こんにちは。
『ASTRAL CHAIN(アストラルチェイン)』において、フェイシャルモーションを担当した岩神です。
私からは、本作品での主人公のフェイシャルモーション制作について、お話をさせていただきます。

『ASTRAL CHAIN』ではキャラクターデザインが人気漫画家の桂正和先生ということで、桂先生のファンの方たちにも納得していただけるような、キャラクター達の喜怒哀楽などの表情集を作ることがまず大変でした。そこで主人公が敵(悪役)と戦う描写のある作品『ZETMAN』や『TIGER & BUNNY』の原画集やコミックを読み漁り、『ASTRAL CHAIN』に登場する各キャラクターの表情のイメージを固めていきました。

『ASTRAL CHAIN』の主人公は、戦闘中のボイスこそありますが、カットシーンイベントにおいての台詞はありません。フェイシャルモーション制作を行う前、田浦ディレクターにモーションテイストや各キャラクターの表情などについて確認した際には、「主人公の表情は、プレイしてくれる人が自身を投影して、自然に感情移入できるものにしたい。プレイヤー自身から独立した個性が出てしまうような過度な表現はしない方向で」というオーダーを受けました。

キャラクターの動きを作る際に、メリハリのある動き、かっこよく見えるポーズなどは当たり前のように考えていましたが、台詞がないキャラクターで、しかもそのキャラクターが主人公という条件でフェイシャルモーションを作るのは初めての経験です。そのため田浦Dのオーダーに応えることはもちろん、自分自身でも満足のいく答えを出すには時間がかかりました。主人公だけでなく、それ以外の主要キャラクターの各感情における表情も、量産体制に入る直前まで試行錯誤が続きました。

男女主人公の各感情の表情(左から「無」,「喜」,「怒」,「悲」)

フェイシャルモーションの制作環境としては、DCCツールとしてMAYA2016を使用しました。モーション制作用のコントロールRIG*は『ASTRAL CHAIN』専用として1から作成しています。(*3Dモデルの関節を操作してアニメーションを付けるための仕組み。より効率的にクオリティの高いアニメーションを作るため、RIGの組み方も日々研鑽が積まれている)

『ASTRAL CHAIN』には顔の造形が写実的ではないキャラクターが多いので、コントロールRIGとしては、基本的なFACS*の表現ができることはもちろん、カメラに対して表情を作るための目元、口元のオフセット調整を行うことができる機能も持たせました。(*Facial Action Coding System。人の感情と表情筋の関連性を体系化した理論)

これによって、立体としての整合性にとらわれることなく、アニメや漫画を再現したような表情を作ることが可能になっています。

MAYA2016でのカットシーン用フェイシャルモーション制作環境

最後に、本作品のフェイシャルモーション制作に関わることが出来て、とても光栄でした。キャラクターデザインが桂正和先生ということもあり、「いかにカッコよく(可愛く)デザインされたキャラクター達の魅力を損なうことなく、感情を作るか」という作業はプレッシャーの大きいものでしたが、フェイシャル制作チームのメンバーの力を借りて、最後まで仕上げることが出来ました。チームのメンバーには本当に感謝しています。

冒頭でも記述しましたが、『ASTRAL CHAIN』という作品では、主人公の台詞が一切ありません。プレイしていく中で、主人公に感情移入し易い作品になっていると思います。主人公を取り巻く環境や仲間とのやりとりなどから、各場面で “主人公はこの時どんな感情を抱いているのか、どんな気持ちなのか” 少しでもシンクロしていただけたなら、幸いです。

『ASTRAL CHAIN』、是非プレイしてください! よろしくお願いします!!




iwagami岩神 崇博  Takahiro Iwagami
2014年10月にシネマティックセクションのフェイシャルアーティストとしてプラチナゲームズに入社。
最新作『ASTRAL CHAIN』では、リードフェイシャルアニメーターとして、ゲーム全体及びカットシーンイベントでのフェイシャルモーションを担当。