皆様はじめまして。
ベヨネッタの武器全般のデザイン・CGモデル製作を担当している
小手川”ジョニー”宗行と申します。
『デビルメイクライ』や『バイオハザード』シリーズの武器製作などをやっておりました。
神谷Dとはそのデビルで組んで以来の、久々の仕事となります。
さて今回は広告などでベヨネッタが持っている愛用ハンドガン、「スカボロウフェア」がどうやって出来たか、お話ししましょう。
武器に限らず、デザインは全体の進行に合わせてやっていきます。
神谷Dのキャラクターの大体のイメージが
「女性主人公」
「現代の魔女」
「四丁拳銃」
というのはシマコが以前書いた通り、
さらにシマコと神谷Dとの激しいやり取り(二人の席に挟まれています…)を経て、
「真っ黒な服と髪、それに白い肌、金の装飾と赤いリボンがアクセント」
という色バランスが決まりました。
それと同時に手に持っている銃も「赤」となりました。
色のバランスもありますが、このゲームは従来無いほど激しいアクションゲームでありそのため手足の位置を分かりやすくするためでした。
ちなみに手袋の掌とソールも赤となっています。
さらにベヨネッタは銃器で打撃を行うのがメインの戦い方となるので、それが分かり易くないといけません。
このことを踏まえて、実在の銃をベースにアイディアを練っていきます。
これは、たとえ完全な創作でも見たことがある銃のパーツがあれば
説得力が出てくるからです。
『ブレードランナー』のブラスターとかハンソロの銃などの映画のプロップがそうですね。
マニアの方はどれが何の銃ベースかわかるでしょうか。
珍妙なベース銃が混じっているのはこれまでに無いものを作ろうとしたための試行錯誤の跡です。個人的な趣味ともいいます。
赤以外も含まれているのはデザイン決定前もやっていたからです。
大体金や銀などの明るめの色になって目立つようになっていますね。
色々練っていくうちにデリンジャーをベースにした物が神谷Dの目に留まりました。
おそらく連射できる銃では最も構造が単純で耐久力の高いデリンジャーを選ぶとは流石、…と思ってましたがどうやら「女が持っててカッチョイイから」な模様。アフン。
①打撃用の銃ということと、先ほども書いたとおりアクションゲーム用ということで巨大化、細かいパーツは金でエレガントに。
グリップの下のほうはハイヒールをイメージした形状になっています。
②さらに打撃用っぽく、装飾も兼ねたスパイクを施し、サイドに宝石をつけて銃全体のアクセントとします。
③あまりトゲトゲしないようにというオーダーが出たのでやや大人しめに再デザイン、各部ギミックも考えます。
決定稿にあるスカボロウフェアのロゴもここで出来ています。
④打撃を行うというイメージからナックルガードをそれっぽく、さらに全長を縮めて力強く。
⑤少しやりすぎの感があったため色々戻してみる。④で消えていたハイヒールのシルエットも復活
⑥さらに最初に立ち返りデリンジャーらしいシルエットに。
足にも装着するため銃身の上にレールを追加。これをハイヒール踵の溝にはめるわけです。
ナックルガードは「古いハサミ」を思わせる物にというのは神谷Dのアイディア。
これを元に決定稿を作成しました。
追加で2挺あわせると魔女のマークが現れるギミックなどを盛り込んでいますね。
これを元にCGモデルを作成していきます。
この後もCGを作っていくうちにアイディアが出たり仕様の変更でリテイクが出たりします。
スカボロウフェアの名は英国のバラッドが元になっているのですが、その中に出てくる4種のハーブ(パセリ・セージ・ローズマリー・タイム)の名が銃の個別の名称になっています。
魔女とハーブには深い関係があるのです。(そしてシナリオにも少し絡んできます)
さらにそれぞれの花の色の宝石が銃のサイドについており、弾丸の召喚/廃莢をするのでベヨネッタは無制限に弾をばら撒けるというわけです。(ほとんど見えませんが宝石の中に弾丸を入れています)
またグリップ下部から下がっているチャーム(シマコのデザインです)もハーブに対応しています。
中折れ式の銃身を開き、別の弾丸を込めて単発銃としても使えます。
どこで使われるかはゲームをやってのお楽しみ…
こんな感じの流れでデザインと製作を進めていきます。
メインの武器が決まるまではかなり長い時間を費やしましたが、方向性がはっきりしたので他の武器のデザインはスムーズにいきました。
やはり最初の1つは重要ということです。
というわけでトレーラーにも出ていますが、もちろん武器はこれだけではありません。
スタンダードな物からとんでもない物まで多彩な武器を用意していますのでお楽しみに。
次回はその他の武器や、トレーラーにも出ている謎の女ジャンヌの銃などを紹介しようと思います。