はじめまして、『NINJA GAIDEN 4』プロジェクトマネージャーの村上です。
この記事では、本作の特徴であるハイスピードアクションを実現するために行われた「徹底的な最適化」についての一部をご紹介します。
なお、本作ではプラチナゲームズの自社エンジンを使用しています。
エンジンチームと一緒になって実現したグラフィックスとプレイフィールの裏側を少しでもお届けできればと思います!!
図:自社エンジン上でゲームをプレイしている様子
120FPSという挑戦:フレームレートと快適性の追求
本作ではNINJAGAIDENシリーズがもつアクション性を最大限に体験してもらうため、従来の60FPSに留まらず、120FPSという極めて高いフレームレートでの動作を目指しました。これは1フレームあたりの処理時間がわずか8ミリ秒という厳しい条件を意味します。
FPS | 1秒間に表示される映像のコマ数 | 1コマの生成にかけられる時間 |
30FPS | 30コマ | 33ミリ秒 |
60FPS | 60コマ | 16ミリ秒 |
120FPS | 120コマ | 8ミリ秒 |
8ミリ秒…つまり0,008秒という一瞬で様々な処理を終わらせる必要があるわけですが、
『PlayStation5』や『Xbox Series X/S』といった現行世代のプラットフォームであっても、この水準を維持するには並大抵の努力では実現できません。グラフィックス品質を一定水準に保ちながら処理負荷を削減して目標フレームレートを実現する必要があります。
CPUとGPUの両輪による徹底最適化
本作では主に3つのパフォーマンスモードを基準としています。
- 120FPSモード
- フレームレート優先モード
- グラフィクス優先モード
120FPSモードではパフォーマンス最重視ですが、グラフィックスが極端に劣化しないよう工夫が凝らされています。本作では敵が沢山登場するシーン、レールに乗って高速にステージを移動するシーンなど負荷の原因も様々です。グラフィックス品質の保つためには単にGPUに頼るのではなく、CPUとGPUの両面で徹底的な最適化を実施しました。
図:特にレールによる高速移動は最適化の担当者がとても苦労していましたね!!
最適化の要点となるメッシュ最適化:LOD, HLOD, Merged Mesh
パフォーマンス目標達成のために様々な試みを行いましたが、その重要なポイントの一つがキャラクターや背景に使われている「メッシュ」に対する最適化です。
本作では以下の技術を駆使して描画負荷を抑えています。
- LOD:距離に応じてメッシュのポリゴン数を減らす。
- HLOD:複数オブジェクトを統合し、遠景ではメッシュをまとめて簡易描画。
- Merged Mesh:近距離でのオブジェクト密集時にメッシュの描画命令を削減。
ゲームに登場する大量のメッシュに対して事前生成しておく必要があるため、ゲームエンジン側に自動化の仕組みを導入することが重要でした。
図:LODの仕組みでポリゴン数の削減段階を色で可視化した状態
InstaLODと内製エンジンの連携による自動化
本作では軽量化の中核に強力な最適化ツール『InstaLOD』を採用しました。
さらに自社エンジンから直接『InstaLOD』を操作できる仕組みを開発しました。
InstaLODはポリゴン削減だけでなく、UVや法線情報など3Dモデルとして重要なデータの維持にも優れているため見た目の品質を保ちながら軽量化を実現できます。
その反面、非常に柔軟なパラメータ設定が可能であるがゆえに「正解」にたどり着くための調整で苦戦する場面も少なくありませんでした(笑)。
図:自社エンジン上で距離に合わせたLODを複数設定している状態
HLODベイクのための専用マシン運用
さらに生成処理に非常に長い時間がかかるHLODに対しては、生成専用の高性能マシンを用意して自動化も行いました。参考までに私たちがHLOD生成用に使用したマシンの一例をご紹介します。
CPU | インテル Xeon w9-3475X 36 コア, 72 スレッド |
Memory | DDR5 256GB |
GPU | Geforce RTX4060Ti |
Storage | NVMe M.2SSD |
※HLOD生成においてはCPUコア数とメモリが重要!!(GPU要件は低めです)
ハイスピードアクションをその手で!!
今回の開発では『InstaLOD』をメッシュ最適化の中核ツールとして据えることで、高フレームレートと高ビジュアル品質を両立する道筋を築くことができました。
120FPSでプレイするには対応するハードウェアが必要ですが、対応環境をお持ちの方は、ぜひその滑らかさを『NINJA GAIDEN 4』で体験してみてください!!
もちろん、ほかのパフォーマンスモードでも刺激的なビジュアルとアクションをお楽しみいただけます。ご自身の環境に合わせて設定を変えてみてくださいね。
発売日まで残りわずか!!
伝統を受け継ぐ最新のハイスピードアクションにご期待ください!!
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村上 学 (Manabu Murakami) 2009年にソフトウェア業界からゲーム業界へ転身し、2023年にプラチナゲームズにプロジェクトマネージャーとして入社。これまで、システムエンジニア、モーションアーティスト、リードアーティスト、TAチームリーダーなど幅広い職種を経験しており、その経験を活かして、最新作『NINJA GAIDEN 4』ではリードプロジェクトマネージャーとして開発を推進している。 |