と複雑な仕様がバッティングして余計分かりづらい操作になっていた部分もあり、何度もヨコオさんとケンカ交渉して着地点を探すことも…。

とはいえ、やはりスティックと○×の操作だけではゲーム慣れした人間からすると少々不便なので、ボタンヘルプには表示していませんが、一部ではL1・R1ボタンや△□ボタン操作を隠しショートカットとして実装してあります(お気づきになりましたか…?)。

システムメニュー内でのカテゴリ移動や、武器の詳細や物語、個体データ画面でのページ切替がL1・R1で操作可能。

個体データの一覧で、装備変更やアニメーション再生を△と□で操作可能。右スティックでのモデル回転も可。

マップ画面トップで右スティックやL2・R2を操作すると即座に全画面マップへ遷移。

システムメニュー内では基本的にどの階層からでもOPTIONSボタンでゲームに戻れる(オプション画面を除く)。またシステムメニューを開く演出はなんらかのボタンを押すとスキップできる。



■おまけ:ヘンテコUI
ヨコオさんと初めてUIについての打ち合わせをしたときに聞いたのが「変なUIを入れたい」というお話でした。普通のUIは世のゲームでいくらでもやっているから変なの作りたい、と。ただ、普通に開発しているとどんどん仕様が”まとも”になっていくのでなかなか変なUIが入れられず……。
しかし、ネジの外れたプランナーが変なアイディア出したり、プログラマーが趣味でヘンテコ機能を作ったり(後で上司に怒られていました)、一部の人が暴走。おかげでヨコオさんが満足する変なUIが作れました。めでたしめでたし。

自爆した後などに見ることができる壊れたUI

懐かしいゲーム画面の趣があるノスタルジックフィルタ



■おわりに
今回のUIデザインは自分でもお気に入りの出来に仕上がり、ユーザーの方々の評判も良く嬉しい限りです。こうして振り返ってみるとヨコオさんのディレクションの妙には驚きますね。長くなりましたが、最後までお付き合いいただきありがとうございました!
(機会があればメカデザインについての記事書かせてもらえないですかね?え、長くなるから駄目ですか?)

※メカデザインについては、こちらの記事をどうぞ。(2018年6月19日 追記)
『NieR:Automata』のメカデザイン:機械生命体編




kijima木嶋久善 Hisayoshi Kijima
2011年にプラチナゲームズに入社。『ベヨネッタ2』『メタルギア ライジング リベンジェンス』『The Legend of Korra』(日本未リリース)『TRANSFORMERS: Devastation』(日本未リリース)のUIデザインを担当。メカ好きが高じて大学では機械工学を専攻していたという変わった経歴のアーティストで、最新作『NieR:Automata』ではUIデザインのほか、メカニカルデザインを手がけるなど幅広く活躍している。

関連記事
『NieR:Automata』のメカデザイン:機械生命体編
#Illustrator30_30 #Ai30th 記念連載 | Vol.21 ゲームUIデザイナー 木嶋久善 
『ベヨネッタ2』のUIデザイン

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『NieR:Automata』BGM実装の開発裏話

2017.07.25

ミュージックコンポーザーの上田雅美です。今回はインプリメンテーション(BGMの実装担当)として参加させて頂きました。

僭越ながらCEDEC AWARDS サウンド部門において優秀賞を受賞致しました。岡部啓一さん達の素晴らしい楽曲と、ヨコオタロウさんの見事なディレクションがあったからこそだというのは勿論ですが、何より名誉ある賞に選出頂き大変嬉しく思います。

さて、今回は『NieR:Automata』(以降『NieR』)のBGM実装の中で一番拘ったところについて書かせて頂きます。少し前に社内で『NieR』のBGM実装報告会を行いまして、思いの外反響がありました。中でも一番反響の高かったハッキング制御の部分にフォーカスして、BGM実装の裏話を簡単に書きたいと思います。




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何故8bitに?
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ハッキング中は楽曲が8bitバージョンに変化するようになっています。開発初期段階は8bitバージョンを作る想定は無かったと思いますが、私が『ニーア ゲシュタルト & レプリカント 15 Nightmares & Arrange Tracks』の『ニーアの伝説 ~8ビットの勇者たち~』を聴いたこと、また2015年のCEDEC登壇時に発表したTone Filter(なんちゃって8bit化エフェクター)が活用できるのではないかと思ったのがきっかけで、ハッキングシーンの8bit化を提案させて頂きました。

しかしながら全ての楽曲に8bitバージョンが用意されているわけではありません。場合によっては自動生成されたものが再生されます。一体どういう仕組になっているのでしょう?


