インタラクティブ音楽の実装を担当した田中です。

今回はBABYLON’S FALLのインタラクティブ音楽について紹介したいと思います。ゲームに詳しい人は知っているかもですが、「インタラクティブ音楽とは?」を簡単に説明すると、ざっくりと「ゲームプレイに追従して自然に変化する音楽」です。

BABYLON’S FALLはハクスラということで何度も繰り返し遊ぶことが前提になっています。音楽を聞き飽きることがないよう、プレイによって細かく変化するインタラクティブ音楽を目指しました。


ダンジョンBGM


ダンジョンの探索中に再生されるBGMです。

ここのインタラクティブ音楽は派手ではないですが、ダンジョンを奥に進むにつれ徐々に盛り上がるようにしました。そのために音楽をステムというレイヤーに分解したものを使っています。オーケストラを例に説明すると木管楽器・金管楽器・打楽器・弦楽器のような楽器ごとの集まりがステムです。

ダンジョンBGMは4つのステムに分割していて、ダンジョン開始時は1ステムだけが再生され、進むにつれ2, 3と増えていき、最終的には全4ステムを使ったフルミックスが完成します。

バース戦闘をクリアするごとに少しずつダンジョンBGMが変化しますので、そのあたりに注目すると分かりやすいかもです。とはいえゲームを繰り返しプレイしている人は既に感覚的に気づいているかもしれませんね。

 


戦闘BGM


ダンジョン途中のバース戦闘で再生されるBGMです。BABYLON’S FALLの中でも最も複雑なインタラクティブ音楽になりました。

こちらもダンジョンBGMと同様にダンジョンを進むにつれ盛り上がるのですが、ステムではなく作曲時点からバリエーションを作成する手法をとりました。バリエーションは最大で6段階。段階が上がるにつれ少しずつ緊張感が高まる曲調になっています。ダンジョンの最初のバース戦闘は手慣らし的に控えめな第1段階から始まり、先に進むにつれ激しい段階になります。

バリエーションは敵の種類でも変化します。強敵が登場した場合は、ダンジョン最初の戦闘でも高い段階に引き上げて緊張感を高めます。敵のチェックは戦闘中に随時行っており、バース戦闘のさらに細かい単位であるウェーブ(敵の第1波・第2波といった区切り)で音楽が変化します。ひとまとまりの敵を倒した節目で音楽が変化するので、戦闘が長時間になっても音楽でメリハリがつけられています。

バリエーションは6段階の基本セットの他にも特別なセットがあります。

プレイヤーがダメージを受けてダウン状態になると、不協和音を奏でる特別なバリエーションに変化します。シンプルな演出ですが分かりやすくピンチになった感じを表現できているかなと。ダウンから復活して通常のバリエーションに戻ると、プレイヤーの戦う気持ちを再び高めるような効果もあります。

戦闘ではまれに貴重なアイテムをドロップするレアな敵が登場します。このときにも特別なバリエーションを使っています。早く倒さないと敵が逃げてしまうゲーム仕様にあわせて、敵の体力が少なくなるとさらに音楽が変化するようにもしました。

これらバリエーションはすべてステムを再生しています。ステムは打楽器と楽音楽器の2つに分解していて、プレイヤーと敵の距離でリアルタイムにミックスバランスを変化させています。通常の近距離で戦っている状況ではフルミックス、敵と距離がある特殊な状況では少し控えめなミックスになるよう調整しました。ゲームで分かりやすいのは、ガルーが遠くからガトリングを撃ってくるような状況だと思います。ガルーとの距離を一気に詰めるようなプレイをすると、それに合わせて音楽が盛り上がるのが感じられます。

 


ボス戦闘BGM


ボス戦闘BGMはボスの種類にあわせて数曲あり、どれも3部構成の長めの曲になっています。

インタラクティブ音楽としてはシンプルで、ボス戦闘の進行度合いにあわせて第1部から順に再生しています。何をもって進行度合いとするかはケースバイケースで、ボスごとに最適になるよう調整しました。基本的にはボスの体力をどれくらい削ったかで切り替えるのですが、ボスによっては形態変化や途中でカットシーンあるため、そこで切り替えるようにしています。

少しインタラクティブ音楽の話からはズレますけども、3部構成の中間部分の曲調は意図的に控えめになっています。リードコンポーザーの山口のコンセプトでそうしているのですが、実際に音楽をゲーム実装するまでは戦闘が盛り下がらないか少し心配でした。ですが結果的には稀有に終わりました。SEやボイスなどすべてのサウンドが入った状態では違和感がなく、逆に音楽的なメリハリがあって第3部が盛り上がる効果がありました。とても鑑賞しがいのある力作になっていますので、機会があればBABYLON’S FALLのサントラをチェックしてみてください(宣伝)。

ボスを倒すと最後はアウトロが再生されます。長時間の激戦を勝ち抜いたプレイヤーを称賛するような、大きく盛り上がる長めのアウトロになっています。アウトロはシンプルなフェードアウトでは得られにくい、インタラクティブ音楽ならではの基本演出ですね。

 


さいごに


以上、いろいろと細かく紹介しましたが、インタラクティブ音楽へのこだわりが伝わればと思います。

この記事を書くにあたって、どれくらいデータがあるか数えてみたところ、最も複雑な戦闘BGMで「266種類」のバリエーションがありました。すべてのステムやバリエーションを含めた数字ではありますが、結構な規模のインタラクティブ音楽ではないでしょうか。(戦闘BGMだけの数字なので、BABYLON’S FALL全体ではもっとたくさんあります)

長年、インタラクティブ音楽に携わってきて思うことは、変化が分かりやすいものが注目されがちな中、さりげない変化も重要だということ。普通にプレイしていただけでは気づきにくくても、まったく変化していなかったら単調ですぐ飽きてしまうものです。目立たなくても潜在意識には働きかけるような、陰からしっかり演出するインタラクティブ音楽も大切にしていきたいです。

では、ゲームを楽しんでください!

 


本記事はBABYLON’S FALLプレイヤー専用コミュニティサイト『Hanging Garden』の投稿記事の転載です。BABYLON’S FALLに関する最新情報は『Hanging Garden』(https://hanging-garden.babylonsfall.com/)からご覧いただけます。