音楽ディレクターの田中です。お陰様でゲーム発売とほぼ同時にサウンドトラックもリリースされる予定で、僕はゲームとサウンドトラックの両方が届くのを楽しみに待っている日々です。さっそくですが、今回は『メタルギア ライジング リベンジェンス』の音楽について書かせていただきます。
　

「メタルギア」シリーズの特徴の一つとして、最も早い時期に映画的な手法をゲームに取り入れた功績が挙げられると思います。音楽も同様に、映画音楽スタイルのサウンドトラックはゲームに映画のリアリティを持ち込むことで、多くのユーザーに没入感あるゲーム体験を提供してきました。ライジングでは映画の本場ハリウッドで活躍する作曲家、Jamie Christophersonに全ての音楽を依頼して万全の態勢で挑んでいます。(http://www.jamiechristopherson.com/)
公開済みのTGSトレイラーの音楽を聞いていただければ、その実力を感じ取ってもらえるのではないでしょうか。
　

　
体験版をプレイされた方は、海岸や街で流れる音楽も印象に残っているかもしれません。舞台となるアブハジアは黒海に面する国で、この地域の民族楽器を取り入れることで、Jamieは独特の音楽を作り上げてくれました。
　
次に、アクションゲームの要となる戦闘シーンでは、映画音楽テイストから一転してメタルテイストの音楽にチェンジします。ここで音楽制作チームに強力なサポーターが参戦します。メタルバンドMachine Headの初期メンバーでギタリストとして活躍したLogan Maderです。僕は特別にメタルに詳しい方ではありませんが、Machine Headの名前は知っていますし、彼の参加はメタルファンにとってインパクトあるニュースかもしれません。
　
ライジングには映画音楽だけでなく、本物のメタル音楽が（もちろん歌詞もボーカルもある歌として）、一枚のCDアルバムに匹敵する曲数で贅沢に使用されています。聴き応えのあるボーカル曲の存在も、このゲームの魅力になっていると思います。
　
おおよそこの時点で十分な音楽クオリティは保証されているのですが、普通のメタル音楽では飽き足らず、もう一段踏み込んだ決断が下されました。それはボーカル曲をリミックスして新しい感覚を取り入れようという試みです。
　
ライジングを任せられるリミキサーとして探し出したのは、Maniac Agendaというダブステップのアーティスト。彼らはメタルをクールにリミックスするスキルがあるだけでなく、無類のゲーム好きということで、まさに今回のプロジェクトにピッタリでした。実際にゲームで耳にできる超絶リミックスは、彼らのオリジナル作品にその片鱗を垣間見ることができます。(http://www.maniacmusic.net/)
　
また、リミックスには社内からもメンバーを投入しました。迷うことなく最適任者として指名オーダーしたのはサウンドスタッフの滝沢。体験版で聞けるLQ-84i戦の音楽は彼のリミックスです。既にユーザーの方から『音楽が良い！』という声を何度かいただくことができて、まだゲーム発売前ですが、ほんの少し安心感を得られた気がします。
　
　
このように多くのメンバーによって完成したライジングの音楽は、誰か一人だけでは作ることのできない、各メンバーの個性が反映された音楽になりました。
　
今一度サウンドトラックについて補足させていただくと、CDリリースされるパッケージは二種類あります。一つめは限定版のPREMIUM PACKAGEに付属する『ORIGINAL SOUNDTRACK』で、ゲーム中のいわゆるBGMが収録されています。二つめは単体発売となる『VOCAL TRACKS』で、その名の通りボーカル曲を集めた内容となっています。この二種類のサウンドトラックの内容は全く別物ですので、完全な全曲サウンドトラックを揃えるには両方が必要となります。少しセールストークのように感じられたかもしれませんが、複数パッケージは混乱を招く事が多いので、ユーザーの方々が正しいパッケージを選択できるよう説明させていただきました。僕自身、情報不足で間違ったサウンドトラックを買ってしまった経験は何度もありますので。
　

　
最後になりましたが、ゲームを音楽も含めて楽しんでいただければ、純粋に作り手としてこれ以上の喜びはありません！
　
　
追記：
この記事を執筆している最中に最新情報が届きました。サウンドトラック『VOCAL TRACKS』の楽曲リストが公開となりました。さらに試聴もできるようなので、興味のある方はぜひリンクを辿ってみてください。
http://www.konamistyle.jp/item/72139