皆様、はじめまして。

若手主体の『ASTRAL CHAIN(アストラルチェイン)』において数少ない「おっさん」枠のVFXアーティストの山本です。今回は『ASTRAL CHAIN』のVFX(視覚効果)において大事にしたことや実際の事例などをちょっとだけ真面目に解説したいと思います。

まずは大前提として、「プラチナゲームズのVFXにおいて一番重要視しているものは何か」をお話ししたいと思います。当然『ASTRAL CHAIN』のVFXもそれを重要視していて、それに基づいて各VFXを構築&調整しています。

それは何なのかというと……

「インタラクティブな爽快感」 を最大限に際立たせる!!

ババーン! これこそがプラチナゲームズのVFXの最大の特徴であり一番重要視していることであります。

これは「プレイヤーの干渉によって起こるリアクションに対してビジュアルの変化などを駆使し、何をしたのか、何が起こったのかを視覚的に強調する」ことを意味しており、これによってキャラクターを操作した時の手触り感や、仕掛けなどを作動させた時の気持ちよさを増幅し、ユーザーの感情を揺さぶりまくることを狙っています。

『ASTRAL CHAIN』はプレイヤー&レギオンの2体が基本となるゲームであり、状況によってはそれ以上のシチュエーションもあり得るため、特にリアクションに関するVFXにおいては “強調” と “記号としてのわかりやすさ” を両立するためギリギリまで調整した作品であります。(プラチナの作風として、強調や派手さに若干重きを置いてはいますが……)



◆敵の死亡

敵の死亡においても「インタラクティブな爽快感」を念頭に置いて構築しています。

アクションゲームにおいては攻撃中(コンボ中)に敵の死亡が確定したのかどうかが直感的にわからなければいけません。そのうえで “倒した” という爽快感が必要となります。

そのため『ASTRAL CHAIN』ではプラチナの王道スタイルである「死亡確定時に敵の動きを止め、死亡予兆で目立たせてから爆散*」という流れを導入しています。

※死亡した敵に無駄に攻撃を続けてしまうのを避けるため、特に攻撃のテンポや動きの速い、複数の敵が出る戦闘では必須



◆死亡コンセプトはデータ分解

今回『ASTRAL CHAIN』でどうしても実現したかったのが「リアルタイム粒子化死亡」です。(最近の特撮などでおなじみの表現ですね)

実現方法を簡単に解説すると、死亡の瞬間、画面の色を取り込んでそれを大量のGPUパーティクルに貼り付け、敵の形で画面上にマスクを切ることで実現しています。

『ASTRAL CHAIN』のVFXはデータっぽさを表現するうえで「キューブ」を構成要素として重要視しているため、死亡時の粒子も実は一粒一粒がキューブ状になっており、光源の影響も受けています。ただ、そのまま粒子でサラサラ崩すとアクションゲームとしての爽快感が減るので、爆散する粒子と崩れ落ちる粒子を混ぜることによって気持ち良さも感じられるように調整しています。



◆ひび割れ表現

これもリアクションを強調するため今回多用した表現になります。視差マッピングを利用して、あたかも攻撃などで本当に凹んでいるかのように見せています。エフェクトで発生させているため、どこにでも投影で馴染ませつつ乗せられます。またこれの応用として、敵キャラの表面に投影することで全身ひび割れ状態の表現などにも活用しています。


 


◆IRIS(アイリス)表現

ゲーム中どこでも使えるIRIS(アイリス)起動中の表現もメイン部分はVFXで構成されています。これは「ややこしそうなことはとりあえずVFXに振ってみる」というプラチナの謎の伝統?から実現した、とても(内部的には)ややこしい表現になります。

VFXでやっていることを簡単に解説すると、

  • 起動と同時に画面にノイズを入れ、
  • 空間に3D的にグリッドを描画し、
  • 地形にもグリッドの線を投影し、
  • なおかつラインを地形上に走らせ、
  • 画面全体を取り込んで彩度や色味を調整し、
  • 画面全体のオブジェクトに距離に応じてアウトラインを描画し、
  • さらにキャラクターにはシルエットの形で切り抜いて別の効果をのせるetc……

といった具合に、文章だけ見るとわけのわからんことをいろいろやっております。

これも起動時の動きや表現などに「インタラクティブな爽快感」を意識したこだわりを入れ込んでいます。


 
という訳で、まだまだ「インタラクティブな爽快感」を際立たせるために仕込んでいるVFXは多数存在するのですが、キリがないので今回はこの辺で終わりたいと思います。

VFXは開発の工程では下流に位置する存在ですが、プラチナゲームズにおいてはゲームのクオリティをビジュアル面や手触り感の両面から左右する最後の砦だと思っています。そんなVFXの存在を少しでもわかってもらえたら嬉しいです。

『ASTRAL CHAIN』では田浦Dを始めとする皆の「こだわり」と若手のパワー&「おっさん」の奮闘で魅力満載の作品に仕上がっていますので、是非お手に取って楽しんでください!

ゲームは触ってナンボです!! よろしくお願い致します!!





Yamamoto山本 拓生 Takuo Yamamoto
1999年にカプコンに入社。『デビルメイクライ』『バイオハザードGC』『バイオハザード4』『大神』などの開発に携わった後、プラチナゲームズへ。プラチナゲームズの創立当時から、VFXアーティストとして『BAYONETTA(ベヨネッタ)』『VANQUISH(ヴァンキッシュ)』『METAL GEAR RISING REVENGEANCE』『ベヨネッタ2』や『スターフォックス ゼロ』(お手伝い)『NieR:Automata』(お手伝い)などの開発に従事。
平成仮面ライダーといまだに浅香唯が大好きな「おっさん」VFXアーティスト。
自分の周りに平成仮面ライダーのフィギュアがないと落ち着いて仕事ができない特性を持つ。