※『The Wonderful 101 』 サウンドトラックのデジタル配信は終了いたしました。ご了承ください。(2016年12月28日17:30時点)
みなさん、お久しぶりです。『The Wonderful 101』のディレクター、神谷英樹です。
既にお知らせしている通り、大変残念ではありますが、『The Wonderful 101』(以下『TW101』)のサウンドトラックが、この年末をもって配信終了となります。今後もう配信再開の予定はありませんので、少しでも興味のある方は是非お早めにご購入頂きたいと思います。
さて! プラチナゲームズの公式ツイッターでは、サントラの中から特にダウンロード数の多い曲を上位10曲ご紹介してきたわけですが(まとめ記事は>>>こちら)、僕個人的には(自分で言うのもなんですが)サントラのどの曲も聴き応えのある名曲ばかりで、TOP10で終わらせてしまうのはもったいないと思います。そこで、まだご紹介してない曲の中からマイ・ベストをいくつか選び、ネタバレを気にせず解説してみたいと思います!
EV02 ブリーフィング その1
EV02 ブリーフィング その1
カテゴリ: サウンドトラック
グル・グル・マーチ
はい、この曲は戦いの雰囲気とは打って変わって、突然和やかな曲になりますね。『TW101』ではもちろんヒーローの熱い戦いをメインテーマに掲げていますが、まぁ、あんな連中ですから(笑)、戦いの中に癒しも必要ですよね。こういう曲もまた、『TW101』を象徴する曲の一つだと思います。
グル・グル・マーチ
カテゴリ: サウンドトラック
EV12 ルカのテーマ
この曲はいかにも「腕白な子供!」という雰囲気で、聴いていて楽しくなりますね。僕は開発中でも、気に入った曲が完成したらそのデータをもらってヘッドホンで聴きながら仕事をしたりするのですが、この曲も当時ヘビーローテーションしていた曲のひとつです。実は、最初は「EV13 シロガネのテーマ」の方がルカ用の曲として作られ、このルカのテーマがシロガネ博士用のものでした。それぞれ逆の方がキャラクターのイメージに合うと思ったので、逆転させ、更にキャラのイメージに合うように作り変えていって、現在の形になりました。
EV12 ルカのテーマ
カテゴリ: サウンドトラック
EV14 のんきな奴ら
ちょっと気の抜けた曲が続きますが(笑)、でもこの曲はある意味一番『TW101』らしい曲だと言えるかも知れません。地球のために戦うという過酷な使命を帯びているワンダフル100の隊員たちですが、こんな曲が流れるような場面があるからこそ、キメる時にはキメる、その熱さが引き立つんじゃないでしょうか。…というか、この曲で演出するような場面のシナリオを書いてる時が一番楽しいんですよね(笑)。過酷な開発の使命を帯びている我々スタッフの癒しでもあるのです。
EV14 のんきな奴ら
カテゴリ: サウンドトラック
ミサイルに乗って
題名の通り、ミサイルに乗って飛ぶ場面のために作られた曲ですが、ゲーム中盤のシューティングステージでも使われますね。更にラストのゲス・ワクセー突入の場面でも使っています。このように曲を流用するのは、ゲーム中の全部の場面にそれぞれ固有の曲を作るのはスケジュール的に現実的ではない、という台所事情もありますが、「この曲がもう一度流れると熱い!」という理由で敢えてその手法を採る場合もあります。演出としての選曲の妙ですね。この曲のように、多くの場面にうまくハマってくれる曲というのもまた、名曲と言えると思います。
ミサイルに乗って
カテゴリ: サウンドトラック
ガジオペア級 強襲攻撃空母 ダイジャ
この曲も、題名とは別の場面でも使われている曲のひとつです。ラストに近い場面ですが、どこで使われているか、皆さん覚えていますか? 思い出せない方は、是非もう一度『TW101』をプレーして確かめてみて下さい。
開発終盤になってくると、曲制作のスケジュールもタイトになってきて、どうしても専用の曲でなくてはダメだ! という場面以外は、既存の曲を当てはめるという選択肢も検討するようになってきます。この曲もまた、そんな選択を迫られた時に、これだ! とハマった曲ですね。
ガジオペア級 強襲攻撃空母 ダイジャ
カテゴリ: サウンドトラック
EV22 因縁
