まず最初にあったコンセプトは
「プレイヤーは残虐な事をするが、罪悪感を感じず、しかも楽しく笑ってやれるような絵作り」。

そしてデザイナーとして目指したことは
「ゲーム情報誌などでページをめくる手が止まる、webで見たときに思わずクリックしてしまう、一発で心に残るインパクトがある絵作り」でした。

アートワークは社内の小部屋でBGアーティストと二人っきりでたてこもりました。
当初は三案ほどのアイデアを検討していたので、とりあえずひとつずつやってみようと。

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残虐を表現するなら思いっきりリアルな方が刺激のレベルが高くなる。
でももしリアルで表現できた場合も、たぶん同時期に発表されるであろうハイスペックな他ハードのゲームに埋もれる。
いやスペック的にも表現の幅が少ないのではないかという考えもあり、まずは手描きのコミック表現を目指して描いていきました。

一案目を2週ほどやったところでふらりと社内のプログラマーが来て
「あ?コレいい!新しい!こんなのゲームで見たこと無い!」と言われました。
僕らはこの一言であっさり一案目のBlack&Whiteに決めてしまいました。
絵に関して何も説明していないのにも関わらず、もらった意見が目指していたアートワークとして実現できている手ごたえをその言葉から感じたからです。
結局他のニ案はほとんど手をつけることなくBlack&Whiteの絵作りを詰めていきました。

その後、アートワークを元にゲーム画面にBlack&Whiteの画面を作っていきました。
売りであるコミック表現はかなり追及しました。影も、輪郭線も、エフェクトも、テクスチャもすべて二階調で「アーティストが手描きできる」を合言葉にタッチを決めていきました。

白黒の画面なんて見たことも無ければやったことも無い。たぶん何処かの誰かが一回は考えただろうけど誰もやってないということは多分なんらかの問題があるんじゃないか?などと考えてましたが、実際いろいろありました。
まず目が痛い。。。敵がどこに居るかわからない。。。道がどこにあるか分からない。。。
ステージが進んでも変わり映えしない。。。すべて視認性の悪さという一言に尽きます。

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「あーグレーが使いたい・・・」そう思ったこともありました。実際テストとして使ってみたこともありますがコレが全然いけてません。
どういけてないかというとただ色が無いだけの平凡でマイルドな絵作り。
二階調のコントラストが持つソリッド感が完全にそげおちてしまっている。
すぐに考え直して白黒二階調の表現に全力を尽くしました。
具体的には二階調のコントラストのせいで人間の目には白黒に見えるが、実は彩度の低いカラーが入っていたり、背景の奥をぼかすのではなく、逆にコントラストをあげたり。その他いろいろな小技をこれでもかと使いました。

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しかし様々な試行錯誤の末に「いける!」と感じるまでにはそんなにたいした時間はかかりませんでした。
デザイナーとしてのコンセプトを達成し、ゲーム的なコンセプトの部分「残虐で楽しく!」は
Black&Whiteの画面に「血の赤」と「描き文字」を入れたときに完成しました。

最終的には最初のコンセプトからまったくずれることなく
MADWORLDのゲームグラフィックは完成したと自負しています。
我々が自信を持って贈る「遊ぶコミック」を堪能してください。

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メインキャラクターデザイナー&アートディレクター 山中 雅貴