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Tone Filterの仕組み
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楽曲をモノラル化し、48音程をサイン波で抜き出します。(凄く低い音や高い音、微妙な音程はバッサリカットされます)ディストーションを掛けて矩形波に変換し、48音程の内、聴こえにくいものは音量をガッツリ下げ、最終段で48音程をミックスするといった感じになっています。もっと精度を上げるアイデアもあるのですが、今回は精度よりも連続変化への対応に注力した形になっています。下図はオーディオプログラマーの木幡君に説明をしてもらった時のものです。


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動画で解説
8bitバージョンが用意されている場合
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ハッキング成功時に8bitバージョンにクロスフェードさせます。これだけでも十分かもしれませんが、もっと拘りたいですね。

ハッキング開始時に演算バージョンを上乗せしてみます。ふわっとした印象が加わり、ハッキングを試みている雰囲気もありますね。8bitバージョンへの繋ぎもより良くなりました。



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8bitバージョンが用意されていない場合
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ハッキング開始時から演算バージョンを上乗せする所までは同じですが、ハッキング成功後は、通常バージョンを少し残し、演算バージョンを上乗せしたままになっています。今度はミドルウェア上でその状況を見てみましょう。


演算100%だと説得力に欠けるのが分かると思います。80%+ステレオディレイがやはり良い印象ですね。

とても重たい処理なので今はちょっと厳しいですが、将来的にはもっと精度の高いものが作れるようになると良いなと思っています。

こうして見ると、BGMの処理は伝わり難いものが多いですが、地道なクオリティアップを重ねないとトータルクオリティーはなかなか上がらないものです。他にも色々と拘った部分はあるのですが、今回はこの辺りで!

どうも有難うございました!





ueda上田雅美 Masami Ueda [Facebook
カプコン、クローバースタジオ、SEEDSを経てプラチナゲームズへ。ミュージックコンポーザーとして、『バイオハザード1~3』『デビルメイクライ』『ビューティフルジョー1~2』『大神』『ベヨネッタ』『ベヨネッタ2』など数々の作品のBGM制作を担当。
TRANSFORMERS: Devastation』『TEENAGE MUTANT NINJA TURTLES: Mutants in Manhattan』ではサウンド全般のディレクション及びインプリメンテーションを手掛けるなど、楽曲制作にとどまらず、サウンド表現の可能性を追求し続けている。最新作は、インプリメンテーションを担当した『NieR:Automata

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『NieR:Automata』コンセプトアートメイキング

2017.05.31

はじめまして。コンセプトアーティストの幸田です。光栄なことに、当記事を執筆させていただくことになりました。短い間ですがお付き合いください。

今回はどのようにアートが出来ていくかをご紹介しようと思います。


上の画像は誌面などで公開された実際のゲーム画面です。遊園地のようなマップとなっています。この時間帯の遊園地って催し物があったり、帰る時間帯だったりしてドラマチックですよね。個人的にはこういう雰囲気が一番好みです。

今回紹介するアートは、その雰囲気を作る元になったものです。(ゲーム中ではアート以上の情感が出ており、背景スタッフには頭が上がりません)


実はこのアート、実際のゲームに即した見た目にするために、試作段階のゲーム画面をキャプチャーし、その上から描いています。以下、絵の制作過程を画像を列挙しながら紹介していきたいと思います。

1. キャプチャーした画像

この画像はゲームの開発初期段階の画像です。絵のかっこよさは二の次で、ゲームの遊び部分を重点的に作っている状態です。絵を描く側からすると、ここから最終形を考えなければならないため、実は最も頭が疲れるパートです。 (初めてマップを見た時、画像のように背景に自分のアートがデカデカと貼られていたので、晒し者にされている気分でした。田浦さんコノヤロウ!)

2. 構図の決定

画像を切り貼りしてかっこいい構図を作り出していきます。今回は城の威容や、マップの奥行きを感じてもらえるような構図を目指しました。ちなみに、真ん中にあるガレリア風の施設はレベルデザイナーの方のアイディアでした。ナイス過ぎます。

ちなみに城自体は以前描いたアートから切り出して貼り付けています。

3. ライティング、テクスチャリング

空を作り、エントランス周りの商業施設に手を入れ始めました。イメージさえ固まっていれば機械的に作業ができるので楽なパートです。

4. ヨコオさんによるチェック

この段階で方向が間違っていないか、他にどういったことをしたいか等をヨコオさんと相談しながら決めていきます。
今回は「地面の反射をなくして欲しい」「もっと照明が多い方が良い」「地面をガレキまみれにして欲しい」などのフィードバックを頂きました。

5. 完成

そうして完成したものがこちらです。一見華やかですが、ガレキまみれで実は不気味な感じになりました。

いかがでしたでしょうか。
当マップにお越しの際は、よろしければこのアートのことを頭の片隅に置いてプレイしてみていただければと思います。
ありがとうございました!

