『ASTRAL CHAIN(アストラルチェイン)』メインシナリオ担当、仲と申します。

シナリオについてはゲーム本編で確認していただくとして、今回は自己紹介と深部には触れない紆余曲折の一端を書いてみます。

まずは、唐突に「シナリオ担当の仲」と言われても何者なのか?と思われたのではないかと思います。

普段は裏方に徹するタイプのゲームデザイナーをやらせていただいており、プラチナ歴は約8年、ゲーム業界にはもう少し長く関わっています。趣味もアクションゲームをプレイすること、ドット絵やイラストを描いたりすること、とゲーム漬け。ゲームが無ければ消滅してもおかしくない人間です。

ゲームデザイナーとしての仕事歴は長いので、『MAX ANARCHY』、『METAL GEAR RISING REVENGEANCE』、『BAYONETTA 2』、『スターフォックス ゼロ』……といろいろ関わってはいるのですが、実は開発の始めから携わるという機会はなかなか無いまま今まで来ました。

そんな私に目を付けたのがディレクターの田浦でした。
プラチナゲームズのゲームづくりに、これと言った定石はないように思いますので、私見ですが、シナリオは作品をまとめるために必要不可欠なもので、ゲーム性にも深く関わりを持つため、ディレクターが書くものと思っておりました。

『ASTRAL CHAIN』もディレクターの田浦自身が書いても良かったように思うのですが、当時まだ固まっていなかったデュアルアクションの掘り下げとシナリオ作業を並行するのはなかなか大変ということで、UIやゲーム内テキストについてよく担当している私に「シナリオを担当して欲しい」と依頼してきたのです。

田浦の話を聞く限り、当初は口述筆記の筆記係程度に思えたので、最初から関われるのは貴重な機会だ、と軽い気持ちで受けてしまったのですが、まぁ当然そんなはずはなく……
そこには長く険しい道が待っていたのでした。

初期作業は、田浦、アートディレクターの木村と私の3人でネタを持ち寄り話し合ったり、任天堂さんにも適宜アドバイスをいただきながら、今のベースとなる、「ヒーロー」「警察」「近未来」という、3人がともに好きな要素で進めることに決まりました。あとレギオンを呼び出すときのアクションや掛け声、NPCのキャラクター設定など、中二な要素が多いのも、この3人が案を出し合った結果かも知れません。

ネタやシーンを考える際は、このようにラクガキをしながら考えることが多いです。関係のない絵が進み、作業が進まないこともあります……。もっといろいろ画像をと思いましたが、余計な事が書かれ過ぎており現時点ではお見せできない物ばかりでした。

そんなこんなで、ベースを好きな要素で固めたので直ぐに草案は出せたのですが、これらを筋立てて、深堀りし、ゲームにも繋げるというところで混迷を極めることに……



二転三転と変化するシナリオ。

何も決まらぬまま設定を作り直してはつぶす、ということを繰り返し時間ばかりが過ぎていく中、自分だけでは力が及ばず、任天堂さんにご助力いただいたり、弊社のチーフゲームデザイナーの神谷にも助言を求めたりして、ようやくそれまで考えてきた設定、シナリオにゲーム内容など、バラバラに点として存在していたもの達が、連鎖的に一気に線としてまとまり、現在の形に落ち着いてくれました。

中でもレギオンと主人公の関係は、当初「武器とそれを操る人」という関係でしかなかったのですが、「敵であるキメラを元に作り出した」とすることで、“凶暴でいつ暴走するか分からないパートナーを連れている”という、本作ならではの関係を作り出すことができました。

この設定はレギオンのモーションにも影響し、当初は格好良いアクションだけがメインだったのですが、設定を反映するために端々に凶暴性を表すアクションが加わったお陰で、ただならない存在感が出ています。


 
……というわけで、紆余曲折もありましたが、多くの人に支えられた結果、今では自信をもってお薦めできるものになりました。

本編以外にもゲーム中にはゲームデザイナーの皆が考えてくれたクエストが多数用意されています。(私は台詞のリライトで関わっています)
主人公以外の隊員達や、いろんな個性を持った人物が登場する、それらの事件の数々を解決することで、『ASTRAL CHAIN』の世界をより深く知っていただけるのではないかと思いますので、隅から隅まで遊び尽くしてみてください。

それでは、今回はこのあたりで失礼致します。
次回書く機会があれば、その際はキャラクター誕生秘話、世界観の小ネタなどを書ければと思います!



naka仲 晃照 Akiteru Naka
2011年にプラチナゲームズに入社。ゲームデザイナーとして『MAX ANARCHY』、『METAL GEAR RISING REVENGEANCE』、『BAYONETTA 2』、『スターフォックス ゼロ』などで、主にUIやテキスト編集・管理を担当。現在は、『ASTRAL CHAIN(アストラルチェイン)』でメインシナリオおよびサブシナリオ監修に携わっている。