こんにちは!VFX(エフェクト)アーティストの中島です。
VFX(ブイエフエックス)とは、Visual Effects(ビジュアル・エフェクツ)の略で、ゲーム内の自然現象や爆発など、あらゆる現象をビジュアルで表現するというお仕事です。特に戦闘シーンにおいては、迫力や爽快感・臨場感を演出し、盛り上げるという、重要な役割を担っています。

さて、今回は会社から交通費などの支援を受け、VFX、サウンドデザイナー(効果音制作)、アニメーター(モーション制作)、キャラクターモデリング、エンバイロメント(背景)アーティストを含む総勢16名で、陸上自衛隊主催の「富士総合火力演習」(通称:そうかえん)に行ってきました。

富士総合火力演習」は陸上自衛隊が行う演習の一つで、毎年8月に静岡県の富士演習場で開催され、一般公開されています。自衛隊が持っている主要装備が見られるだけでなく、戦車や戦闘機を使った攻撃やヘリコプターのリペリング降下の演習などが間近で見学できるとあって、非常に人気が高く、今年のチケットの当選倍率はなんと27倍だったそうです。

「どうしても行きたい!」というスタッフがそれぞれ応募してみたところ、幸運にも社内で4名の当選者が出たため(当選はがき一枚で4人まで入場できます)僕も同行させてもらうことができました!貴重な機会なので、エフェクトの研究のために是が非でも行きたかったイベントです。

そしてやってきた演習当日の8月28日!
前日に静岡のホテルで一泊し、現地に向かいます。
なぜ前日に静岡で一泊したかと言うと、朝がめちゃくちゃ早いからです。
例年朝7:00頃から入場開始になるらしいのですが、そんな時間に着いたらもう列の後ろのほうに並ぶことになってしまいます。勝負は電車移動組が到着し始める6:00くらいまで!

どうにかその前に到着しなくてはいい席が確保できません。
そこでタクシーを予約しまして、なんと4:00に出発!約1時間30分かけて5:40頃に会場に到着しました。

そしてついに列に並びます。「この時間なら余裕でしょ!」と思っていたらすでにけっこうな列になっていてちょっとショック。あの人たちは一体何時から並んでいるのだろう…。

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それでもしばらくすると後ろにさらにさらに長い列ができてきたので、まだ早く着いたほうだったようです。しばらく待っていたら自衛隊員さんが手持ちの当選はがきを人数分の入場券と引きかえてくれました。
うおー!来たって感じがする!

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すでに会場内では戦車のキャタピラの走行音!配置に着くために戦車も入場しているようです。
スタンド席が壁になって場内の様子が見えないため、音でテンションあげながら待っていると、どうやら本番の演習前にリハーサルをしているような音がします。

と、「ドンッ!!」と突然の轟音と空気の振動…!まさかこれ、戦車の発砲音???
耳がおかしくなりそうなほどの大音量だし、体にも振動が駆け抜けて内臓が揺れる感じがするし、衝撃波の影響なのか空気がバリバリ鳴っている音も聞こえるし、音でこんな感覚になるなんて全く未知の体験でした…。もはや身の危険さえ感じる…。

そして6:30、戦々恐々としながら待っていたらついに入場開始の放送が入って列が動き出しました。「ムリムリムリムリ!」発砲音がいまだ定期的に続いているんですよ!?あんな音の震源地に近づいたら耳がおかしくなる!と不安にかられ急いで耳栓を着用。自衛隊員さんに促されておずおずと入場しました。前のほうの席に座れて戦車もよく見える!耳栓効果で音量も抑えられ、何より戦車の雄姿がカッコよすぎて来てよかった~!とすぐに手のひら返し。

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そして長いこと待ちまして10:00ついに演習本番開始!

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もうここからは写真なんてまともに撮っていません…!先輩からは「写真よりも自分の体で本物を感じてこい!」と言われたのでひたすら自衛隊の様々な武装のカッコよさと迫力に酔いしれていました。なかでもやはり戦車や迫撃砲などの発射の迫力は凄まじく、「エフェクトでこの迫力を表現するにはどうすれば…?」とずっと考えていました。

本物の砲弾の発射から着弾の一連の流れを何度も見られたので、リアルに感じさせるポイントや今までの自分に足りなかった要素に気づくことができました。ただ、リアルに入れるとゲームエフェクトとしてはよろしくない部分というのもあります。そこはリアルとフィクションのバランスを取る必要性を感じました。例えば実際の着弾では炎や濃い煙を伴うような爆発というのはほとんど無く、炎が視認できる場面も少なかったです。これをそのままゲームエフェクトにもってくると、どこに着弾したのか、影響を与える範囲がどの程度だったのかがわかりません。炎を余韻として残して視認性を上げる必要もあります。

そんなことを考えていたら「もっとこの迫力を記憶に焼きつけねば!」という思いに駆られ、気付けば耳栓も外して見入っていました。人間慣れるものですね。最後にはそれまで個別で紹介されたすべての武装が、ひとつの作戦演習を遂行する中で一連の流れとして登場しました。戦闘機やヘリが編隊組んで飛んでくるわ、装甲車は走り回るわ、戦車は走行しながら射撃するわで、それはもう、すごい迫力でした。

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14:00頃にすべてを見終わって帰ることになりました。最寄りの駅に向かうべく、タクシー・バス乗り場に向かったら凄まじい人の数。それもそのはず、あとで調べたらこの日の来場者数27,000人。乗り場は長蛇の列でした…。ようやくタクシーに乗れたのは実に3時間後、日焼けでヒリヒリしながらどうにか帰宅しました。

行くのも帰るのも大変でしたが、それに見合うだけの価値があるイベントでした。エフェクトの勉強になりましたし、普段目にする機会がないものを生で見たことで、大きな衝撃を受けました。

文章や画像だけでは、このスケールはなかなか伝えられないと思うので、よければこちらの動画もご覧ください。

また、興味のある方はぜひ足を運んでみてくださいね。

ps
演習終了後は、演習で実際に使われた車両の展示も行われていました。
さっきまで走り回っていた車両を間近で見られて感激…!

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中島史音 Shion Nakajima
2014年にプラチナゲームズに入社。現在はVFXアーティストとして、『NieR:Automata』(2017年2月23日発売予定)を鋭意制作中。