こんにちは、リードキャラクターモデリングアーティストの舟橋です!

すでに本ブログでご紹介させていただいているキャラクターデザイナー・片桐裕司さんゲームディレクター・ヨコオタロウさんによる講義に続いて、スタッフからの熱い要望を受け、またもやスペシャルな講師をお招きし、社内でのクローズドセミナーの開催が実現しました!

今回の特別講師は漫画家・イラストレーターとしてご活躍のコザキユースケさんです!コザキさんと言えば、『ファイアーエムブレム[ヒーローズ/if/覚醒]』や『ポケモンGO』、先日新作が発表された『ノーモア☆ヒーローズ』シリーズなど、ゲームのキャラクターデザイナーとしても広くご活躍されているので、誰もが、そのデザインを目にし、魅力に惹かれたことがあるのではないでしょうか。

「学生の頃からのファンです!」というスタッフも少なくなく、キャラクターデザイナー、モデリングアーティストを中心に、多くのアーティストたちが詰めかけての開催となりました。

今回は、そんな氏の豊かなデザイナー経験に裏付けられた、さまざまなデザイン手法、思考を、「キャラクターデザイン」にフォーカスし、解説していただきましたので、僭越ながらレポートさせていただきます!

まず、1時間ほどの講話です。
「そもそも、なぜキャラクターデザインというものが必要なのか」という根本的な提起から、我々アーティストの存在意義や成すべき仕事について、あらためて確認するところから始まります。曰く、「キャラクターデザインとは、作品のコンセプトやキャラクターのバックグランドを、より速く、効果的に伝える“装置”である」とのこと。デザイン作業を手段と捉えるか、目的と捉えるか……曖昧なままの人も多いと思いますが、講話の最初にハッキリと宣言されたことが印象的でした。

また、私個人としては「キャラクターデザインは人間賛歌である」という言葉も、とても好きでした。自分の身の周りにいる、好きな人は当然のこと、嫌いな人に対しても興味をもち、なぜその様に感じるのかを理解し、それすらもデザインのための糧とする……。老若男女、人種の違い、善人と悪人、そうした境界をすべて超越し、関心をもつことが、重要なのだと痛感しました。

さらに、誰もが知りたい最大のテーマ「売れるデザインってあるの……?」のお話に続きます。結論から言えば、「デザインの良さだけで、そのキャラクターが爆発的にウケたことはない」「キャラクターデザインは基本的に無力である」とのこと。この言葉には驚きました。ですが、デザインへの評価というものは、シナリオやゲームプレイ等をひっくるめた総合的な感情の移入度によって、大部分を支配される、というお話には、確かに身に覚えがあります。

そうした、ある意味で運の要素も絡んでくるデザインの世界の中で、如何に「人気が出やすいデザインにするか」という、門外不出的なお話に移ります。ユーザーが潜在的にポジティブな印象を持っている意匠を入れる。好き嫌いの少ない、感情移入をし易い配色を心がける……などなど即実践できそうなテクニックが続々紹介されました。また、『ベヨネッタ』や『NieR:Automata』など、身近な事例を取り上げながらの解説も、強く納得させられました。

その他、フローチャート式のデザイン手法など、デザインの最初期の段階で行われる「前準備」までが、講話として解説されました。与えられた設定から、まずは「頭部だけ」のイメージを導き出していく、というもの。服装やその他小物類を含めてのキャラクターデザインですが、なるほど顔を見ただけでも、その背景を雄弁に物語っている人相か、というのはとても重要ですし、頭部がある程度イメージできていれば、身体のデザインも比較的スムーズかもしれませんね。

続いて、タブレットを用いて、ほぼフルスクラッチで、キャラクターデザイン作業を行っていただきました。既存のデザインではなく、本セミナー専用に描き下ろしてくださるわけですから、非常に贅沢で貴重な時間と言えます……!

日ごろの業務とまったく同じ流れで、「全身のシルエット」「配色」「ディテールの描き込み」という工程を、2体のキャラクターで実演していただきます。

随時、寄せられる質問に応じていただきながらも、ものの30分ほどで私だったら「直ぐにでもディレクターに見せたくなる」レベルのデザインが仕上がりました!ラフな部分もあれど、何を伝えたいかは的確に受け取ることのできる、まさに“装置”としてのデザインを目の当たりにしました。

その後は、予定していた時間を大きく超えながらも、スタッフからの質問に、時には実演を交えながら丁寧に答えてくださったりと、贅沢な時間が続きました。社内のスタッフからの要望により実現した本セミナーでしたが、ココまで聞いていいの?見ていいの?な内容の連続に、大興奮の中、幕を閉じました。コザキさんの尽きることないサービス精神に、ただただ感謝です!

私自身、コザキさんとは初対面だったのですが、以前、スマブラのベヨネッタ参戦イラストを描かせていただいた際に、コザキさんがデザインされたルキナ(『ファイアーエムブレム 覚醒』)は是非とも登場させたいと思い、選ばさせていただいたキャラクターの1人でした。今回のお話で、そのデザイン1つ1つへの理解が深まり、ちょっとだけ、あの流麗なイラストの秘けつに近づけた?様な気がします……!


最後に、参加者の声を一部ご紹介して、お別れです!



参加者たちの声




見る人が持つ既視感や親しみ、機能美を重要視しているという点が大変勉強になりました。


とても論理的にキャラクターデザインを組み立てているのが分かり、大変勉強になりました


色選びが苦手なので、色に関する話は大変参考になりました

「デザインとはコンセプトやバックグラウンドを最短で伝える装置」という言葉など、頭の中の霧が晴れるような内容ばかりでした。

コンテンツの評価、感情移入度とキャラデザの評価の関連性においては思い当たる節もあり、開発側としても非常に考えさせられることばかりでした……頑張ります!



セミナー終了後のオフショット


今日はコザキユースケさんと美味しいご飯を食べました…

@pg_kamiya_instaがシェアした投稿 –

なぜかジョー風…

@pg_kamiya_instaがシェアした投稿 –


funahashiコザキユースケ Kozaki Yusuke
漫画家/イラストレーター/キャラクターデザイナー
『烏丸響子の事件簿』(作画)、『どーにゃつ』など、漫画家として連載を抱える一方で、『ファイアーエムブレム[ヒーローズ/if/覚醒]』や『ポケモンGO』、『ノーモア☆ヒーローズ』シリーズ、『パズル&ドラゴンズ』『GODZILLA-怪獣惑星-』『ブブキ・ブランキ』など、数々の人気ゲームやアニメのキャラクターデザイン/デザイン原案/イラストを手がけるなど活躍は多岐に渡る。

funahashi舟橋英志 Eiji Funahashi
2009年にプラチナゲームズに入社。キャラクターモデリングアーティストとして、『ベヨネッタ2』『スターフォックス ゼロ』『NieR:Automata』などの開発に携わる。初めて開発に携わった『ザ・ワンダフル ワン・オー・ワン』で、リードを務めるなど、その技術力は早くから高く評価されており、『Teenage Mutant Ninja Turtles: Mutants in Manhattan』(日本未発売)では、リードモデリングアーティスト/キャラクターデザインも担当。
2017年からは、ビジュアルチームのリーダーとして、プラチナゲームズ作品のグラフィック表現を牽引すべく、社内勉強会などの充実に力を入れている。現在はリードモデリングアーティストとして『ロストオーダー』を鋭意制作中。