『NINJA GAIDEN 4』アートディレクターの西井です。
今回はコンセプトアートについてお話できればと思います。
コンセプトアートと聞くとどういったものを想像するでしょうか?
一口にアートと言ってもいくつか種類があり、目的や用途がそれぞれ少し違います。
前回はヤクモとリュウのアートを少しだけご紹介しましたが、他にも
- 雰囲気の共通認識となるためのイメージアート
- キャラや背景アセット制作のためのデザイン画
- 作成されたアセットや画面の見た目を整えるためのオーバーペイント
などがあります。今回はキャラクター以外のコンセプトアートをいくつか持ってきました。
『NINJA GAIDEN 4』ではコンセプトアートをこのように扱っていますという例をいくつかご紹介します。
前回同様に、開発当時の社内向け資料を皆さんにお見せできる形に編集したものなので、最終的な仕上がりとは若干の差異がありますが、ご了承ください。こういう感じで制作してたんだな~と見ていただければ!
それではどうぞ!
イメージアートと呼ばれるアートは、チーム内でおおまかな共通認識を作るためのアートです。
ディレクターやプランナーの想像したイメージをゼロから形にする作業で、一般に広く想像されるコンセプトアートの仕事といえばコレかもしれませんね。
ここで作成した絵は最終的に完全には残らない事も多いですが、少なくとも製作途中はチームの全員が目指すべき指標となる絵です。責任重大。
この絵も、そっくりそのまま…ではありませんが、構図には見覚えがある方もいるのではないでしょうか?なかなか印象的なシーンとして残っていますので、是非製品版と見比べてみてください。
こちらは背景のオーバーペイントです。
イメージアートよりも製品に近いアートで、背景班が“ホワイトボックス”と呼ばれるステージの原型を作成後、撮影したスクリーンショット(画像二枚目←)の上からガシガシ描いています。
ホワイトボックスの時点でギミックや敵の配置は済んでいるので、その意図や次への導線を汲み取り、このエリアで何をすべきか、次はどこへ向かうべきかの情報を視覚的に強化していくのがアートの仕事です。
一枚目の神社の参道は奥に向かいたいのに龍神党が待ち構えていますね、ですが地形を上手く使えば相手の裏をかくことが出来そうだとか、三枚目の下水道のようなエリアはバックヤード的な裏道でありつつも派手なネオンの名残があるとか、わざわざ説明を入れずとも出来るだけ伝わるように描いています。
雰囲気をより良くしたい時に要求されるので、ホワイトボックスの要件を守りつつ絵的にも印象に残るよう、アセット・エフェクトの飾りつけやライティングもアイデアを出していく。ただカッコよければ良いというものでもないので、情報の取捨選択が結構大変です……。
アセットアートはいわゆるデザイン画、詳細画と呼ばれたりもしますね。
ちょっと多岐にわたり過ぎるので細かくは省きますが、「東京摩天楼の技術感で未来のリニア加速器を作ったら?」「東京の看板だからアレやコレの広告もあるだろう」など、想像力と説得力を捻りだしています。
突飛なデザインでも、ある程度細かいところまで描かれていると、そうはならんやろと思いつつもまぁそんなもんか…と納得できる事も多いので、できるだけバックボーンを想像しながらデザインしています。
PVなどで一番目を引いたのはこの演出ではないでしょうか?画面が一瞬で真っ赤になるのでそこそこインパクトがある……はず!
背景だけでなく、こういった演出のデザインもアートで行っています。
これはアニメーターがアクションの流れとカメラ、そして決めの画を作ったもの(画像二枚目←)にオーバーペイントして飾りつけ(画像二枚目→)、素材をVFX班に渡して実装してもらったものです。
画面を赤く(リュウver.は渋くモノクロに)するところまでは一括の表現ですが、レイアウトは強敵の数だけ作ったし、雑魚相手にも武器毎にイイカンジの画になるように調整しました。
ちなみに雑魚相手のものはOFFにすることも出来ますよ。できれば見てほしいですが、プレイヤーの体験を削ぐものではないので、そこはお好みで。アートを描いたけど使われない…なんてのは別段珍しい事でもないですし、全体として“良い体験”になってくれれば良いのです。
色々なコンセプトアート、いかがだったでしょうか?
もちろん描いただけではゲームにならないので、これを形にしてくれる他セクションの協力を得るために、まずは“伝わる”よう日々尽力しています。その一端が皆さんにも伝わっていれば嬉しいです。
それでは今回はこの辺で。
来週は東京ゲームショウですね、日本では初めてのユーザーの皆さんに直接触っていただける機会ですので、ご都合が合うなら是非足を運んでいただければと思います。暑くないといいなぁ。
引き続き『NINJA GAIDEN 4』をよろしくお願いいたします。
※このイラストはブログのために描いたお絵かきです。本作におけるコンセプトアートではないのでご注意を。
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西井 智子 (Tomoko Nishii) 2011年にプラチナゲームズ入社。エンバイロメントアーティストとして『The Wonderful 101』の制作に携わった後、コンセプトアーティストとして複数のタイトルに参加。『NieR:Automata』では絵本パートの一部原画を担当し、『ベヨネッタ オリジンズ:セレッサと迷子の悪魔』ではアートディレクターとしてキャラクターデザインおよびビジュアル全体の監修を務める。最新作『NINJA GAIDEN 4』ではアートディレクターとして一部キャラクターデザインとビジュアル監修を担当する。 |