スペシャリストは
現場の外にもいる
西村 栄治郎
ゲームクリエイティブディビジョン 副ディビジョン長/プロダクショングループ グループ長/プロデューサー
ディレクターとチームの架け橋に
先日リリースされた『ASTRAL CHAIN』は、プロデューサーの私にとってもディレクターの田浦にとっても初めてのオリジナルタイトルだったため、一筋縄では行きませんでしたね(笑)。もちろん、オリジナルゲームの開発では順調に進むことの方が稀であり、試行錯誤の連続というのはいちスタッフとしては「いつもどおり」と言えます。しかし今回はプロデューサーという立場だったので、その「責任」を強く感じるところがありました。ただ、私以上に悩んでいたのは、直接チームを指揮する立場にあるディレクターの田浦だったのは間違いありません。その状況を打破するため、深いコミュニケーションに努めてディレクターのビジョンを汲み取り、現場スタッフとの架け橋となってチームを一体化することに注力しました。紆余曲折を経て無事完成にたどり着けたので、少しは貢献できたのかなと感じています。
個人的には、プロデューサーが開発現場に直接働きかけられる部分というのは、実は少ないと感じています。それよりも、プロデューサーがやるべきことは、チームが進むべき方向性を定め、戦力を最大限に発揮できる環境づくりをどこまでできるかに尽きるのではないかと。その点では、僕自身のキャラクターやこれまでの経験というのを、少しは活かせたプロジェクトだったと感じています。
1本のゲームがどのように生まれるのか
これまで現場スタッフとして数多くのゲーム制作に携わってきたこともあり、「1本のゲームがどのように生まれるのか」を理解できていると感じていたところがありました。しかし、初めてプロデューサーとして『NieR:Automata』を担当したときに、それが大きな勘違いだったと思い知らされました。1本のゲーム企画がプロジェクトとしてスタートしてから、最終的に製品として世界中のユーザーがプレイできるようになるまでに、営業や広告宣伝、流通、カスタマー対応など、ゲーム開発の周辺にはこんなにも多くのスペシャリストが関わっていて、そして、そういったゲーム開発の周辺のスタッフの方が、度重なる開発遅延といった苦境のなか相当の覚悟と信念をもって臨機応変に対応しようとする姿勢に接し、「一人でも多くのユーザーに届けるため、開発サイドと同じ熱量を持って取り組んでいるんだ」と肌感覚で理解するに至り、「自分はゲームを世界に送り届ける工程の一部しか知らなかったのだ」と痛感しました。開発現場がゲームを完成させても、それがユーザーの手に届かなければ意味がありません。プロデューサーになってようやく「1本のゲームがどのように生まれるのか」を俯瞰することができたのではないかと思います。今後、「より深く自分の領域を広げていきたい」と考えるきっかけになった貴重な体験でした。
野心と熱量を併せ持った方に
現在はプロデューサーですが、ゲームクリエイターとしてのキャリアの半分以上は、エンバイロメントアーティスト、そしてアニメーターとしてゲーム制作に関わってきました。特にプラチナゲームズのゲームづくりについては、その長所も短所も肌感覚で理解していると思います。現場の事情や特性を理解したうえでチームマネジメントを行っていけるというのは、プラチナゲームズにおける僕の強みなのかなと感じています。 これからプラチナゲームズは、自社IPの開発・発売に乗り出していきます。これまで経験したことのない業務に臨んでいくなかでは、まだまだ会社に不足している能力があるだろうと思います。プロダクションサイドとして、そうしたウィークポイントを埋めてくれる方を必要としているのはもちろんですが、それ以上に大切にしたいことがあります。それは「プラチナゲームズから面白いゲームを発信していきたい」という熱量を持っている方です。プロデューサーという仕事は裁量も責任も大きく、それだけに自分のカラーや熱量がプロダクトに大きく反映されるポジションでもあります。「これまでプラチナゲームズが築いてきたブランドを大いに活用しつつ、新しい価値を生み出したい」という野心と熱量を併せ持った方には、ぜひ一度プラチナゲームズの門戸を叩いていただきたいと思っています。
PROFILE Eijiro Nisimuraゲームクリエイティブディビジョン 副ディビジョン長/プロダクショングループ グループ長/プロデューサー |
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カプコン、クローバースタジオ、SEEDを経てプラチナゲームズへ。『バイオハザード』『鉄騎』(エンバイロメントアーティスト)、『バイオハザード4』『大神』『BAYONETTA(ベヨネッタ)』(アニメーター)などの開発に携わる。その後『NieR:Automata』『ASTRAL CHAIN』ではプロデューサーとしてチームを率いる。現在は、プロダクショングループのグループ長として全プロジェクトのプロダクション業務に携わっている。 |