PlayStation Blog より転載

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『NieR:Automata』キャラクターモデルメイキング

2017.05.30

こんにちは。『NieR:Automata』のキャラクターモデラーの松平です。

キャラクターモデラーで有名な人って、皆さんはパッと思い浮かびますか?僕は全然思い浮かびません。今の時代、あまりキャラクターモデラーが表に出ることはないですね。ですが、幸運なことに今回こういった機会をいただいたので、メイキングをお見せしつつ、どう考えて2Bというキャラクターをモデリングしたのかを解説していきます。イラスト通りに3D化しているだけではないんだぞ、というところを見せていきたいと思います。

■メイキング
一般的に、キャラクターモデルは
  1. ラフモデルで全体的なフォルムと完成を予想
  2. ハイクオリティモデルで高精度な造形
  3. ゲーム用モデルとして落とし込み という工程で進みます。

まずは、吉田明彦さんからデザイン画ラフを頂き、ラフモデルを作っていきます。下図のモザイク部分には吉田さんの好みが出ており、言葉を交さずとも色々なことを感じ取りました。大好きです。

(※権利的な問題でモザイク部分はお見せできません)

そして制作したラフモデルはこちらです。僕がニーアチームに入って初めての仕事です。1、2週間ほどの作業でしょうか。顔の造形の方向性もヨコオさんにみてもらい、イイネ!をいただきます。過去に吉田さんの関わったゲームなど、色々参考にしました。(FF12のキャラモデルは至高です…。)


ラフモデルというと大まかに作ればいいのかな、と思うかもしれませんが、実はこのラフモデルがかなり頭を使う工程です。シルエットはこのままで確定か。アニメーターが動かしやすいようになっているか。骨の数や揺れものはどうやって制御するか。さらにはプロジェクトの基準となるキャラクターの制作でもあったので、等身や造形の基準、シェーダの設計、さらには量産するときのコストのことも考えて制作しなければなりません。昨今の3Dモデルは後戻りが難しいので、先のことを考えたデータ設計が必要になってきます。アーティストですが、意外と頭を使っています。

次は一番楽しい工程、ハイクオリティモデルで細かな造形部分を仕上げます。

粘土をコネコネとしていく要領で、デジタル上で行います。あんな場所やこんな場所も無心でコネコネします。何も考えていません。本当に。

最後にゲームモデルとして落とし込んでいきます。
ざっくり言うとポリゴンに画像を貼っていく作業なのですが、コンソールの世代が変わるごとに用意するポリゴンの数、画像の枚数がどんどん増えていっています。PS2の頃はポリゴンが数千、画像は1、2種類だったのですが、PS4ではポリゴンが10万、画像が8種類ほどでしょうか。凝ったことをするともっと増えていきます……。下の画像は、素のポリゴンにどんどん画像データを追加していく画像です。

素のポリゴン状態→ハイクオリティモデルから抽出した凹凸情報の画像付き→素材感を色々な画像で指定→色情報を画像で指定→素材感のためにもう一工夫!で完成です。

加えて、濡れるための設定や揺れものの設定、60フレーム動作のためのデータを軽くする作業など、3Dモデル制作の闇のパートがあるのですが、楽しかったことだけ思い出すことにします。

■キャラクターモデラーの役割
作業工程を見ていただきましたが、上記は手を動かした工程にすぎません。キャラクターモデラーの一番大事な仕事は、いかにイラストの魅力を減らさずに、ゲームで動作する立体として落とし込むかを考えていくことだと思います。

デザイン画を立体化し、現実味が帯びてくればくるほど、イラストのゆらぎや魅力がなくなっていくのが難しいところです。しかもユーザーのイメージはイラストにあるので、マイナスからのスタートになります。やってられません。とはいえ、僕はキャラクターモデラーとして仕事をしていますので、そこをなんとかいい感じにするために考えました。

  • 前作が存在するので、その世界と繋がっているようにつくる(ことで前作のファンに許してもらう)
    まずは前作のモデルの魅力を自分なりに考えました。それが「人形感のある壊れそうな不安定な造形」です。
    はかない美しさがあります。
    この点を踏まえ、モデルには少しいびつな部分などをわからないバランスで入れています。どこかは言いませんが、少し毒が入っていた方が美しく見えます。
  • 2Dではわからない、角度が変わっていくときに感じる魅力をつくっていく(ことでイラストの再現できない部分をごまかす)
    3Dではライティングが変わったり色々な角度で見えたりするので、イラストにはない見え方を作ることができます。そこに自分の色々な感情を注ぎ込みます。色々な。

隙間光沢の差で模様が浮き出ます3次元的な造形濡れたり日なたに出た時の服の毛羽立ちも誇張して嘘をつきます

角度を変えるって楽しいですね。
こんな感じで、キャラクターをいい感じにしたつもりですが、いかがでしょうか。

■まとめ
ゲームのキャラクターモデルは、少し特殊な性質を持っています。インタラクティブコンテンツであるがゆえに、プレイヤーがどうキャラクターを動かしたか、ゲームプレイによる記憶、感情などがキャラクターの魅力に上乗せされやすいです。ここがゲームモデルの面白いところだと思います。

どうでしょうか、意外と色々なことを考えてつくっていました。自分でもちゃんと考えていたんだなと感心しました。ゲームを通じて、皆さんに愛されるキャラクターになっていれば嬉しいです。

■おまけ
これが公式の模様のパターンだ!(コスプレ、よろしくお願いします)



PlayStation Blog より転載

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