こんにちは、『VANQUISH』メインプログラマーのサカタです。

『VANQUISH』発売してはや1ヶ月ですが、みなさん楽しんでいただけていますでしょうか?

今回はゲームプログラマーの仕事についてお話をさせていただきます。
ゲームプログラマーの仕事というと、もちろんコンピュータを動かすためのプログラムをいっぱい作るんだろうなあ、という漠然と難しそうなお仕事のイメージがあると思います。

もちろんこれは正しいイメージで、業務の大半はパソコンに向かっていろいろなプログラムを書いています。どういったプログラムを書くのかというと、具体的に書き出すときりが無いくらいたくさんの種類があり、ゲームを構成するすべての部分から、ゲーム製作に必要なツールやデザイナーやプランナーの作業に必要な環境にいたるまで、ゲーム製作を行う上でのありとあらゆる場面でプログラムを組んでいます。

こういった無数の仕事をこなす上で大事なのが、いくつかの大きな目標を設定することです。
漫然とすべてに力を注いでも薄くぼやっとしたものしか出来上がらないもので、このプロジェクトはなにに力を入れるのか、どういったことにチャレンジしていくのかを明確にすることによって、濃く質の高いものが出来るのです。
ちなみに目標の数が多すぎてもダメ、だいたい失敗するプロジェクトは目標設定が出来ていないか、欲張りすぎからくるものが多いです。

で、『VANQUISH』の目標は2つ。
1つは本格的なサードパーソンシューティング(以下TPS)を作る、もう1つはPS3・Xbox360のマルチプラットフォーム開発でした。

TPS製作に関しては、もともとアクションゲームを多く作ってきた会社なのでそもそもそのノウハウが無く、当初はアクションゲームの延長線上で作ろうとしましたが、早々に頓挫しました。やはりAIの構造自体が別もので、海外のメジャータイトルを片っ端からプレイして参考にしたり、海外の開発者の技術記事を読み込んだり、直接はなしを聞いたりして製作に当たりました。
TPSのAIは敵個別のAIはもちろん大事なのですが、ステージというか各シチュエーション、シーンごとの全体行動が重要で、そういった部分を強化するためのシステムを作り、さらにいろいろなシチュエーションを管理するためのツールなどの整備を行い、これまでのタイトルよりも環境やツールに時間と労力をかけたプロジェクトになりました。

もちろん敵AIの根本には今までのプラチナゲームズのアクション魂が込められていますので、本格的TPSでありながら、アクションゲームのテイストも楽しめる、なかなか他では目にかかれない面白い作品になったのではないかと自負しております。

次にPS3・Xbox360のマルチ開発に関しては、2つ以上のハードで同じタイトルを作る上で一番問題になるのがハードの性能差で、ハードによって得意なことと苦手なことあり、全く同じゲームを作ろうと思ったら、お互いの苦手な部分に合わせて作る必要があり、結果どっちのハードの性能もそこそこにしか使い切れてないタイトルになってしまいます。

もちろんそれで作りたいものが全部収まっていれば問題は無いのですが、『VANQUISH』では詰め込みたいモノがとても多く、両ハードの苦手な部分に合わせる作り方では限界が見えていたので、マルチ開発を行う上で決めたことがあります。
それは、ハードごとの特性や得意な部分はバンバン使っていって、苦手な部分は努力と根性で補っていくということ、もちろん両ハードでゲームの見た目やプレイ感覚などは同じにすることが大前提で。

これが『VANQUISH』開発においてもっとも過酷な目標で、特に当初PS3開発のノウハウが無かっただけに、本当に到達可能な目標なのか不安でいっぱいでした。開発スタッフも優秀なメンバーが揃っていたのですが、それでも技術力が不足していたので、社外の優秀なスタッフにも応援を頼み、セガ海外の技術スタッフに数ヶ月常駐してもらったり、と様々な人たちの手を借りて完成させることが出来ました。結果的には非常に高いクオリティで目標を達成でき、そしてユーザーの皆さんにお届けできたのではないかと思っております。

最後に、『VANQUISH』をプレイしていただいた皆さん、本当にありがとうございます。
まだだという方、このブログを読んでいるということは多少なりと興味があるのだろうと思いますので、一度手にとってプレイしてみていただけたらなあと思います。けして損はさせないと自信を持ってお勧めできるタイトルだと思っていますので、是非よろしくお願いします。