こんにちは、三流プログラマーのドンさんです。
『ベヨネッタ』では主にプレイヤーと敵キャラクター関連を担当していました。

今回、神谷Dとは久しぶりにチームを組むことになりました。前回は『デビルメイクライ』の時で、私が始めてプレイヤーと敵を担当した時でした。
当時まだ3Dの知識が全く無く、3Dの基礎を必死で勉強していた記憶があります。そもそもオリジナルゲーム製作自体が初めてで、敵の作り方などさっぱり解ってなかったですね。
オリジナルで作れることが楽しくて、好き勝手に色々作っていたことを覚えています。雑魚キャラの色を変えて個性をつけて色々種類を増やしたり、ライバルキャラの飛び回る剣の種類をどんどん増やしたりとか、暇さえあれば色々追加していたのを覚えています。

勝手に作ってしまうところが評価された(?)のか、その後も敵作りをさせてもらっています。だんだんこなれてきたせいか、チームが新しくなるごとに担当する敵の数も増えていきました。
『デビルメイクライ』の頃に担当した敵は1/3程度だったのですが、『バイオハザード4』では敵全部になり、『ゴッドハンド』ではプレイヤーと敵全部になっていきました。
今回の『ベヨネッタ』では新人に少し敵を任せたので全ての敵を担当していませんが、95%程度は担当しています。ついでにプレイヤーも担当しています。
もうかれこれ10年くらい敵を作ってきたことになるのですが、それなりに気をつけているポイントなどがあるのでちょっと挙げてみます。

○基本的に仕様書は無い物と考える
敵作りをする上で仕様書は重要なように思えますが、実際には仕様変更があまりにも多いために、ほぼ意味をなしません(最初の指針程度です)。
なので基本的には仕様書には頼らず、関係者による話し合いでイメージを固め、その後は私が好き勝手に作るということが多いです。
特に神谷Dは最初にしっかり考えるタイプではなく、唐突に思いつくタイプなので、臨機応変に対応できる心構えが重要です。

○出来るだけ早く画面上で動かせるようにする
敵作りでは頻繁にトライ&エラーが発生します。出来るだけ早く画面上で動かすことにより、方向性の違いなどによる作り直しなどのダメージを和らげることができます。
最初にしっかり考えておかないからトライ&エラーが多くなるのだと思われますが、根本的にゲーム内容が変わったりすることも多いので、速度で対応します。
それに早く画面上で動かせれば、より多く検証もできるのでクオリティUPにもつながります。

○理不尽な行動をする敵を作らない
例えばプレイヤーが攻撃ボタンを押した瞬間、回避行動やカウンター攻撃をするような敵って私は大嫌いです。
ゲーム中のプレイヤーが予備動作すらとっていないというのに、一体何に反応して回避しているんだコイツは、と思うのです。まさにコンピューターと戦っている気がして冷めてしまいます。
私が作る敵は、私の分身のつもりでいるので、私自身が反応できないであろうタイミングでは回避しないようにしていますし、逆にプレイヤーが反応しているのに避けれない攻撃などはしないように心がけています。
おじさんではありますが、それなりにゲーマーなので、結構反応しますけどね。

○パターン化は出来るだけ避ける
パターン化するとユーザーとしては攻略しやすいと思うのですが、実際面白いかというと作業感のほうが強いのかなと思います。それでも楽しいという場合、別の付加価値がある場合などではないでしょうか?
私は敵を作っている以上、自分が作っているものを楽しんでもらいたいのでパターン化は出来るだけ避けるようにしています。
プレイヤーがガード出来たりするのも、パターン化の温床となったり、ゲームが受身になったりするのであまり好きではありません。
『ゴッドハンド』を作っているときには相手だけガードが出来るのが理不尽だという声をよく聞きました。しかしプレイヤーにガードを入れたら多分単調なゲームになったのだろうなとも思います。それに『ゴッドハンド』ではガードブレイクがあるので、実は理不尽ではなくチャンスだったりします。
『ベヨネッタ』でももちろんガードはありません。

○人のプレイをこっそりしっかり見る
人のプレイを見てると、やり過ぎたところや、足りないところが浮き彫りになってくるのでとても参考になります。
ただ、見られているとハメ技を隠したりする人もいるので、こっそり見るようにはしています。(忍び足は得意です)
こっそりハメ技を使用している開発者を見かけたら、こちらもこっそり対策を練ります(許せませんね)。
ハメ技はパターン化と同じくゲームプレイを単純作業に変えてしまいかねないので、強い敵キャラは特に厳しく対策を練ります。
もちろん、発売されてしまったゲームでユーザーがハメ技を発見しそれを使用することに関しては問題ありません。
それは個人の努力の成果だと思いますので、頑張って探してもらえばいいと思います。しかし開発者がそれをすることは私は許しません。(許しませんとも)

思いつくところではこんなところでしょうか。他にも口先三寸でいかにやりたいことを押し通すかなど人には言えないようなポイントもあるのですが、社内の人間に警戒されてもこまるのでこれくらいにします。

『ベヨネッタ』では以上のことを踏まえつつ、できる限りやり応えのあるように作ったつもりです。
中でもライバルキャラのジャンヌ、巨大な爪を装備しているグレイス&グローリー、獣のようなフェアネス&フィアレスはかなりいい動きをしていると思います。
かなり手強いですが、プレイヤーのベヨネッタの性能も凄くいいので、ちょっと他では味わえないスリリングでハイスピードな戦闘が楽しめると思います。