PlatinumGames

Wataru Ohmori Interview

大森 亘 インタビュー

新しい技術に
トライしていく“先行者”

 

大森 亘

執行役員/チーフテクノロジーオフィサー/ゲームクリエイティブディビジョン 副ディビジョン長/技術戦略グループ グループ長

200体の集団を流体のように制御する

これまでのキャリアを振り返ると、「とにかく仕事をし続けてきたな」と感じます。あるタイトルでは、ゲーム中に登場する敵の半数以上を自分一人でつくりながら、システムの構築とステージギミックの実装も担当しました。またあるタイトルでは、UIのバグが500件以上発生していたので、すべてつくり直して修正しました。少人数体制で開発したタイトルでは、ほぼすべてのゲームシステムを一人でつくったこともあります。
その中でも特に記憶に残っているのは、『The Wonderful 101(以下、TW101)』の群体制御の実装です。プラチナゲームズの技術ソリューションと品質リードを担う技術戦略室を立ち上げて以来、タイトル開発の現場からは離れていたのですが、プロジェクトチームからの救援要請があって急遽担当することになりました。『TW101』では敵味方合わせて200体以上のキャラクターを個々に制御しながら、集団として動かす必要があります。一般的なアクションゲームなら個々のキャラクターが各自判断しながら行動しますが、200体以上のキャラクターで同じことをすると処理能力が足りなくなります。また、ディレクターの神谷からは「流体のような集団の挙動を目指してほしい」とオーダーされていたこともあり、個々の動作を制御できたとしてもそのイメージは実現できないと考えました。
そこで『TW101』では、クロスシミュレーションを応用した「群体メッシュ」を構築し、その上に各キャラクターを乗せる形で制御することにしました。群体メッシュによる位置制御と、それぞれのキャラクターの挙動を切り分けることで、マルチスレッドの恩恵を十分に受けることができ、なんとか200体以上のキャラクターをさばくことができました。その他にもゲームの進行に合わせてキャラクターが増減したり、群体メッシュから一時的に離れて独自行動を行うキャラクターがいたり、いろいろと工夫が必要でした。苦労の結果、「100人のヒーローを操る」という『TW101』の一風変わったゲームデザインを実現することに、多少なりとも貢献できたのではないかと思っています。

「この人ならなんとかしてくれる」

技術戦略グループでは現在、自社エンジンの開発を行っています。個人的にもアニメーションやサウンド、シネマティックを中心に、幅広くいろいろな分野に取り組んでいきました。エンジン開発自体はタイトル開発に直結する仕事ではありませんが、並行してタイトルごとの特殊な処理にも関わっています。
たとえば『TW101』で構築したのは、バラエティ豊かなシネマティックシーンを再現するための特殊なシステムです。このゲームには非常に多くのQTEが盛り込まれており、シネマティックシーンも例外ではありません。QTEの成否によってその後の演出が変わり、リトライが発生したりもします。それらを一連のシーンとして組み上げ、編集するために既存の環境に手を入れて対応を行いました。
最近の業務としては、エンジンの実装からマネジメントに移行しつつありますが、こうしたタイトル内で技術的に難しい実装のカバーをしたり、時間を見つけては効率化できそうなことにトライしたりしています。難易度が高いもの、初めてチャレンジするものなどのカバーについては、率先してやり続けてきたような気がしますね。「問題を解く」というのが、根っから好きなんだと思います。一番楽しいのも、できなかったことが「できるようになった」とスタッフに報告に行く瞬間ですから(笑)。今も仕事の合間に少しずつ仕込んでいるものがあるので、「どこかでお披露目できたらいいなぁ」と思っています。これからも新しい課題に直面するたびに「この人ならなんとかしてくれる」というポジションで仕事をしていたいですね。

エンジンにもタイトルにも関わっていく

「この人ならなんとかしてくれる」と相談を持ち込まれるのは、技術的なことばかりではありません。タイトルが迷走していたり、ピンチに陥ったりしているときに判断を任されることも多いです。入り組んだ事情や要素を把握したうえでの正確な判断が求められるため、対応に苦慮するケースがほとんど。ただ、今まで成功したタイトルにも失敗したタイトルにも関わってきた経験があるので、それをもとに判断を下し、フォローすることで、タイトル開発チームにはのびのびとチャレンジしてもらえたらいいなと感じています。
自分はこうした「最後の砦」のような存在であると同時に、新しい技術やプラットフォームにトライしていく先行者でもあると思っています。抱えている仕事は増えてきましたが、ディープラーニングや自動化、制作環境の改善など、取り組みたいことは山積みなので、少しずつ形にしていきたいですね。
技術戦略グループで取り組んでいる自社エンジンの開発においては、担当者に担当分野について大きな裁量が与えられます。その自由を楽しみながら、しっかりと責任を果たしてくれる人と一緒に仕事がしたいですね。先述の『TW101』のシネマティックシーンの例のように、全社共通のシステムを組みながらタイトル固有の機能を構築するケースもあります。『NieR:Automata』のサウンド表現や『ASTRAL CHAIN』の特殊表現も、エンジン開発チームによるものですし、タイトルの描画表現を一手に引き受けることも多々あります。こうした環境は業界内でも珍しく、おそらく想像以上に多様なスタッフと関わりながら仕事をしていくことになるでしょう。しっかり相手の話を聞き、どのようなものが求められているかを理解し、それに応えていく。そのことにやりがいを感じられそうなら、とても面白い仕事が待っていると保証します。

 

PROFILE

Wataru Ohmori

執行役員/チーフテクノロジーオフィサー/ゲームクリエイティブディビジョン 副ディビジョン長/技術戦略グループ グループ長

カプコンで『バイオハザード(GC)』『鉄騎大戦(Xbox)」、クローバースタジオで『大神』などの開発に携わる。プラチナゲームズでは『BAYONETTA(ベヨネッタ)』の開発に関わり、その後は社内エンジンを担当する技術戦略室を立ち上げ、グループ長を務める。新技術の導入において、プロジェクトからヘルプを要請されることも少なくない。
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