皆さん、初めまして。『ベヨネッタ オリジンズ: セレッサと迷子の悪魔』のディレクターのティナリ アビビです。長い年月ずっと秘密にしていて、やっと公にタイトルが口に出せるのはものすごく気持ちいいです。先日公開したトレーラーの反応をネットでみて、先週から絶えることなくバカみたいにニコニコしています。

初代『ベヨネッタ』は高校のころにプレイして“日本に行きたい”と私に思わせた作品の一つであり、就活しているときにも『ベヨネッタ2』がちょうど開発中であることが発表されていて、それがプラチナゲームズに入りたいと思った理由でもありますので、『3』の開発が始まったときは、ゲームデザイナーとして関わりたいとワクワクしていました。しかし、神谷さんと稲葉社長にはその他にも構想があったのです……なんとベヨネッタ(つまり、セレッサ)の幼少期の物語を紡ぐスピンオフでした! 手足の銃がなく自由自在に操れる魔獣もいない、自信に満ちた佇まいさえ身につけていないベヨネッタ……その制限から逆に何かの新しい遊びが生まれるかも、と考えた僕はそれを聞いて絶対に作りたい!と思いました。そして企画の草案を書いていくつかのお偉方への発表を行ったあと、そのゲームのディレクターになったのです。

まず、初代に登場する幼児のセレッサと大人のベヨネッタの中間ぐらいの年齢のセレッサを思い描きました。初めて魔獣召喚に挑んだときには一体どんな心境だったのでしょう? 魔獣を操る魔導術は教わっていたとしても、初回から一筋縄ではいくわけがないし、ちびっ子見習いごときに召喚された魔獣も黙って操られるはずがない……その状況からどのようにして一人前の魔女に成長したのでしょう?

これらの質問の答えは、「神谷さんの執筆したシナリオ」という形で得られました。それはセレッサと彼女の初めて召喚した悪魔(チェシャ)の冒険の物語でした。ディレクターとしての私の使命は、ゲームの中でその物語をどのように表現するか、チームに方向性を示して導くことでした。プレイヤーがこの世界を訪れてキャラクターに出会って音楽や声を聴いて、ゲームを遊ぶことで指を伝ってストーリーの展開が心に響くように努力しました。

『ベヨネッタ』シリーズの他の作品も含め、さまざまな面で今回の作品はプラチナゲームズが今まで作ってきたゲームと大きく異なります。ハリウッド映画のような壮大な爆発や∞クライマックス・アクションよりも、今回は絵本にインスパイアされた淡い色やメルヘンチックな雰囲気の世界の中で、もっと繊細で身近な物語をお届けしようとしています。時に静かに……時にダークに……。ゲームを遊ぶなかでセレッサとチェシャへの理解をどんどん深めながら、二人の冒険を最後まで見届けてほしいです。

クラシックの物語は時代を超えますし、幼いころに読んでもらった一生忘れられないストーリーもあります。『ベヨネッタ オリジンズ: セレッサと迷子の悪魔』も同じように心に残る作品になるように全力を尽くしました。ぜひ、表紙を開けて中のページに秘められた魔法を体験してください!

『ベヨネッタ オリジンズ: セレッサと迷子の悪魔』
ディレクター ティナリ アビビ

 


ティナリ アビビ
Abebe Tinari

カナダのバンクーバー出身。2009年に来日し、2013年にローカライズスタッフとしてプラチナゲームズに入社。『ベヨネッタ2』の英訳に携わった後、ゲームデザイナーに転向。『スターフォックス ガード』をはじめとする複数のタイトル開発に参加し、『ベヨネッタ オリジンズ: セレッサと迷子の悪魔』で初のディレクターを務める。