皆さんはじめまして!
ゲームデザイナーの髙田翔平です。
自己紹介をしようかと思いましたが、この記事を読みに来た人はそんなことに興味はないと思いますので早速本題に入ります!

1回目はゲームデザイナーの仕事とは実際にどのようなことをするのかを書きたいと思います。

ゲームデザイナーの仕事と聞くと、ゲームのシナリオや遊びを考えるという、ゲーム好きには夢のような楽しい仕事と思ってしまいがちです。実際に自分も会社に入るまではそんな節がありました。しかし、実際に会社に入ってみると、現実とのギャップに驚くことが多くありました。

そこで、今回は自分が感じた「入社して驚いた(難しい)仕事ランキングTOP3」を発表したいと思います。

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第三位のお仕事は「スクリプト」の作成です。

スクリプトとは一言で説明すると「簡単なプログラミング」みたいなものです。(スクリプトに関してはゲームデザイナーがやる仕事だと噂で聞いたことはあったのですが、こんなに早くにスクリプトをやることになるとは……)

スクリプトと聞くと「プログラミングが出来なきゃいけないの!?」と思うかもしれませんが、全くそんなことはありません!秀才な方々が、知識ゼロで難しいことは苦手な僕のような人でも簡単に扱えるように作ってくれています!

では、実際にスクリプトでどんなことをするか、大まかに言うと「対象(命令の相手)」と「命令(対象にやって欲しいこと)」を書いてゲームの流れを作るというものです。

例えば「Aさんに話し掛け、その話が終わると後ろの茂みから急に敵が出てきた!」という流れをスクリプトで作るとすると、以下のような4つの文で作ることが出来ます。

  1. 「Aさん」に「話し掛けると会話を流す命令」
  2. 「後ろの茂み」に「音を鳴らす命令」
  3. 「後ろを注視するカメラ」に「(カメラ)ONにする命令」
  4. 「敵」に「茂みから出てくる命令」

後は、この文と文の間に1秒停止などの間の調整を入れて完成!このようにスクリプトがあればゲームデザイナーでも簡単にゲームのイベントを作れるのです!!

とはいうものの、プログラミングを勉強しようとして条件文で挫折した僕にはゲロ吐きそうな仕事ですが……何とかやっています。

ちなみにプログラミングが出来なくてもいいと書きましたが、出来るに越したことはありません!プログラミング経験のある人はそれが武器になるので是非自分のアピールポイントの一つにして下さい!

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第二位のお仕事は「簡易イベント」の作成です。

僕の関わっているゲームには大きく分けて「HDイベント」と「SDイベント」があります。

「HDイベント」はゲームの見せ場で流れる、シネマティックアーティストが作るビジュアル重視のドラマティックなイベントです。対して「SDイベント」は実際のゲーム内のキャラ、カメラをゲームデザイナーが動かして作る簡易的なイベントです。新しいザコ敵の登場時などに流れるイベントなどがコチラになります。(例えば『メタルギア ライジング リベンジェンス』の「月光初登場時に流れるイベント」などがコレにあたります)

話だけ聞くと楽しそうと思うかもしれませんが、コレが大変難しい仕事になります。なにせイベントのカメラ演出を自分で付けることになるので大変センスが問われます……

自信満々に作ったイベントを上司に見て貰い、ダサいと没を食らいアドバイスを貰っては作り直し、最終的には見兼ねた上司がアドバイスの為に少し触らせてと言い、圧倒的にカッコイイイベントになって帰ってきて、センスの違いに絶望するお仕事です。

そんなSDイベントに苦戦していた自分に上司が「この会社にはカメラ演出の専門家が居るのだから、自分で出来ないものはその人達に頼めばいいんだよ」とアドバイスをくれて、ようやく「ゲーム作りにおいて人に頼ることの重要性」に気が付きました。特にカメラ演出などは少し触ったからといって急に出来るようになるようなものではありません。そこに時間を掛けるよりも、イベントやモーションなどを専門で作る人達に「このイベントにカッコイイカメラ演出を入れて下さい!」と頭を下げた方が当然短い時間で質の高いものが出来上がります。

ゲーム制作は限られた時間の中でやっていかなければならないので、ゲームを面白くする為には、自分が出来ることをしっかり判断し、人に頼るべき所は頼るということ、つまりゲームデザイナーは頭を下げることが大事です!

