はじめまして、『NINJA GAIDEN 4』アートディレクターの西井です。

私の記事では、数回に分けて『NINJA GAIDEN 4』におけるビジュアル・アートの仕事をご紹介できればと思います。
初回は新主人公であるヤクモと、本作用にデザインされたシリーズ主人公リュウのキャラクターデザインについてです。

掲載している画像は開発当時の社内向け資料を皆さんにお見せできる形に編集したものなので、製品版の最終的な仕上がりとは若干の差異があります。ご了承ください。

それではどうぞ!

新主人公、ヤクモです。
隼一門と対をなす鴉一門の次期頭領、若き天才忍者で
ハイスピードでスマート・テクニカル、TRPGで言うところのDEXが高いタイプ。

最初からリュウより若い「新たな超忍」というコンセプトが決まっており、アクションのイメージもより速くと聞いていたため、その差をより伸ばす方向でデザインしています。

制作初期はリュウが表裏の表、光と影の光(忍者なんだから全員影の存在だろというツッコミは横に置いて)、キャライメージ的にもだいぶ正統派なため、対の存在となれるようもっと敵っぽいイロモノ案もありました。
が、ちょっと派手にし過ぎたのと、遊び的な意味でもNINJA GAIDENらしさからは少し離れてしまいそうだったので流石にそれはボツに……化け物主人公、いつか何かでリベンジしたいです。

最終的には色々な箇所を「カラス」というモチーフで固めていますが、これは比較的後の方に決まった要素でした。
メインとなる要素がひとつ定まった事でデザインとしてはまとめやすくなり、一貫性も出たかなと思います。尾羽のように見える腰の帯なんかは分かりやすい箇所ですね。
またカラスの持つダークでダーティ、都会的なイメージが付くことで、ハヤブサの荒々しくも鋭く洗練された印象とはまた違ったキャラクターであると示せたのではないでしょうか。

ヤクモのもう一つの特徴である鵺の型については、怪鳥としての「鵺」をモチーフに正体不明、姿がハッキリしない…という概念から変幻自在の武具というデザインに繋げています。
作る側のメタ的な視点で言えば、どんな武器種であっても脅威に感じられればOK!くらい解釈の幅があるモチーフなので扱いやすくて助かりました……。

次にシリーズの主人公、リュウ・ハヤブサ。
唯一無二な孤高の超忍は今回も隼一門の中でも彼専用の、より洗練された装備になっているだろう、という想定でデザインしています。

リュウのデザインについては大きな路線変更はそもそもナシ。シリーズとしての「正統進化」を掲げられていたため、パッと見の印象やディティール感は初代『NINJA GAIDEN』を彷彿させ、見た瞬間にリュウだと認識できるもの、としました。
要件としてはざっくばらんに言えばいつものリュウさん、との事でしたが、やはり10数年ぶりのお召し替えですし、単純に見た目にバリエーションが増えるのは嬉しいものです。

また本人に大きな方針変更はなくとも、本作には外的要因としてスピードに特化したヤクモがいるため、相対的に力強さが増して見えそうだなとも考えました。三角筋のパワーが隠しきれない。
もちろんヤクモより筋力が高く、肉体が完成しているのはそうあるべきで正しいのですが、それでも今回のリュウはパワー特化型キャラだという風に見えてしまうのは避けたいところです。シンプルに強く、全ステータスが高いオールラウンダーであってほしい…!

などなど、諸々の小さな課題はありましたが、結果としてはディティールの入れ方や装甲のボリュームなど、全身のバランスを注意して調整することで解決を図りました。
スマートな体型のヤクモと差が感じられて、且つ身一つで全てを乗り越えていくイメージが崩れない範囲ギリギリを狙っています。

またヤクモがいることで、今作はプレイヤー=リュウではない視点でリュウを見る事ができます。
であれば、目前に立たれた時の圧倒的な脅威というか、今まで己の側で敵を殲滅していた最強の超忍に対峙しなければならない絶望を感じてほしい。このために正面側もどこか印象に残るようなデザインを選びました。
その時が来たら、「この人には勝てない」と目に焼き付けてもらえると嬉しいです。

以前にメディアインタビューでも少しお話させていただいたのですが、メインのキャラクターを複数人立たせるのであれば、ゲーム的にもビジュアル的な意味でも、それぞれに特徴・差があるべきだと考えています。
それは各個人単体の個性だけでなく、キャラを並べた時にどう感じるか?という全体のバランスの話も含まれます。

というわけで実際ヤクモとリュウの体型にどの程度差があるのか、並べてみました。ヤクモが小柄、リュウはガタイがよく見えるのがわかりやすいですね。
この体格の差は単純に各キャラ造形の意もありますし、“偉大な超忍(リュウ)/その背を追う者(ヤクモ)”の関係性を視覚化する意図を込めたものでもあります。

ヤクモの小柄さはゲーム中でも敵がより大きく感じられるので、本作のキーワードのひとつである“逆境”を強調するのに良いだろう、それを残りのキーワードである“変化”と“残虐”を以って覆していくのが彼のプレイングの特徴かな…という解釈です。
対してリュウはより熟達した超忍であり、見るからに敵と対等かそれ以上の立場であってほしいので、同じ“逆境”にあってもヤクモよりは優位に見えるように。ただし今まで通りのリュウではなく更に完成した最強のリュウへの“変化”、それによって得られる最高の“残虐”という結果、みたいな解釈をこっそりテーマとしています。
(あくまでビジュアルデザイン上且つニュアンス程度の話で、ゲームの仕様やシナリオ的な話は別です。そういったお話はまた別の機会にする事があるかも…ないかも……)

今回はこの辺で。
発売まではまだもう少しお待たせしてしまいますが、引き続き『NINJA GAIDEN 4』をよろしくお願いいたします。


西井 智子 (Tomoko Nishii)
2011年にプラチナゲームズ入社。エンバイロメントアーティストとして『The Wonderful 101』の制作に携わった後、コンセプトアーティストとして複数のタイトルに参加。『NieR:Automata』では絵本パートの一部原画を担当し、『ベヨネッタ オリジンズ:セレッサと迷子の悪魔』ではアートディレクターとしてキャラクターデザインおよびビジュアル全体の監修を務める。最新作『NINJA GAIDEN 4』ではアートディレクターとして一部キャラクターデザインとビジュアル監修を担当する。