みなさま、こんにちは!
サウンドデザイナーの進藤です。
『NieR:Automata』では、リードサウンドデザイナーとして、SE制作、実装、サウンドディレクションなど幅広く担当しました。
まず、少し前の事になりますが、8/30~9/1の3日間CEDECに参加してきました。
いつもなら、一般参加で他の方のセッションを受講し、お勉強をさせていただくのですが、今回は大変名誉なことに、オーディオプログラマーの木幡とセッションを担当する機会をいただき、登壇者として参加させていただきました!!
- 実戦的なゲームのための音響空間表現 – NieR:Automata における事例 –
http://cedec.cesa.or.jp/2017/session/SND/s58bf7fc78a808/
登壇のきっかけは、3年前のCEDEC 2014。
大手ゲーム会社さんのサウンドチームによる、数々の素晴らしいセッションに感銘を受けると共に、ある種の悔しさを感じ、一緒にいた木幡と「『NieR:Automata』では、出来る限りの面白い技術を盛り込んで、完成したら絶対にCEDECで発表しよう!」そう誓い合いました。
そんな目標もあった中での登壇だったので、3年越しの想いもあり、感無量でした。
セッションの内容は少し専門的な内容になりますが、詳しい記事がたくさん上がっているので、興味のある方は、そちらも併せて見ていただければと思います。
- 『NieR:Automata』の世界を彩る効果音はどのように実装されたのか?デザインコンセプトとその仕組みについて
https://www.inside-games.jp/article/2017/09/04/109538.html - 「NieR:Automata」における音響空間表現――廃墟を歩く2Bのヒール音が鳴るまで
http://jp.ign.com/cedec-2017/16937/news/nierautomata2b
さて、CEDECでは技術的な内容を紹介させていただいたので、今回はイベントシーンの効果音制作現場をご紹介させていただききます!イベントシーンの効果音制作は、スクウェア・エニックスさん、ビー・ブルーさんに協力していただきました。
場所は東映デジタルセンター。
こちらで、イベントシーンのフォーリーを収録しました。
フォーリーというのは、足音や、アクセサリーなどによる人物動作音や、ものが落下した際の衝撃音、破壊音などを、映像を流しながら登場人物の動きに合わせて、効果音を収録する工程です。
主に2Bや9S達の足音や、衣擦れ音、機械生命体の動作音などを、収録しました。
こちらはコントロールブースです。スクウェア・エニックスの細江さんがイベントシーンのディレクションをされており、ここから、収録した音に対してOKや修正など具体的な指示を出されます。奥に見えるのは録音ブースで、フォーリーのための小道具や、様々な素材の床などが所狭しと並んでいます。
こちらが録音ブースです。音素材になる小道具が所狭しと並んでいます。この中からシーンに合う小道具をチョイスして、叩いたり、こすったり、振り回したりしながら、理想の音を作っていきます。中にはサウンドデザイナーの私でさえ、何に使うか分からない物もたくさんあります・・・。
作戦会議中・・。
これだけ色々な素材があっても、ぴったりな小道具がなかなか見つからない場合もあります。みんなで何が合いそうか検討中のシーン。手前に見えるモニターに映像を流し、その映像を見ながら音を出していきます。
靴がたくさん並んでいますが、この中に、2Bや9Sの靴音に使用したものも。イベントシーン用に収録したものを、インゲームにも転用しています。(足音を合わせておかないと、インゲームとイベントシーンの音の繋がりが不自然なものになってしまいます。)
機械生命体達の体の動き、ギコギコ、キーキーした音などに使用したガラクタ達。これらのガラクタは、敷地内のガラクタ置き場から拝借してきたものです。機械生命体達は、まさにガラクタから効果音を作っています。
機械生命体の効果音の収録風景です。
演者はビー・ブルーの染谷さん!フォーリー収録に関してかなり知識が豊富で、さらに、とても力持ちな方です!鉄のタライをベコベコ鳴らしたり・・・。
水汲みポンプをギコギコ・・・。錆びの嫌な感じの擦れ感、だけどどこかで聞いたことがあるような少し懐かしい音が、機械生命体にぴったりハマります。
でっかい鉄板同士を擦りつけギギギギ・・・。これは超大型機械生命体エンゲルスの動作音を収録しているシーン。市販ライブラリにはない良い感じの擦れ感がでました。(あの鉄板、超超重いんです・・・)
学校机を床に擦りつけてギギギギ・・・。小学生の時によく聞いた懐かしい擦れ音・・・。こうやってこだわって収録した音たちによって、「機械なのにどこか温かみがある」機械生命体が表現できたのではないかと思います。
さらに大きなサイズの机をギコギコギコ・・・。擦れ音と共に、引き出しがガタガタ揺れる音も加わって、複雑な金属擦れ音になります。
このような、一見がらくたに見えそうなものを駆使して、『NieR:Automata』の効果音が作られていきました。
本作のメカ系に関するサウンドデザインは、アンドロイド側の「人に近いはずなのに、温かみの少ない未来的な動作音」と、機械生命体側の「人とかけ離れているが、どこか温かく懐かしさもある音」の表現を目指しましたが、ガラクタ等を用いたフォーリー収録は、機械生命体の温かさをうまく表現できたのではないかと思っています。
もちろん、全ての音がフォーリー収録で作られているわけではないので、ここから更にシンセサイザーで作られた音を重ねたり、環境音を混ぜたり、ボイスを鳴らすなどして、カットシーンの効果音は出来あがっていきます。
いかがでしたでしょうか。
あまり効果音の制作現場というとピンとこないかもしれませんが、実は、このようなアクティブな制作現場だったりします!本当に体を鍛えていないと、すぐにぜえぜえなりますよ。(泣)
また、環境音については、そのほとんどをフィールドレコーディング(外で実際に録音)しています。プラチナゲームズの開発スタジオは大阪ですので、時には音を求めて府外にまで足を運んでレコーディングしていました。レジスタンスキャンプ前の、あの川が流れる憩いの空間は、実は関西地方の音で出来ております(笑)
工場廃墟エリアの音なんかは、大阪の造船所の近くで工場音を拾わせてもらったりしました。収録中は、工場のおじさん達が、テレビクルーと間違えたのか、こちらに向かってピースしておられました。(カメラの人おらんやん!と心の中でつっこみ笑)
縁の下の力持ち的な役割の効果音ですが、このように音響技術的にも、音質的にもかなりこだわっておりますので、BGMの合間に是非効果音もお楽しみくださいませ~!
スクウェア・エニックスさん、ビー・ブルーさんと記念の一枚
進藤美咲 Misaki Shindo
バンドでのインディーズ活動や、楽器販売店での勤務を経て、2008年にサウンドデザイナーとしてプラチナゲームズに入社。SE制作、Wwise実装、またリードサウンドデザイナーとしても多くのタイトルを担当し、サウンドディレクションも行う。
担当プロジェクト:『ベヨネッタ』『ベヨネッタ2』『The Wonderful 101』等
最新作『NieR:Automata』では、リードサウンドデザイナーとして、SE制作、Wwise実装、SE全体のシステム構築を担当。