Ryo Onishi Interview

大西 亮 インタビュー

「OK」は必ずしもゴールじゃない

 

大西 亮

ゲームクリエイティブディビジョン/大阪スタジオ/第2グループ グループ長/シニアプログラマー

そんなに詰め込んで大丈夫なのか……?

『ベヨネッタ2』では、主にアプリケーションプログラマーとして、ステージ全般のギミックやイベントの実装を手掛けました。実にステージの8割近くを担当したのですが、中でも深く印象に残っているのは、プレイアブル出展したプロローグステージです。同期のエンバイロメントアーティストとともに、背景表現をひたすら詰め込んでいったのですが、そのボリュームが尋常ではありませんでした。「ゴモラの手が当たった箇所を壊したい」「火炎放射の場合は壊れ方を変えたい」「戦っている最中に後方で背景を崩壊させたい」など、正直「そんなに詰め込んで処理は大丈夫なのか……?」と思いながら実装していったのを覚えています。同期は詰め込んだ分だけ上がった処理を毎日のように調整していました。プロローグからクライマックス感全開の作品に仕上げられたのは、そんな苦労の甲斐もあってのことだと思っています。 また、隠し要素として実装した『スターフォックス』バージョンのシューティングステージでは、子供の頃に自分がプレイしていた『スターフォックス64』の完全再現を目指して調整していきました。まさか自分が昔夢中になって遊んでいたゲームの再現をすることになろうとは……世の中わからないものですね(笑)。特に『スターフォックス64』は、カーソルを操作すると、それに機体が追従してくるような独特の動作が印象的だったので、その完成度にはひときわこだわりました。(再現度に関しては、パブリッシャーからもお墨付きをいただいています。)

プロデューサーをいかに苦しめるか

アプリケーションプログラマーとしてユーザーがダイレクトに体験する部分をつくることが多いので、まず身近な人たちを楽しませることを目標にしています。自分自身その反応を楽しんでいるところがありますね。たとえば『NieR:Automata』のプロローグに登場する「マルクス」「エンゲルス」という敵は、道中のザコ敵との強さにかなりのギャップが設けられています。サクサクと爽快にプレイしていたところに、突然強敵が現れるという構成になっており、その調整にはこだわりましたね。狙い通り、リリース後にはかなりユーザーを苦しめてくれたようですが、実は社内チェックの際にプロデューサーも苦しめていました。ボコボコにされるプロデューサーを見て、敵キャラをつくったスタッフみんなが手を叩いて笑っている……それがプラチナゲームズです(笑)。 特にプラチナゲームズでは、全員でワイワイと画面を前にしてチェックする機会が多いので、いろいろと仕込み甲斐があると感じます。『ベヨネッタ2』では、強敵をつくることが多かったこともあり、「ディレクターやプロデューサーをどれだけ苦しめるか」が目標になっていた部分もあります。一度チェックしてOKになった箇所でも、次のチェックではさらに行動パターンが増えて強敵になっていることも。チェックの「OK」とは一体何なのか……(笑)。しかし、OKが出た後も面白さの追求を止めない姿勢は、ゲームのクオリティに間違いなくつながっていますし。何より「もっともっと面白く」と創造し続けること自体が、とても楽しい時間なのです。

「プログラマー」よりも「ゲームクリエイター」として

個人的には、自分は「プログラマー」というより、「ゲームクリエイター」としてゲーム制作に関わっていく存在でありたいと考えています。ゲームの面白さにより貢献するためには、プログラマーという肩書きに縛られないことが重要です。「ゲームクリエイター」に要求されるのは、よりゲームを面白くための手法をさまざまな側面から考え、必要があればプログラム以外のアプローチも行っていくという立ち回りです。自らが率先してこうした「ゲームクリエイター」像を体現していくことで、プログラマー全体にも同様の考え方を浸透できたらと考えています。 近年プログラマーは、「ゲームをつくる」というよりも「ゲームをつくるための環境をつくる」ケースが増えてきたように思います。しかし、プログラミングは、ゲームを面白くするための手段のひとつに過ぎません。プログラマーだからこそ考えられるアイディアや面白さが存在すると、私は信じています。プログラマーという技術を備えながら、それに囚われずさまざまな角度・手法からゲームを面白くすることにチャレンジできる人と、ぜひ一緒に働きたいです。

 

 

PROFILE

Ryo Onishi

ゲームクリエイティブディビジョン/大阪スタジオ/第2グループ グループ長/シニアプログラマー

新卒でプラチナゲームズへ。プログラマーとして『ベヨネッタ2』『Teenage Mutant Ninja Turtles: Mutants in Manhattan』『NieR:Automata』などの制作に関わる。『NieR:Automata』ではリードプログラマーとして、プログラマーの指揮を取った。現在はプログラマーグループのマネージャーとして、プログラマー全体を統括する立場に就いている