こんにちは、ヤップ・クン・ロンです。
私はシンガポールからまいりました。プラチナゲームズに入社してからすぐに『メタルギア ライジング リベンジェンス』の背景コンセプトアートを担当しました。制作ラインはすでに走り始めており、歴史あるタイトルに新しいものを生み出すため、さまざまな苦労がありました。

今日はこの注目されているタイトルの背景コンセプトアートを紹介したいと思っています。どうぞよろしくお願いします!


さまざまなコンセプトアート:その1さまざまなコンセプトアート:その2
さまざまなコンセプトアート:その3さまざまなコンセプトアート:その4
さまざまなコンセプトアート:その5さまざまなコンセプトアート:その6
さまざまなコンセプトアート:その7さまざまなコンセプトアート:その8

子供の時から「メタルギア」シリーズは何作もプレイしているので、今回ライジングの背景デザインをすることになり、すごくびっくりしました。歴史のあるヒットシリーズだから、ちゃんと皆さんの期待にこたえないとならないし、初めてコナミさん以外がデザインする「メタルギア」になるので、とても緊張していました。いろんな苦労をすることになりそうでした。

ところでこのゲームの開発は元々コナミさんがされていましたが、最初にその背景デザインを見せていただいた時には、今回は相当SFの世界になるんだと思っていました。コナミさんの最初のデザインは「MGS4」に比べてもかなり未来的な方向だったのです。

ですが、プラチナがライジングを開発することになってから方向性が少し変わりました。ディレクターが従来の「メタルギア」の方向からちょっとずれたものを求めていたので、もっと近代的でモダンな方向性に変わったのです。シナリオも読んでみると、ミリタリー系や軍用設備よりも一般市民が使うような場所が多く出てきました。以前の「メタルギア」シリーズにはあまり登場しなかった場面のデザインが必要です。もちろん「メタルギア」の世界を守りながら、魅力的で、現実的な世界にしなければなりません。

たとえば、これまでの「メタルギア」に出てくる工場設備だとしたら、素材はほとんど金属じゃないかと思います。でも、今回のライジングではコンクリートと鋼を使って、近代的なシンプルなデザインにしました。近代建築を参考にしながらも、ぎりぎりまで「メタルギア」の世界にも合うようなデザインにすることが狙いです。それで今回のライジングの方向が決まりました。「メタルギア」の世界を壊さないようにしつつ、その中でも実際にあり得るようなモダンデザイン。60fpsというフレームレートを実現することも考えないといけないので、デザイン的にもいろんな状況で制約を受けました。近代の素材もよく考えると、CGに出にくい質感がかなりあるため、ライティングもちゃんとやらないといけません。

心配していた通り、最初からなかなかスムーズにはいかなかったです。目指す方向性に対して、試してみたい表現なども多く、実現に至るまで足踏みが続きました。コナミさんからもいろいろな提案がありましたが、こういったやり方はプラチナも初めてで、また以前にファンタジー要素を持ったタイトルを作った経験もあるため、進むべき方向に迷うのも当然でした。その時個人的に考えていたのは、「従来通りのメタルギアの世界にすれば一番楽だろう」ということですが、もちろんそんな安易な方向に逃げるわけにはいきません!

参考までに、その迷走していた時のデザインと、最終的に決定したデザインをご紹介しましょう。

初期のデザイン。少しファンタジー色が入ったような感じです。
初期のデザイン

決定したデザイン。シンプルで、いかにもPMC(民間軍事会社)といった感じです。
決定したデザイン

初期の屋上のデザインです。
初期の屋上のデザイン

決定したデザイン。もっと現実にありそうで、機能的なデザインです。
決定した屋上のデザイン

こうして振り返ってみると、このプロジェクトはとても長い道のりでした!こんなに注目されて、期待されているタイトルを、独自性を持った二つの会社が触発し合いながら開発するのですから、少しでも間違えば今とは完全に違う方向に行ったかもしれません。方向性の迷いや、二つのスタジオによる丁々発止のやり取りなど、いろいろ大変でしたが、こんな状況の中からでも最終的にはライジングの世界観が見えてきて、ようやくほっとしました。新しい方向性も決まり、発売日も近付いたので、あとは皆さんが納得できる世界観となっていることを祈るのみです!

今日はいろんな想いを伝えられてとてもよかったです。ありがとうございました。ぜひ発売を期待していて下さい!

それでは!

ヤップ・クン・ロン