この曲もゲーム中何度か流れますが、ラストのゲス・ワクセー突入時が最も印象的に使われる場面ではないでしょうか。でも実はこの曲は、当初レッドとブルーが戦う場面用に作られたものだったのです。皆さんご存知の通り、作曲した近藤嶺さんはとてもアツい名曲をジャンジャン作ってくれる作曲家なのですが、送られて来たこの曲があまりにもドラマティックだったため、その場面で使うにはもったいないな、ということになって、もっとハマる場面のためにストックしておくことにしました。その後、レッドとブルーの戦いの場面の曲は滝沢が担当することになり、「レッド vs ブルー」が誕生。そしてこの「EV22 因縁」は、ブルーがビジョーヌに挑む場面、そして冒頭で説明したゲス・ワクセー突入の場面で使われることになったのです。
そうそう、本作では前半ステージの出動ファンファーレのフレーズがテーマフレーズとして色んな曲の中に使われていますが、この曲でもそのフレーズがアレンジされて使われていますね。元々そのテーマフレーズは、「ST01 出動!The Wonderful 100!」が完成した後、その中からピックアップしたフレーズを元に作られたものです。
「『TW101』を象徴するファンファーレを作って!」とメインコンポーザーのヒロシに言い続け、ヒロシが「難しいのでもう少し後に…」と言いながら苦しみ抜いて絞り出したファンファーレ。それがそれ以降に作られる曲に盛り込まれていくことになりました。
EV22 因縁
カテゴリ: サウンドトラック
ST06 コウラル遺跡
これは曲自体というよりも、ステージスタート時のファンファーレが変わるのが印象的ではないでしょうか。『ビューティフルジョー』の時にも同じ手法をとり、お決まりのボス戦開始時の曲が、後半ステージになるとよりシリアスさを増したアレンジに変わる、という演出をしましたが、『TW101』ではステージ開始時のファンファーレでその手法を使いました。前半ステージ用のファンファーレの作曲に苦しんだヒロシも、これはセカンドバージョンということで、肩の力を抜いて作曲できたことと思います(笑)。
ST06 コウラル遺跡
カテゴリ: サウンドトラック
EV33 プラチナ・ロボ
母なる地球の守護神、プラチナ・ロボ! このロボットがどういうものかは、プレーをした皆さんには説明する必要もないと思いますが、その慈愛に満ちた母性を表現するのに、僕は『大神』の曲「白野威」と同じイメージを抱いていて、似たようなディレクションをしたのを覚えています。再び地球に危機が訪れるようなことがあれば、この母なる守護神は何かに魂を宿して、また我々の前に姿を現してくれることでしょう!
EV33 プラチナ・ロボ
カテゴリ: サウンドトラック
ベガスス級 ギーミ専用 人型機動強襲制圧兵器 ギガグージン
また曲の使い回しの話になりますが(笑)、この曲ほど使い回しが予想外にバシッとハマったものはありません。その意味でとても印象に残っている曲です。
本来は題名通り、ギガグージン戦のために作られた曲ですが、もう一か所、とても重要で、とても印象的な場面でこの曲は使われています。皆さんどこか分かりますか? …もう答えを言っちゃいましょう(笑) それはラスト間際、プラチナ・ロボが敵の艦隊に向けて、シロガネ・コメットを発射する場面です。
ゲームの中で確認して頂くと分かるのですが、シロガネ・コメットを構え、狙いを定め、引き金を引き、レッド曰く「反物質粒子超大砲ジャスティス・アロー」を発射する、その一連のイベントシーンで、カットにピッタリ合う形でこの曲が流れます。
実はこのイベントシーンが完成した時には、専用の曲を作るスケジュールが全く残っていませんでした。そこでヒロシと「この場面をどう演出しようか」と悩み、取りあえずヒロシがピックアップしたこの曲を仮に当てはめて流してみたら…シロガネ・コメットを構えるところからレーザーを発射する瞬間まで、まるでその一連のシーンのために作られた曲のように、奇跡的にピタッとハマったのです! その瞬間、思わず僕とヒロシは歓声を上げ、大笑いしてしまいました。ゲームを面白くしようと最後まであがけば、ゲームの神様は必ず微笑んでくれる、そう実感した出来事でした。
ベガスス級 ギーミ専用 人型機動強襲制圧兵器 ギガグージン
カテゴリ: サウンドトラック
ST09-1 宇宙へ
