こんにちは。プログラマーの六本です。
MADWORLDでは主に背景殺しやブラッドバスチャレンジのプログラミングを担当しました。
みなさんもうプレイしてくださいましたか?

プレイされた方はご存知のとおり、MADWORLDには数多くの殺し道具が登場します。
標識、トゲ壁といった定番アイテムから、ゴミ箱とか便器とかあれやこれや・・・。
(おっとこれ以上はネタばれになっちゃいますね。失礼)
いったいあのおかしな道具達はどうやって作られているのでしょうか?
今回はそれをみなさんにご紹介したいと思います。

その日、われわれ背景殺しチームは新しいブラッドバスチャレンジのアイデアに困っていました。
というのも、予定していたブラッドバスチャレンジが西河ディレクターにNGをくらったのです。
それは敵をスリングショットで打ち出して的に当てるゲームでした。
Wiiのリモコンの特性をうまく利用していて、プログラムもほぼ完成していました。
しかし残念ながら「普通」「リアクションがいまいち」という理由で不採用になりました。

「西河ディレクター、新しいブラッドバスチャレンジ、どうしましょう?」
「そうやなぁ」
「実は僕にアイデアが・・・」
「サイダーで人を飛ばしましょう」
「え?」
「サイダーを敵にぶっ刺して、飛ばすんスよ」
「はぁ???」
「で、ぶっ飛んでった敵が、お姉ちゃんの看板にあたるんすよ」
「な、なるほど」
「じゃあ、お姉ちゃんが「あはーん」って」
「あはーん・・・」
「アッハーンですよ」(興奮ぎみに)
「アッハーン・・・」
「ね、めっちゃ笑えるでしょ?」(うれしそうに)
「はぁ(この人大丈夫か?)」
「ねぇ六本さん、そんなゲーム見たことありますか?」(得意げに)
「僕の知る限りではありません(あるわけないだろっ!)」

我らが敬愛するボス、西河ディレクターは普段はとても知性的な方なんですが、
時々、おかしなことを思いついては我々を困らせます。
サイダーで?人が飛ぶ?それがどうやったら「ゲーム」になるの?
思いつくのは勝手ですが、それをカタチにするスタッフはたまったもんじゃありません。

「で、それは具体的にはどういうゲームなんですか?」
「そこはえーようにしてください」(興味なさそうに)

ここは解説が必要です。
「えーようにする」
西河Dに限らず、ここ、プラチナゲームズ開発室における指示は大概、
「えーようにして」で終わります。
それ以上の細かいルールや仕様などの具体的な指示は一切でません。
書面化された仕様書なんて見たこともありません(!)
この「えーようにして」を
「あなたのいいようにしてください」という意味にとると痛い目にあいます。
言葉にならないテイスト、ノリを汲み取りなさいという意味で、
その独特なノリを理解できないと容赦なくNGをくらい、
「あいつセンスない」といわれ、人格まで全否定されかねません。
(*多少誇張はあります)
なんておそろしい開発室なんでしょう!

その時も西河ディレクターの指示はそれで終わりでした。
やがて人のいなくなった開発室の隅で、僕と担当プランナーの二人は頭をかかえます。

「サイダーの奴さぁ」
「うん」
「どうする?」
「ねぇ・・・」
「ねぇ・・・」

さて結果はどうなったでしょうか?
それはみなさんがゲームの中で確認してください!
(ここまでひっぱっておいてゴメンナサイ)
気に入っていただけるとうれしいのですが。

そうそう、もしかしてこのブログの読者で「自分もプラチナゲームズで働きたい!」
と思われる方がいらっしゃるかもしれません。
もちろん大歓迎です!
が、僕からは「えーようにして」には気をつけろ!と忠告しておきますね。

(*)後日談ですが、当初あがってきた「あはーん」ボイスはまったくもって西河ディレクターの
気に入るものではありませんでした。その時の彼の落胆ぶりといったら・・・。
ま、音を調整したりしてなんとかOKはもらいましたが。

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画像はボツになったブラッドバスチャレンジのイメージ画です。
巨大なスリングをWiiリモコンで操作する大掛かりなものでした。