Masaki Yoritomi

頼冨 正樹 インタビュー

驚かせたい気持ちは みんな同じ

 

頼冨 正樹

ゲームクリエイティブディビジョン/大阪スタジオ/第5グループ/キャラクターモデリングチーム チーム長/シニアキャラクターモデリングアーティスト

こだわりに応えてくれるスタッフがいる

『METAL GEAR RISING REVENGEANCE(以下、MGR)』では、主要キャラクターの顔のモデリングなどを担当しました。『メタルギア』シリーズは、印象に残るキャラクターを数多く生み出した人気シリーズです。そのクオリティは非常に高い。それだけに、『MGR』のキャラクターたちの顔を担当するのは、非常にプレッシャーがありました。 まずは、「本編にも負けないぐらい印象的なキャラクターを」と、コンセプトアーティストとともに試行錯誤していきました。ポイントは、「カンタンに似顔絵が書けるぐらいわかりやすい顔」と「リアリティ」の両立です。コンセプトアートの時点では特徴的な顔を描いてもらって、解剖学的にリアリティのある解釈に落とし込んだり、逆にリアリティのある顔に特徴を加えたりと、アートとモデリングを行き来し、いろいろとアプローチを変えながら取り組んでいきました。 また、他のスタッフにもたくさんわがままを聞いてもらいました。キャラクターによっては、ゲーム中の見え方に納得できず、特にフェイシャルアニメーションのスタッフには何度も細かなお願いをした覚えがあります。かなり手間をかけさせたと思うのですが、修正のたびにアニメーション側もクオリティを上げてきてくれました。キャラクターたちがイキイキとした表情で演技してくれるようになっていくのがうれしくて、開発中に何度もイベントムービーを再生して眺めていましたね(笑)。最終的には、印象に残る良いキャラクターを生み出すことができたと自負しています。こだわりに対して協力してくれるスタッフがいたからこそ、できたことだと思います。

遊び要素にもこだわるスタッフばかり

どの職種も同じだと思いますが、やはり誰かに反応してもらえると楽しいですね。特にキャラクターモデリングアーティストは、ビジュアルを直接ゲーム上に表現できる職種なので、「何とか驚かせてやろう」と思ってしまいます。テストプレイ時にインパクトのあるモデルが出てくると、「すごいな」という声をきっかけに人だかりができることもあって、「してやったり」という気持ちになります。 「驚かせたい」という気持ちは、みんな同じかもしれませんね。『MGR』でも、ちょっとしたこだわりから思いがけない流れになった仕事がありました。とあるシーンに登場する「場違いな萌え雑誌」をモデリングすることになったのですが、パラパラとめくる時に中が見えるので「誌面が必要だ」という話になったんです。そこで、イラストレーターに架空のアニメを描いてもらうため、モデリングの傍ら、架空の萌えアニメの企画を考え続けていました。話を聞いたディレクターやゲームデザイナーも、自分たちの考えた萌えアニメ企画を提案してくれて楽しかったです。発注したイラストが上がってきた時には、社内で印刷・製本して実際に本を作ったりもしました。脇道のような仕事ですが、プラチナゲームズではこういう遊び要素でも凝ったものになることが多いですね。みんな、誰かを驚かせるのが好きなんだろうなと感じます。

「足掻く人」とともに働きたい

キャラクターモデリングアーティストの本分は、キャラクターを通してゲームのクオリティを引き上げることです。しかし、最大の目的はあくまで「面白いゲームをつくること」なので、あまり限定せずさまざまな関わり方をできた方が良いと思っています。たとえば私は、モデリング業務に加えて、一部キャラクターデザインを担当することもありますし、ときにはスクリプト、Houdini等をつかって便利なツールや新しい表現を作ることも。今は『BABYLON’S FALL』でアートディレクションに挑戦中です。昔からいろいろな技術を身につけるのが好きだったのですが、以前はそれをどうつなげればいいかわかりませんでした。しかし「面白いゲームをつくること」を目標にしたとき、バラバラだと思っていた技術がつながり、ゲームへの関わり方も多様になっていったんです。プラチナゲームズではこういう挑戦を評価してもらえる環境というのも、良かったですね。「プラチナゲームズのキャラクターモデリングアーティストは、いろんな形でゲームに関わることができる」という良いロールモデルになれたらと思います。 開発では、みんなのテンションが同じレベルにあることが重要だと考えています。「目標を高く持って試行錯誤しよう」と言っても、一人きりではすぐに限界が来るでしょう。さまざまなスタッフの協力なしには、とても実現できることではありません。「もっとやろうぜ!」と言ってくれる人がたくさんいて、それぞれが足掻くことで、やっと目標にたどり着くことができるんだと思います。そういう人は、今よりもっともっと増やしたいですね。

 

PROFILE

Masaki Yoritomi

ゲームクリエイティブディビジョン/大阪スタジオ/第5グループ/キャラクターモデリングチーム チーム長/シニアキャラクターモデリングアーティスト

キャラクターモデリングアーティストとして、前職では『ストリートファイター4』、プラチナゲームズ入社後は『MAX ANARCHY』 『METAL GEAR RISING REVENGEANCE』などの開発に携わり、主要キャラクターのモデリングを担当。 現在は『BABYLON’S FALL』のキャラクターモデリングアーティスト兼アートディレクターを担当している。また同時に、キャラクターモデリングチームのチーム長も務める。