プラチナゲームズさんが「ネオ-クラシック・アーケード」シリーズの第一弾として、『ソルクレスタ』を企画し、そのコンポーザーとして私に白羽の矢を立てていただいたことはとても嬉しく思います。

そのお話をいただく数ヶ月前に、本当に偶然なのですが、趣味で『テラクレスタ』の音楽をPC-88のFM音源でコピーしていました。ですので、制作への技術的な準備はすでに整っていたのです。

テラクレスタ ©2014 HAMSTER Co.
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当初いただいたオーダーは、「当時のサウンドメイキングのノウハウをベースに、それを“ネオ”に昇華したい」というものでした。

私が当時のニチブツのサウンドスタッフで、新しいアーケード基板を作るとしたらどういうものになっただろう? などと妄想しながら最初に出した答えはYAMAHA YM2151+PCM16チャンネル、というものでした。

それをもとにさっそくデモ曲を作ってみたのですが・・・あえなく没となりました。サウンドそのものより、曲調が某社のシューティングすぎる・・・ということが理由だったのですが、それはもはや私の手癖の1つのようなもの、頭を切り替えて、さらに自問自答してみたのです。プラチナゲームズさんに相談しながらクレスタシリーズの後継として相応しい“ネオ”とはなにか、今一度考え直しました。『テラクレスタ』の作曲者の吉田健志さんの曲調をもっと積極的に模倣したほうがいいのかな、とも思ったのですが、「古代さんらしさは全面に出してほしい」ということで、それは踏まえつつも、ニチブツサウンドとして最も特徴的なあのYAMAHA YM3526(OPL)を活かすことが良いだろう、と考えました。

しかしただそれだけでは“ネオ”としては物足りないので、YM3812(OPL2)にアップグレードし、それを8個ほど並べて分厚いサウンドを実現しよう、という結論に行き着きました。それが『ソルクレスタ』のFMサウンドの核となりました。

そして楽曲制作に取り掛かるのですが、OPLをエミュレーションしたアプリケーションで良いものが中々無く、最初はフリーソフトであるJuceOPLVSTiを使用していました。これは音はとてもそっくりなのですが、機能的に不十分で動作も不安定な部分があり、使いこなすためにはかなりの労力を必要としました。

途方に暮れてTwitterで「誰かOPLの良いアプリケーションを知りませんか」と呟いたところ、カナダのPlogueというメーカーの開発者から、自身が出されているchipsynth PortaFMというアプリをご提供いただきました。これがなんと素晴らしく精巧に出来たエミュレーターで、あの当時のニチブツサウンドをまさに再現できるものでした。これに加えて、PSG3ch、PCM16ch、そしてリバーブ、ディレイ、コーラスの三種を外部エフェクトと想定した、仮想のサウンドモジュールをベースに作曲を進めていきました。

古代祐三コンポーザーの古代 祐三さん

サウンドディレクションはプラチナゲームズの山口さん。『ベヨネッタ』などで大変素晴らしい楽曲を作られている方ですが、本作では2020年のエイプリルフールに公開されたデモムービーの楽曲を作っていらっしゃいます。また同社の神谷さん、佐藤さんからもゲーム制作の観点からいろいろなご助言をいただき、この4人のチームワークで楽曲は制作されています。

総監督の神谷 英樹(左)、ディレクターの佐藤 貴宣(中央)、サウンドディレクターの山口 裕史(右)

制作開始当初から開発半ばほどまで、サウンドの方向性はかなり紆余曲折と迷いがありました。私個人的に『テラクレスタ』の音楽はFM音源版への思い入れが強いのですが、神谷さんはPSG版で、そこは折衷案として両方のサウンドを入れてみたり、また私が原曲重視なのに対してプラチナゲームズさんのご意向は「古代サウンド」であったり、それらすべての良さをなんとか採り入れよう、とかなりのリテイク、作り込みを行っています。結果として、それらをすべて踏まえた、“ネオ”なサウンドになったのではないかと自負しております。

■サンプル楽曲
『ソルクレスタ』 | Neptune Storm


『ソルクレスタ』発売日決定会議 生放送
放送日時(日本時間):1月23日(日)昼 12:00~ ※1時間程度を予定

URL(日本語):https://youtu.be/c89butV49uA
URL(英語):https://youtu.be/gPexJWFn36s

■出演
神谷英樹(チーフゲームデザイナー/『ソルクレスタ』総監督)
鷲阪崇人(『ソルクレスタ』プロデューサー)
佐藤貴宣(『ソルクレスタ』ディレクター)
大西るい  (『ソルクレスタ』リードUIデザイナー)


製品情報
タイトル:SOL CRESTA(ソルクレスタ)
対応プラットフォーム:Nintendo Switch / PS4 / Steam ※ダウンロード専売
ジャンル:自在合体シューティング
リリース日:2022年2月22日(火)
価格:4,378円(税込)
発売元:プラチナゲームズ
権利表記:© PlatinumGames Inc. / ©HAMSTER Co.

追加コンテンツ情報
タイトル:ソルクレスタ ドラマティックDLC
対応プラットフォーム:Nintendo Switch / PS4 / Steam
リリース日:2022年
価格:未定

※本作は『ムーンクレスタ』『テラクレスタ』の権利元である株式会社ハムスターの正式な許諾を得て開発を行っております。


古代 祐三
Yuzo Koshiro

1967 年12 月12 日生まれ。O 型。東京都日野市出身。父親は洋画家、母親はピアニストという恵まれた環境に育つ。幼少よりピアノ、ヴァイオリン、チェロを習い、6 歳の頃から宮崎アニメで有名な作曲家、久石 譲氏に師事。

1986 年日本大学櫻丘高等学校卒業。その後、電波新聞社より発刊されていたマイコンBASIC マガジン上に“YK-2”のペンネームでライターとして活動。ほぼ時を同じくしてサウンドプログラマーとして、「イース」「ソーサリアン」等、日本ファルコム社に作曲を提供する。

そのキャッチーでアグレッシブな楽曲は PC-8801mkllSR シリーズの音源であるヤマハYM2203 を駆使して作曲された。これらの楽曲は特徴的なベースラインを以って “古代節” とも呼ばれゲームファンの間で絶大な人気を集める。

以降パソコン系ゲームメーカーのゲーム音楽を担当し、1986 年には古代祐三名義のサントラCD をリリース。ゲームミュージックのジャンルとしては驚異的な売り上げを記録し、ゲームサウンド・クリエーターとして不動の地位を築いた。中でも「ザ・スキーム」はゲームよりもCD の方が売れたという逸話もある。

古代の作風は初期のロック、中期のハウス・実験音楽、近年のテクノ・トランスや壮大なオーケストレーションまで多彩な才能を発揮し、国内のみならず海外からも高く評価されている。2007 年の「世界樹の迷宮」2008 年の「世界樹の迷宮2」ではPC-8801mkllSR シリーズが持つ独特のサウンド感を任天堂DS 上に見事に表現、 “真・古代節” を余すところなく展開し、旧ゲームミュージックファンのみならず過去の作品を知らなかった新しいユーザーからも絶大な支持を得た。ゲームミュージックという世界において、古代祐三はつねに第一線で活躍し続けているゲームサウンド・クリエーターである。

代表作
「湾岸ミッドナイト MAXIMUM TUNE」シリーズ、 「世界樹の迷宮」シリーズ、「新・光神話 パルテナの鏡」、「パズドラクロス」、「アクトレイザー・ルネサンス」など