「すいません、ここ何とかなりませんかね?」
「そこを何とかお願いできませんか?」
「本当ですか!?有難うございます!本当に助かります!」

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第一位はゲームの仕様を書きそれを各セクションに伝えることです。

コレだけ聞くと「それは言われなくても想像出来るだろ」って思うかもしれませんが、侮っていると一番痛い目にあう部分です。

確かにゲームの仕様を考え、それをゲームに実装する為に各セクションに仕様を伝えるのは、ゲームデザイナーの仕事として真っ先に思い浮かぶ仕事の一つかもしれません。実際に自分は「ゲームデザイナーの仕事はアイデアを出して後はそれを伝えることだ!」と軽く思っていて、プロジェクトに配属された時にも「ココにコレを加えませんか?」と深く考えずに新たな仕様を入れようとしてしまいました。そんな自分を見兼ねた上司が、この記事を一回読んでみな、と教えてくれたのが「ドア問題」という記事でした。

この記事はゲーム制作において「ドアをゲーム内に出す際にゲームデザイナーがどれだけのことを考えなければならないか」を書いた記事になります。「ドアくらい簡単だろ」と思うかもしれませんが、「ドアを開けられるキャラクターの種類は幾つか?(キャラクターにそれぞれドアを開くアニメーションが必要になります)」「ドアは何種類必要か?(配置する場所や大きさに合わせて違ったドアを作る必要があり、それぞれ開閉音も必要になります)」「ドアの開き方は一つか?(開き方によっては背景物やキャラクターに干渉する場所も出てきます。開き方を変えるとドアとキャラクターのアニメーションが増えるし、見た目と開き方が一致しない場合はドアの種類も増やす必要があります)」など、考えなければならないことは山のようにあります。ここをしっかりと考えずに仕様を出してしまうと、色々な所から「こんな話聞いてない!」「コレはこういう場合はどうするの?」とお怒りが届きます。つまり、これ位簡単に出来るだろうと思っていることでも、様々な人の手を借りなければなりませんし、何も考えずに仕様を入れると多くの人に迷惑が掛かってしまいます。ゲーム制作にはスケジュールがある以上、本当にその仕様はこのゲームに必要か、制作に掛かるコストに合っているかを、しっかりと考えて仕様を出さないといけないということです。(ちなみに、この大変さを知った後は他のゲームで遊んでいても「うわーこんな仕様入れるとか地獄を見ていそう……」と悲しい気持ちになれるようになります)

上司に教えられて僕も頭では分かっているつもりなのですが、未だに必要な要素は全部洗い出して発注したと思っていても抜けていることがあり「コレ聞いてない!」と怒られています。(特にSEの発注はよく抜けて怒られています。本当に本当にすいません)

と言うことで大事なのは、やりたいことが決まったら関係ないと思った人にも「こういうことやりたいのですがどうですかね?」と相談することだと思います。相談すると各セクションへの抜けが無くなるだけではなく、様々な意見を貰えて仕様をより良いものにすることが出来るので一石二鳥!

余談ですが「ドア問題 ゲームデザイナー」で検索すると記事が見つかるので、是非一度読んでみて下さい。上司いわく「この記事を呼んで楽しそうと思えるならゲームデザイナーは天職」だそうです。ちなみに上司も自分もこの記事を読んで楽しさなど微塵も感じませんでしたが……

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さて「入社して驚いた(難しい)仕事ランキングTOP3」を書いてみましたが、頭下げたりゲロ吐きそうになったりと辛そうなことばかり言っていますね……
しかし、確かに日々てんやわんやしてはいますが、そんな物が吹っ飛ぶくらいの物がゲーム作りにはあると思います!自分が特にこの仕事を選んで良かったと思えるのはやはり、自分が考えたアイデアがゲームに実装されるのを味わえることです!

特にプラチナゲームズは新人でも「こんなことをやってみたいです!」と伝えれば、任せてくれることが多く、何と新人だった自分にステージを一から作らせてくれたこともあったほどです!

自分の考えたステージを想像以上の素晴らしいイメージアートで描いて貰い、実際にゲームに反映された時の感動は一生忘れられません。

「自分のアイデアをゲームにしてみたい!」と熱い気持ちがある方には本当にぴったりな職業だと思います。この記事を読んで少しでも不透明だったゲームデザイナーの仕事について伝えられたなら幸いです。
ではでは、またの機会に!