先日、『新人に読んで欲しい本』をテーマに、【技術サロン】を開催しました。技術サロンは、当社の技術戦略グループが主催している技術交流会/勉強会です。日頃から交流のある方々をお招きし、最新技術や開発手法、人材育成など、毎回テーマを設定して、ゆるく情報交換をさせていただいています。



この日は、株式会社ロジカルビートから代表取締役の堂前嘉樹さん、テクニカルディレクター の家弓拓郎さん、株式会社ステアシステムから代表取締役の高橋伸夫さんをお招きし、おススメの本を沢山ご紹介していただきました。『新人に読んで欲しい本』というテーマでしたが、一部については、プログラマーや新人だけでなく、ゲーム業界を目指す人や、ゲーム開発に携わっている人にも参考になりそうな内容のものがありましたので、厳選した10冊を紹介者からのコメントと共に、ご紹介させていただきたいと思います。


book_01ゲームの教科書(ちくまプリマー新書)
ジャンル:ゲーム開発
新人、新人教育担当者に読んでもらいたい本です。以下のような内容が分かりやすく書かれています。【プラチナゲームズ(以下PG) QAエンジニア:森田】

  • ゲームって?
  • ゲーム開発とは?
  • プロデューサーって?ディレクターって?プログラマーって?テスターって?等、各役割
  • ゲーム開発のコストとリスク
  • 「一ヶ月でゲームを作ろう」どういう流れでゲームが作られリリースされるのか


book_03なぜ人はゲームにハマるのか
ジャンル:ゲーム開発
ゲームの定義やゲーム性、ゲームバランスなど、ゲームクリエイターとしての基礎知識を理論と実証で説明してくれています。ゲームデザイナー(企画)には特にお勧めです。【PG プログラマー:朱】


book_04オブジェクト指向における再利用のためのデザインパターン
ジャンル:プログラミング
GOF c++を使いこなすのに必要な知識が得られる内容になっています。イテレーターが、なぜイテレーターと呼ばれるのかなどが書かれているので読み物として面白いです。UE4等では当たり前のように使われている部分が多いので、この本で予備知識を入れておくといいと思います。【ステアシステム:高橋】


book_05Game programming patterns
ジャンル:プログラミング
初級から中級へ、ステップアップを目指す方向けの教材です。この本を「そうだよね~、あるある」と読めれば中級レベルでしょう。【PG 技術戦略グループ:大森】



book_06プログラミング言語C++ 第4版
ジャンル:プログラミング
全ての基本が書かれています。余裕があれば第3版を読んでから第4版を読んで欲しいところですね。【PG 技術戦略グループ:大森】



book_07ゲームを動かす技術と発想
ジャンル:プログラミング
手前味噌でアレなんですけど・・・。新人向けという意味ではその辺りをターゲットに書いてはいるので、自分の思いが詰まってるいい本です。【ロジカルビート:堂前】


book_08話し方のマナーとコツ (暮らしの絵本)
ジャンル:マナー・コミュニケーション
同じ趣旨のことを言っているのに、意図と違った伝わり方をしてしまったり、会議中に「その言い方はどうなんだ?」と、本筋からずれて感情的な話になってしまうこと、あると思います。コミュニケーションを円滑にする言葉選びについて書かれていて、パラパラめくるだけでも面白いですよ。【PG QAエンジニア:森田】


book_09自分の小さな「箱」から脱出する方法
ジャンル:マナー・コミュニケーション
ゲーム作りは、どれだけ上手くチーム作業が出来るかが重要です。時には仲間と上手く行かずにギスギスしたり、ほかのメンバーが悪者に見えたりするかもしれません。そういう時にこそ読んでほしい一冊です。本当の原因が一体どこにあるか、自分を見つめなおすきっかけにしてみてください。(自分もたまに読み返しては反省しています…。)【ロジカルビート:家弓】


book_10世界一やさしい問題解決の授業
ジャンル:組織・問題解決・会議
問題に対して、手順を踏んで解決をする事の大切さを学ぶことができます。難しい問題に取り組む力をつければ、どんどん面白い事が出来るようになると思います。ぜひ本から問題解決方法を学んで、色々な事にチャレンジしてみてください。また、本の中で紹介されている「分解の木」という考え方ですが、プログラム作業を行う上で幅広く応用できるので、とてもオススメです。【ロジカルビート:家弓】


book_11The Goal ザ・ゴール ― 企業の究極の目的とは何か
ジャンル:組織・問題解決・会議
問題を解くための着目点と思考プロセスを学べる一冊で、漫画版もあります。かなり古い本ですが、「カイゼン」の入口として、プログラマー以外にもお勧めです。【PG 技術戦略グループ:大森】


