はじめまして。キャラクターモデリングアーティストの小林です。フレッシュマンらしいフレッシュなブログにすべく、もぎたてのフルーツを片手に頑張ってお送りします。

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さて、本稿のテーマは「好きなことを仕事にする」です。

■仕事につくまで
私はもともと絵を描くのは好きでしたが、クリエイターとは何の関係もない大学を卒業した後、専門学校に通うという遠回りをしてこの職につきました。キャラクターモデラーを目指すようになったのは専門学校に入ってからです。その理由を端的にまとめてみるとすれば、“機能を伴った形”が好きだからと言えるでしょう。人間の体でも動物の体でも、植物でも機械でも、架空の生き物や道具であっても、目指した機能が結実している形はなんでも美しい。私はそう感じていて、それを追求して作る仕事がしたかったのです。

そういったことができる職業といえばキャラクターモデラー以外だと、エンジニア、工業デザイナーなど色々あると思いますが、私の場合は現実的な都合を考えるよりも、究極的にはその物の「らしさ」を作りたかったですし、色々なものが作りたかったのでゲームのキャラクターモデラーという職を選びました。プラチナゲームズを選んだのはディベロッパーという色んなテイストの物に関わることができる環境であるということと、また過去の作品のとんがり方を見て決めました。

応募にあたって、まず私がどんなポートフォリオを提出したのかを書きます。

版権物のキャラクターモデル1体、オリジナルの人間のキャラクターやモンスター、ロボット、ドラゴンなどを計5体、ハードサーフェスの練習で作ったバイクのモデル、学校の課題で賞をもらった能面のモデル、キャラクターデザインのラフ多数、石膏や人の骸骨、牛骨のデッサンという内容でした。オリジナルのモデルに関しては作る前に描いたデザイン画と、どんな意図でどのように作ったのかという方法論の説明もつけておきました。

すなわち、ポートフォリオを見る人に、そもそもこいつは何をやりたいんだという疑念を生ませないように作りました。少なくとも自分が何をやりたくて何ができるのかを明確にしておいた方が良いと思ったのです。

それが功を奏したのか、プラチナゲームズに入社することが出来ました。

入社後の研修中もキャラクターモデラーを希望していましたが、配属されるまでの一ヶ月間は平常心を保つために素数を数えてばかりいたことはいうまでもありません。配属が決まったときはとても嬉しく思いました。

■仕事についた後
配属されて最初に作ったモデルは中ボスクラスの岩のゴーレムでした。大きさと骨位置を決めたデータを元にZブラシで骨位置をずらさないように造形し始めました。最初からほとんどまるまる一体を任せてもらえるとは思っていなかったので、うれしいと同時に緊張もしました。

最初は就業時間という制約があっても一か月もあれば完成できると思っていましたが、好きでやっていたことと、プロとして製品に載せるデータを仕上げることは違いました。自分本位でデータをつくるのと、求められるデータをつくるということの差です。それはもうソリとスノボーくらい違います。ソリではとても滑れない斜面がありますからね。

そんなことは当然だろうと思うでしょうが、他人の思い描く印象、クォリティを達成する、またはそれ以上のものを作るにはまずその人の意図を汲み取らないといけません。任されたキャラクターの、モデルとしての完成像を思い描けずに漫然と作業してしまうと、いつまでも求められている絵に近づけずに迷走しがちになり、時間がかかってしまいます。

「もっと資料をたくさん集め、作品全体の毛色を観察して作りなさい」と先輩にアドバイスを頂いたり、助けられながら一ヶ月半程かかってなんとか完成させることができました。ゲームの中で動いているのを見たときには、とても感動しました。

しかし一方で印象を掴んでつくることには自信があっただけに、プロの基準からすると自分がスイートコーンのように甘かったと気づきました。

入社後半年以上経ったいまでも、周りの先輩方を見ていると、やはり自分の技術やクォリティに対する意識の拙さを痛感することがあります。もしかしたら向いていないかも知れないなどと考えて、日の光が届かない自宅の部屋の片隅で、壁の凸凹の数を数えてしまいそうになる日も時にはあります。

それでも作ることは楽しいですし、自分の作ったモデルが動いてゲームに載っているのをみるとやりがいも感じ、好きなことを仕事にできて良かったと思います。

全体的になんとなくじっとりとしたフレッシュ感になってしまったのは途中で邪魔になって、もぎたてのフルーツを置いてしまったからです。すいませんでした。