どうもはじめまして!『ベヨネッタ3』でリードコンポーザーをしておりました原田尚文です。

長い年月をかけ、ようやく皆さんのもとへこの作品をお届けすることが出来ると思うと感無量です!

まずは、こちらの動画にて、ベヨネッタ3で聞くことができるBGMの一部を紹介しております。どうぞご覧ください。

では、本題である『ベヨネッタ3』の楽曲コンセプト紹介の前に、簡単に自己紹介をさせてください。

私は、もともとTVやラジオの番組やCMで使われる音楽などを作っていましたが、一念発起してこの会社にやってきて気付くと10年が経っていました、、いや時の流れは恐ろしい。。

出来るだけ目立たない様に生きてきましたが(笑)、その間、弊社リリースのゲームタイトルの実に半分以上のスタッフロールに名前を載せてもらったりしています。前作のベヨネッタ2ではMoon Riverのアレンジの戦闘曲やボス戦、ステージ曲など、幾つか担当したり、数年前にリリースしたアストラルチェインでも半分近くのインゲームの曲を担当したりもしました。そして今回のベヨネッタ3では、リードコンポーザーという、当ゲームに関わった一癖も二癖もあるコンポーザースタッフたちの頭を張らして頂く形と相なりました。どうぞ宜しくお願い致します!

さて、このリードコンポーザーという仕事ですが、ただ「先頭に立って曲を作る」というだけのものではなく、実は様々な事をやっています。それは、例えば「曲の方向性をディレクターと一緒にあーでもないこーでもないと考えたりする」事から始まり、このステージにはどのくらい曲が必要かを見極め、曲数を出してプロデューサーと制作スケジュールを決めたり、曲の構成をある程度練って、それをそれぞれのコンポーザースタッフに伝えてディレクションを重ねながら曲を制作してもらったり、お手伝い頂く外部の作曲家や演奏家の方に打診をしてから綿密に打ち合わせをして、最終的にそのアウトプットとして素晴らしい楽曲を仕上げてもらったり、、と、それ以外にもそれはそれは思い出せないくらい沢山の仕事と貴重な経験をさせてもらいました。

とくにこの作品では制作に時間を掛けさせて頂いただけのことはあって、今までにないスケール感と、濃密なゲームプレイ体験を凝縮することが出来たと思っていますが、それを支えているアセット類(ゲームを構成している全てのデータ)の物量がまぁデカい。めちゃデカいです。これはBGMの曲数にも反映されていて、前作よりも大小合わせて80曲近く多くなってしまいました(汗

その膨大な曲数の制作と実装するミッションを成功させるべく、今回は社内コンポーザー11名、外部の作編曲家の方は計8名という大編成を組んで挑んでいます。私からすると、オレにも元気をわけてくれと言わんばかり…まさに〇〇玉状態ですね。もうね、元気もらいました。凄い沢山!

そんなこんなで、曲を書いてくれた人たちすべてのエネルギーがはち切れんばかりにパンパンに詰まった楽曲群を、工夫を凝らしてゲームに詰め込んでいますので、意識してゲームをお楽しみいただければ嬉しいです!!


楽曲コンセプト


今作は既視感のある世界がステージで、それらがすべて破滅へ進んでいくというダークで重苦しい雰囲気が全体通して漂っています。一方、そんな中でもベヨネッタはいつもの彼女らしい高飛車でS気のある振る舞いやスタイリッシュかつ華麗な戦い方は健在なのです。

後者は、過去作から引き継がれたものがありますが、前者は今作特有のものでBGMもこれを表現しなければならないのですが、この相反するような2つの世界観をうまく一つに共存させることが今回のミッションであり、今回の大きな意味でのコンセプトと言えます。

また、今回の敵は、天使でも悪魔でもない、『ホムンクルス』という人の作り出したもので、ベヨネッタシリーズでは異質な存在になっています。

よく見ると唐草模様とも雲とも見える装甲をしていて、どことなくオリエンタルな風貌ですね。『ホムンクルス』のボスクラスの戦いでのBGMでは、楽曲もこのオリエンタルな雰囲気が感じられるものというのがコンセプトになっています。

これらを踏まえて、ベヨネッタ3のゲーム中に流れる楽曲をいくつか紹介するとしましょう。


楽曲紹介


– 東京 渋谷 –

 

これは1ステージ目の東京渋谷のBGMです。

ここでは緊急放送が鳴り響く中、ヘリコプターが飛び交い、いたるところで黒煙があがるなど、いくつものスポットで環境音が鳴っている場所なので、なるべくそれらを邪魔しない曲の作りになっています。今までのベヨネッタシリーズにはなかったアプローチの曲になっています。

 

– 長城 西長安 –

 

これは万里の長城のようなステージです。

1ステージと違った壮大な世界に来た!といった感じだと思います。ここは戦場の前線でもあるので少し勇ましい雰囲気も持ち合わせています。

 

– ホムンクルス ボスとの戦闘 –

 

天使でも悪魔でもない今作から登場するホムンクルスの中ボス戦の曲です。

少しガムラン・アンクルンのようなオリエンタルな雰囲気が特徴です。

 

– 獣人との戦闘 –

 

怪しく光る月下のもとで、突如ベヨネッタに襲い掛かる謎の獣人とのバトル曲です。

今までのベヨネッタになかったどことなくネオクラシカルなディストーションギターとチャーチオルガンがフィーチャーされた異色の楽曲です。

 

– The Gates Of Hell (Original Ver.) –

 

ベヨネッタシリーズで脈々と続くロダンのThe Gates Of Hellでの曲。今作からさらに本格的Jazzコンボによる演奏のものへとパワーアップ!ムーディーなソロタイムでは、ロダンの作ってくれる謎のリキュールもグイグイ進むこと間違いなしです。

 

– The Gates Of Hell (Swing Ver.) –

 

なんと、今作では別アレンジも収録しています!スリリングな4ビートで、酔いのまわりがさらに加速しそう。さらに!既にプレイされた方は気が付いたかもしれないですが、実はもう1つ別バージョンのショップ曲がどこかで流れます。気になった方は、ぜひ探してみてください。

今回のショップ曲を、原曲の良さを最大限に生かしつつ、インプロビゼーションを交えた素晴らしいアレンジと演奏力で更なる次元へと昇華して頂いたのは、関西を中心にご活躍の岸本良平さん(pf)、 横尾昌二郎さん(tp)、佐々木善暁さん(b)、田中宏昭さん(ds)からなるジャズクァルテットです。

一つのモチーフから限られた時間の中でメンバーそれぞれが音で会話し、即興的に音楽が紡ぎだされていく様は、レコーディングに立ち会った一同、皆、驚嘆の一言でした!

さて、いかがだったでしょうか。

この他にも本当に沢山の魅力的な楽曲が詰まっていますので、ゲームをプレイしながらもBGMに耳を傾けていただければ幸いです!!


原田尚文
Naofumi Harada

TVCM等の放送用楽曲や企業用VPの制作を経て2012年プラチナゲームズに。
『BAYONETTA 2』『The Legend of Korra』『Teenage Mutant Ninja Turtles: Mutants in Manhattan』『Star Fox Zero』『Star Fox Guard』『Astral Chain』『World of Demons – 百鬼魔道』などでコンポーザーとして、『NieR:Automata』ではインプリメンテーター、『TRANSFORMERS: Devastation』『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』ではギタリストとして参加。『BAYONETTA 3』ではリードコンポーザーを担当。