ゲームデザイナーの根岸です。
先日、九州で開催された「CEDEC+KYUSHU 2017」 にご招待いただき、ゲームデザイナーの田浦と2人で【『NieR:Automata』でみるアクションのあれこれ】と題したセッションを担当させていただきました。

まずは、簡単にCEDEC+KYUSHUの紹介をさせていただきます。

CEDECは、ゲーム開発者向け技術交流会(コンピューターエンターテイメントデベロッパーズカンファレンスの略)で、毎年横浜で開催されています。今回のCEDEC+KYUSHUは、その九州版です。横浜で3日間に渡って開催される日本最大規模のCEDECと違い、開催は一日だけとちょっと小規模ですが、九州のゲーム開発会社のセッションが多く聞けるのが特徴です。また、学生さんの参加率が多いのも印象的でした。

会場は、九州産業大学の構内でした。広いキレイ!

ありがたくも我々のセッションは大盛況。立ち見が出るほど沢山の方が受講してくださいました。

セッションの内容は、『NieR:Automata』におけるアクションの考え方・作り方を、業界未経験者にも分かる形に噛み砕いてまとめたものです。

発表する田浦

具体的には以下のような構成でした。当日使用したスライドを一部交えて紹介します。



1. 作品紹介・開発体制・プラチナ流ゲーム作りの解説

先ず始めに、アクション制作で大事にしているポイントや『NieR:Automata』で採用したワークフローについて解説しました。プラチナゲームズでは、操作感やさわり心地を大切にしているので、とにかく“作って遊んでみる”トライアル・アンド・エラーを最優先にした開発体制になっています。





2. アクションのコンセプト立案の手法

続いて、どのような手法、考え方で本作のアクションが作られたのかという解説に進みます。先ずは、アクションパートのコンセプトについて。大まかには、以下のような流れで、コンセプトを明確にしました。

  • キャラクター・ゲーム・ターゲット層をイメージし、それをキーワード/文書化。
  • 抽出された要素をもとに、アクションのコンセプトを立案。
  • 「ハイスピードで華麗に舞う、誰でも楽しめる気持ちいいアクション」というコンセプトに決定。





3. コンセプトの具体化例の紹介

次に、明確になったコンセプトを具体的な仕様として、ゲームに落とし込んでいく過程とその実例/工夫した点などを紹介させてもらいました。

  • 「誰でも楽しめる」を実現するために行った、ボタン操作のシンプル化、ガチャプレイでもかっこよく見える工夫、など。




4. 核となるアクションの立案

さらに、本作の「核となるアクション」について考えていきます。「ハイスピードで華麗に舞う、誰でも楽しめる気持ちいいアクション」このコンセプトを体現するために生まれたのが、「回避」でした。この立案過程に関しても説明させてもらいました。





5. 素材発注フローと調整手法の紹介

セッションの後半では、それらのアクションを実際にどのように組み上げていったのか、素材発注フローと調整手法の紹介です。

  • 実装のスピードを優先した、口頭ベースの発注を採用。(発注書類は最低限に)
  • 自社ツールにある各種設定項目を実際に見てもらい、調整への執念もアピール。





6. コストを考えた制作手法

低コストで効果的なアクションバリエーションの増やし方、コツなどもを動画を交えて説明させてもらいました。こちらのプロモーション映像では、ポッドプログラム(特殊攻撃)を紹介していますが、よく見ると、攻撃時のプレイヤーのモーションが少なかったり、そもそも無かったりする攻撃が多いことに気づいていただけると思います。
26:18頃~



7. オートモード実装の経緯

最後に、攻撃や回避を自動で行うことができる、オートモードの実装について、お話をしました。アクションにこだわり抜いて制作した本作ですが、アクションゲームが苦手な人にも楽しんでもらえるよう、押し付け過ぎず、プレイヤーに選択の自由を用意しています。



僕の担当は【1】のみで、残りは田浦というアンバランスな配分になっています……。セッションの本体は田浦ですね。田浦のアクションパートの話は、開発者の僕が聞いても為になるものが多く、かなり有意義な内容になっていたと思います。

田浦からひと言

普段はなんとなく、どちらかと言えば感覚で仕事している部分が多いので、今回のように、感覚的なところを人に説明するためにテキストに起こすというプロセスは、自分の考え方などを自分で知るいい機会になりました。

準備に時間や労力は取られますが、聴いてくれる人のためというよりも、自分たちのためになることの方が多く、貴重な経験をさせていただきました。ご来場くださった皆さま、ありがとうございました。

僕自身も、自分の考えを整理できるし、プラチナゲームズのことを広く知ってもらうこともできて、とても良い機会になったと思います。

これでレポートはおしまいです。
それでは!





negishi根岸功 Isao Negishi
2011年にプラチナゲームズに入社。
ゲームデザイナーとして、『The Wonderful 101』『The Legend of Korra』の開発に従事。『BAYONETTA on Wii U』では、豪華移植版制作のディレクターを務めた。
最新作『NieR:Automata』では、レベルデザインやメインシナリオの実装の他、サブクエストの構成を担当するなど、ゲームデザイナーとして活躍の場を広げている。