書籍の他にも、便利ツールとして、WEB和英辞典や類語辞典(Thesaurus.com)、仕事術や生活術といったライフハック系ニュースサイト(lifehacker.jp)、プログラマー向け学習スライド(オブジェクト指向できていますか?)、Google検索の際のAnd/or/除外設定など、知っていたら便利だよねというページ(これで検索力アップ間違いなし!役に立つ10個のGoogle検索方法)などの情報交換を行い、今回の技術サロンを終えました。


:::主催者から:::

今回『ゲーム業界の技術者たちが選ぶ、新人に読んで欲しい本』を集めてみましたが、『勉強の入り口』として、面白いラインナップになったのではないかと思います。プログラマーだけではなく、他の仕事をしている方が読んでも面白いと思える本が挙がっているのは、とても興味深いところです。仕事をしていく上で、プログラミングの技術以外にも、色々と学ぶべきことがあるなぁ、という考えの表れでしょうか。

Webで多様な情報が得られる昨今ですが、やはり本は本で面白いです。まとまった文章を読むことは、『言葉』や『音声』を頭の中で『知識』や『映像』に変換する良い訓練になると思っています。人の話を聞いて、その内容を正しく理解できるようになるための、とても重要な訓練です。今回挙がった本が、その訓練を楽しく行う一助となって頂ければ幸いです。


Ohmoriプラチナゲームズ株式会社
CTO/技術戦略グループ グループ長
大森亘
Wataru Ohmori


カプコンにて『biohazard』(GC)、『鉄騎大戦』、クローバースタジオで『大神』の開発に従事。その後、プラチナゲームズの創立当初からゲームシステム全般を担当し、開発環境の構築を行う。2011年には、社内の技術をまとめ上げ、共通化を推し進める『技術戦略室』を立ち上げ、現在はCTO兼執行役員として、技術を中心により広い分野での活動を模索している。


Domae株式会社ロジカルビート
代表取締役
堂前嘉樹
Yoshiki Domae

ゲームメーカー数社を経て2008年にバンダイナムコゲームス(現バンダイナムコスタジオ)に入社。鉄拳シリーズでメイングラフィックプログラマーとして活躍する傍ら、執筆も手掛け、2012年には『ゲームを動かす技術と発想』(CEDEC2013著述賞を受賞)を出版。2014年に同社を退社し、フリーランスでの活動を経てロジカルビートを設立。『いけにえと雪のセツナ』ではグラフィック全般を担当し、講演や執筆活動にも精力的に取り組んでいる。2015年には『ゲームを動かす数学・物理』を刊行。

Kayumi株式会社ロジカルビート
テクニカルディレクター 
家弓拓郎
Takuro Kayumi

アークシステムワークスにて、『GUILTY GEAR Xrd -SIGN-』のリードプログラマーとしてプログラム開発全般を担当。(その他、代表作『「BattleFantasia』など) 2016年からはロジカルビートに参画し、テクニカルディレクターとして、「実装力とアイデアの融合」を推し進める同社の技術力に貢献している。

Takahashi株式会社ステアシステム
代表取締役
高橋伸夫
Nobuo Takahashi

フリーランスのプログラマーとして、数々のゲームタイトルの開発に参加。(『FINAL FANTASY零式HD』、『The Wonderful 101』、『MAX ANARCHY』など) 2015年にステアシステムを設立。Android/iOS向けゲームアプリ『ワギャン しりとりで勝負だ!』の企画・開発・販売や、PS VR向けゲームのUIデザインに協力するなど、活躍の場を広げている。