いよいよ宇宙に向かって飛び立つ、クライマックスに向けた場面でこの曲は流れます。「ラストは宇宙へ…」と開発初期から構想していて、僕の好きなシューティングゲームを取り入れることも最初から決めていました。しかしこの曲は、最初はゲーム序盤の中ボス用に作られた曲だったんです。これも先ほどお話しした近藤嶺さん担当の曲で、例によってこの曲も中ボス用に使うにはあまりにアツ過ぎたため、ヒロシと「これ…中ボスというより、もうラストじゃない…?」となったのです。そう思って聴いてみればみるほど、スターウォーズを想起させるとてもスペイシーな曲で、僕が構想していたラストの場面にもバシッとハマる…! というわけで、これはラスト用にストックしておくことにして、近藤さんには改めてもう一度中ボス曲を作ってもらうことになったのです(そして完成したのが「総員、ユナイトアップ! その1」でした)。
ST09-1 宇宙へ
カテゴリ: サウンドトラック
EV46 ハッピーエンド
こういう和やかな曲を聞くと決まって思い出すのが、開発後期の過酷な日々のことです(笑)。和やかだからというよりも、もしかしたらゲーム終盤の曲はどれも、マスターアップ間際の修羅場の記憶を蘇らせるのかも知れません。いずれにしても、ゲームの中ではハッピーエンドの場面でも、実際作っている側は締め切りに追いたてられて激務に励んでいる状態なので、あまりハッピーではないのですが(笑)、それでもエンディング付近の曲が出来あがってくると、ゲームの完成が近付いてくるのを実感して、胸が熱くなるものです。
EV46 ハッピーエンド
カテゴリ: サウンドトラック
エンドロール
思えば、スタッフロール用に曲を二つ用意したのは、初めてディレクターを務めた「バイオハザード2」の時が最初ですね。その時は表エンディング、裏エンディング用にそれぞれ1曲ずつ用意したのですが、次の『デビル メイ クライ』では、スタッフロールの前半、後半で曲を分けて使う手法をとりました。『ベヨネッタ』も同じ構成ですね。スタッフロールが始まったら、戦いが終わった直後の興奮そのままの激しい曲が流れ、後半はグッとトーンを落として余韻に浸れる穏やかな曲に変わる。遊んでくれたユーザーも、後はコントローラーを置いてゆったり感慨にふけっている頃だろうか、なんてことを想像しながら、こんな構成にしました。実際、最初に流れる「ST10 出動! The Wonderful 101!」の場面では、まだ敵と戦闘をしなくてはならないので、コントローラーを置くどころではなかったでしょうね(笑)。
後半に流れるこの「エンドロール」は、実は『バイオハザード2』の表エンディング用の曲を参考に作ってもらいました。自分が作ったゲームの曲の中でも、お気に入りの曲だったので…。皆さんも聴き比べてみたら、どこかに共通点を感じるかも知れませんね。そうそう、この曲は開発の本当に最後の最後の頃に完成したので(まぁどのゲームでもエンディング曲というのはそういうものですが)、マスターアップして抜け殻のようになった後、はぁー終わったぁ、と夜空を見上げながらこの曲を聴いてトボトボ帰ったのを覚えています。
エンドロール
カテゴリ: サウンドトラック
…というわけで、僕のお気に入りの曲の解説、如何だったでしょうか? ベスト10以外にも、名曲はてんこ盛りです。開発終了から大分経っているので記憶を手繰りながら書いてみましたが、お楽しみ頂けたら幸いです。
ここでご紹介出来たのは、『TW101』の全楽曲の中のほんの一部ですが、僕だけでなく、ゲーム開発に情熱を燃やす多くのスタッフの想いを乗せて、『TW101』サウンドは作られました。その想いが、一人でも多くの人に届くことを願っております。
それではまた!
神谷英樹 Hideki Kamiya
1994年(株)カプコンに入社。『バイオハザオード2』で初監督を務め、以降『デビル メイ クライ』『ビューティフルジョー』と新規タイトルを発表。2006年には望郷の念を形にした『大神』を発表し、第10回文化庁メディア芸術祭エンターテインメント部門で大賞を受賞する。現在はプラチナゲームズ(株)に所属。『ベヨネッタ』(2009年)、『The Wonderful 101(ザ・ワンダフル ワン・オー・ワン)』(2013年)の制作を経て、『Scalebound』(2017年予定)の発売に向け多忙な日々を送っている。
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※本ブログで紹介している楽曲の著作権は、任天堂(株)及びプラチナゲームズ(株)に帰属します。有償での配布や商用利用、改変を行うことなく、あくまで個人利用の範囲内でお楽しみください。