はじめまして、ゲームデザイナーの根岸です。
先日、『NieR:Automata』のディレクター、ヨコオタロウさんをプラチナゲームズにお招きし、ゲームシナリオに関する講義をして頂きました。

内容としては、物語の根本の考え方・本質について具体例を絡めて深く踏み込んだ、身につければ一生モノのスキルになるようなもので、ものすごーーーく貴重で為になる、ありがたいお話でした。そして、今回はそのエキスをほんの少しだけ皆さんにも共有させて頂こうと思います!講義は、「感情の話」「世界の話」「技術の話」という3つの項目に分かれていましたので、各項目に沿って紹介します。


◯「感情の話」
物語を作るということは、感情をデザインするということで、その為に、まずは自分の感情の理解が必要。感情の理解とは、自分はどこで感動し、それはどんな要素で構成されているか分析するということ。そして、それらの要素の構造を取り出し、自分の物語に利用できる形に昇華する。

◯「世界の話」
どこで感動するかは人によって違う。そこで、物語を作る際は、自分の感性が万人に通用しない、という前提に立ち、様々な人の感覚を想像し、多角的な角度で沢山の表現をし、なるべく多くの人に刺さるようにする。

◯「技術の話」
体験させたい感情を「感情のコア」と定義し、感情のコアを補強・強調するために話を肉付けしていく。最優先事項はあくまで感情のコアなので、ネタを足す時は感情のコアに沿っているかよく検討する。


簡単ではありますが、要点をまとめてみました。現場では、各項目に対したっぷり時間をかけ、具体例を交えてわかりやすく解説して頂きました。

仮に、みなさんが実践する場合、まずは自身の感情の分析から入ることになると思いますが、例えば、ヨコオさんは家で映画鑑賞中に随時そういったポイントをメモしながら観るそうです。観ながら実践は高等技術な気がするので、まずはゲームなり映画なりを体験した後にまとめるところから始めるといいのかなと思います。気軽な形式でも良いのでちゃんと続けることが重要だと感じました。

また、個人的には今回のシナリオの話はゲームデザインとの共通項も多いと感じました。ゲームデザイン・ゲーム制作においても、自分が面白いと思ったゲームを分析し、構成する遊びや体験の構造を消化することはゲーム制作において非常に有用ですし、ユーザーを想像しながら作っていく、という点も共通しています。さらに、シナリオの芯となる「感情のコア」はゲームデザインにおける「コンセプト」と言い換えることが出来ると思います。この点に関して、最初は意外な共通点だと感じましたが、そもそもゲームディレクターのヨコオさんの理論なので、骨子が似ているのは当然なのかもしれません。

そういう意味で、今回の講演はシナリオに限らず、ものづくりそのものへのヒントも多く感じられる非常に有意義なものとなりました。ヨコオさんには感謝のキモチでいっぱいです。

後半のワークショップの様子を紹介しつつ、レポートを終えたいと思います。それではさようなら。



感情のコアの肉付け


大量の敵をぶっ飛ばすことに特化したゲームの感情のコアを「殺す!」と定義し、より敵をぶっ殺したくなる要素を逆算で肉付けしていきます。なお、この写真はブログ掲載用に撮らせて頂いたもので、実際の講演はエミールヘッド無し、剥き出し状態のヨコオさんが行ってくれました。

要素を足した後、実際にライブでプロットを作成して頂きました。ゴールの感情のコアを中心に話を構築するので、時系列を行ったり来たりしながら流れを作っていきます。



プロット制作


5~6人のチームに分かれ、実際に短いプロットを制作しました。

ヨコオさんのお手本を見よう見まねで作っていきます。

実際に作ってみると、要素が複雑に絡み合うので、どこにどう手を付けるべきか、かなり混乱しました。

当初設けていた制限時間を3倍ほどオーバーしつつも、各チームでなんとか形にし、それぞれ作ったプロットを発表し合いました。プレゼン後は、ヨコオさんから優しさにあふれた講評をいただきました。




negishi根岸功 Isao Negishi
2011年にプラチナゲームズに入社。
ゲームデザイナーとして、『The Wonderful 101』『The Legend of Korra』の開発に従事。『BAYONETTA on Wii U』では、豪華移植版制作のディレクターを務めた。
最新作『NieR:Automata』では、レベルデザインやメインシナリオの実装の他、サブクエストの構成を担当するなど、ゲームデザイナーとして活躍の場を広げている。