皆さん、お久しぶりです。前作『ベヨネッタ』のディレクター、神谷です。今作『ベヨネッタ2』では、スーパーバイザーとして参加しております。

ついに、発売されましたね! 本作は、ここまで来るのに紆余曲折あり、一時は世に送り出すことを諦めかけたことさえあったので、やっと皆さんにお届けできることを本当に嬉しく思います。また個人的に、このタイトルの製作に手を差し伸べてくれた任天堂に、心から感謝します。

さて、少し前の記事で、僕が本作のシナリオを担当していることに触れていましたが、その事実に「知らなかった!」という声が意外に多くあり、考えてみればちゃんと話したことがなかったなぁと気付いたので、今回はシナリオ制作に纏わる話をきちんとさせて頂きたいと思います。

その前にまず、「スーパーバイザーって何する人?」と思われる方もいるかと思うので、ちょっと説明しておきましょう。大層な肩書ですが、簡単に言えば一歩引いた立場からゲームの監修を行う役割です。何だかエラそうな感じに聞こえますが、我々プラチナゲームズでは、基本的にゲーム制作における責任者はディレクターであり、内容に関する全ての決定権はディレクターにあります。僕自身も、ゲームはディレクターのカラーで染められるべき、という信念を持っています。ですから僕は、ディレクターである橋本君と定期的にコミュニケーションを取りつつ、必要に応じて助言をする、というスタンスで本作に関わりました。…例外的に、ジャンヌに関しては最大限口出しをさせてもらいましたが(笑)

まぁ橋本君は、前作でプロデューサー(チームの運営、タイトルの戦略などを担当する役割)を務めていただけでなく、立ち上げ当初にはデザイナーとして全ての天使をデザインし(今作ベヨ2でも、ディレクター職と天使デザインを兼任!)、ベヨネッタの世界観を共に作って来た仲間なので、既にお互いイメージも共有出来ていましたから、僕があれこれ首を突っ込む必要はほとんどありませんでした。
それに、ベヨネッタやその敵である天使/悪魔たちのプログラムを担当したドンさん、登場人物たちをデザインした島崎モーションデザインの山口君作曲の上田君や近藤嶺さん、音響効果のダイスケやサウンデラックス、イベント制作班の津田君、そしてイベントシーンを演出して下さった下村監督と、前作でベヨネッタの世界観構築に深く関わった主要なスタッフが本作でも集結していますから、何も心配はありませんでした。

…というわけで、僕はベヨ2の実作業に直接関わっていたわけではないのですが、シナリオに関しては、橋本君と話し合って、僕が受け持つことに決めました。セリフ回しなどは、ベヨネッタのキャラクター性に深く関わる部分なので、前作に引き続いて僕が書いた方がいいだろうという判断です。
とはいえ、僕も『The Wonderful 101』の制作を抱えていましたから、どっぷりとベヨ2のシナリオだけに取り組む余裕がありませんでした。そこで今回は、シナリオ制作の過程で、カプコン時代の後輩でもあるシナリオライター、森橋ビンゴ君に助っ人をお願いしました。

ビンゴ君を助っ人に選んだ理由は、彼が経験上このベヨネッタのようなスタイルのゲームと非常に親和性が高く、ノウハウもあって頼りになると考えたからです。

ゲームのシナリオというのは、単にストーリーを語るためのものではなく、ゲーム進行上どのタイミングでイベントシーンが挿入されるのか、どのタイミングでバトルが発生するのか等、ゲームバランスを構築する鍵となるものです。イベントシーンばかり見せられていちいちゲームが中断されたら興醒めですし、逆に盛り上がる場面がちっともやって来なかったりしてもゲームは楽しめません。適度なバランスでストーリーを語りつつ、ゲームの遊び心地をコントロールすることが、ゲームのシナリオの役割なのです。そうしたシナリオ作りの経験があるビンゴ君は、我々にとって非常に強力な援軍であり、シナリオ完成までに非常に重要な役割を担ってくれました。

本作のシナリオは、まず僕と橋本君で話し合うところからスタートしました。雑談レベルで、こんな展開にしようか、こんな登場人物はどうかとアイデアを出し合い、ステージ構成とストーリーの骨格を作って行きました。そして全体の粗筋が決まった辺りで、ビンゴ君にも話し合いに参加してもらい、足りないディテールを補ってもらいつつ、「ゲーム用シナリオ」を構成する作業に入ってもらいました。こうして出来あがったのが、各ステージで、どのタイミングでイベントシーンが挿入され、どのように登場人物たちが絡み合ってストーリーが進行するのかが詳細に記された“シナリオ第一稿”です。
そしてその第一稿をベースに、僕がセリフ回しの味付けやシーンの追加を行いつつ、「字コンテ」のレベルまで演出のディテールを書き加えて、「ベヨネッタらしさ」を更に整えていきました。シナリオ第一稿の構成がしっかりしていたので、ストーリーのバランス配分に気を取られることなく、キャラクター性の追求や、世界観の構築に集中することが出来ました。こうした工程を経て、やっと“シナリオ最終稿”が完成したというわけです。

後は、このシナリオを元に、下村監督の更なる肉付けや解釈が加わって、最終的に前作以上に中二マインド全開のアツいストーリーに仕上がった…のは、イベント制作班の津田君の回で解説されていた通りです。ストーリーの内容についてお話しすることはできませんので、その仕上がりは是非製品版で、ゲームプレーを通じてご自身で体験して頂きたいと思います。

以上が、シナリオ完成までの道のりですが、如何だったでしょうか?「ベヨネッタらしさ」は、前作からちゃんと引き継がれています。…いえ、引き継がれているどころか、前作と今作のストーリーは非常に密接に絡み合っているので、本作で初めて“ベヨネッタ”という作品に触れる方は、ベヨネッタの世界をより深く味わうためにも、是非同梱される前作『ベヨネッタ』をクリアしてから、本作『ベヨネッタ2』を遊ぶことをお勧めします。既に前作をお持ちの方も、本作を遊ぶ前に一度おさらいしておくといいかも知れませんね。

…いや、もしかしたら本作をクリアした後で前作をプレーするのも面白いかも…? まぁ後は皆さんにお任せしましょう。

また遊んだ感想なども是非お聞かせ下さい。それではまた!