プラチナゲームズのテクニカルアーティスト(以下、TA)・関です。

コンピュータグラフィックスおよびインタラクティブ技術に関する国際的なカンファレンス「SIGGRAPH Asia」が3年ぶりに日本で開催され、プラチナゲームズが講演をおこないました。当日の様子を、体験談を交えながら紹介させていただきます。

関連記事|【社員対談】「SIGGRAPH Asia 2024」参加に向けて、世界へ向けた入社2年目社員の思い

プラチナゲームズ TAの関さん(左)と下島さん(右)

講演会場の様子

「SIGGRAPH」は、CGや映像、アートなどの、グラフィックスについての国際会議&展示会です。北米とアジアの2バージョンあり、北米版「SIGGRAPH」は夏に、アジア版「SIGGRAPH Asia」は冬に例年開催されています。さまざまな国や地域で持ち回り開催しており、日本開催は3年ぶりとなります。

本イベントでは、グラフィックス技術やエンタテインメント等を「もっと良くしていこう!もっと盛り上げていこう!」という議論がさまざまなレイヤーでなされます。

学術会議なので、研究機関などが研究した最先端な技術についての議論がおこなわれます。ただ、この段階で議論されるのは生の技術…言ってみれば料理の素材です。そのままでは、せっかく素晴らしい技術革新が起こったとしても、一般の方は恩恵を得られない状態です。そこで企業がその最新技術を拾って、一般の方々でも扱えるような製品に組み込みをおこないます。そして、その組み込んだ新技術の紹介や、ユースケースの紹介などの公演を、この「SIGGRAPH」でおこなうのです。

さらに、本イベントはエンタテインメント系の企業が、自社のコンテンツの紹介やノウハウを共有する場でもあります。その講演を聴講した研究者が、「次の世代にあったら嬉しい技術」の着想を得て、次の研究へ繋がるかもしれません。

このように、様々なレイヤーで議論がなされ循環し、結果として少しでも良い・面白い世界にしてやろうというコミュニティが、「SIGGRAPH」です。

今回私たちが行った講演では、主に2つのテーマを取り扱いました。1つ目は「プラチナゲームズのこだわり」、2つ目は私が所属するTAチームの活動についてです。

1つ目の「プラチナゲームズのこだわり」については、私がプラチナゲームズの先輩社員にインタビューをおこない、彼らのゲーム開発における 「こだわり」 を紹介するコーナーです。プラチナゲームズは、ありがたいことに「アクションが素晴らしいゲーム会社」と評価をいただいています。そんな弊社のアニメータやプログラマーに聞いた、アクション制作のこだわりを発表しました。また、プラチナゲームズのアクションの魅力は、複合的な要素で構成されています。VFX、背景、ライティング、シネマ、サウンド、アート…それら全て合わさって、結果としてアクションの爽快さがユーザに届く、その工程や想いも今回の発表のポイントとなりました。

2つ目のTAチームの活動内容についてです。昨今はTAという職種の知名度が上がってきていますが、まだまだ業界や企業によって業務内容やニーズは異なります。そのため、近年そういった注目を受けるTAの取り組みについて、この場を借りて紹介しました。

また講演の後半部分では、自社で開発している「リップシンク生成システム」というツールについて発表しました。このシステム開発は、世界に通用するレベルの技術だと考えます。近年の大規模タイトルでよく目にする、ボイスに合った表情や口パクのアニメーションの実装ですが、何万というアニメーション…加えて多言語対応…その開発業務には一体どれだけの手間がかかるのだろうかと気が遠くなります。そういった開発場面で、プラチナゲームズが開発した「リップシンク生成システム」は手作業の手間を大きく削減することができます。これからプラチナゲームズが世に出すゲームには、全てのセリフに最適なリップシンクが付いていて、より一層没入感のあるゲームになる!…かもしれません。

自社開発ツール「リップシンク生成システム」を紹介する下島さん

今回の「SIGGRAPH Asia」での講演は、プラチナゲームズを知る人も知らない人も、弊社の技術と取り組みについて知っていただく良い機会になったと思います。その上で、ユーザに素晴らしいゲームを届けるために、アーティストやエンジニアがどんなこだわりを持って作っているのか。そして、アーティストを支えるTAという職種の役割について、少しでも理解してもらえたらうれしいです。さらにあわよくば、帰りに家電量販店でゲームを購入していただき、遊んでもらえれば、もう最高ですね。


関 隼利
Hayato Seki

2023年 プラチナゲームズ株式会社に入社。テクニカルアーティストとして、制作現場に向けた効率化ツールの開発や、現場のコミュニケーションの円滑化に従事。アニメーターが使用するモジュラーリグシステムの開発や内製ツールの開発を担当。