プラチナゲームズ代表の佐藤です。

10月です。すっかり秋になりました。

新型コロナウイルス関係の情勢は一進一退といったところであり、相変わらず予断は許さないとは思います。しかしワクチン接種は進み、治療薬の実用化も見通しが見えてきました。東京・大阪の緊急事態宣言も解除され(10月4日現在)、飲食店に賑わいが戻ってきたと聞きます。大きな傾向としては良いほうに向かっていると言っていいでしょう。ほんの少しですが、気持ちはポジティブになってきました。

さて、「ポジティブに・・・」ということで、「コロナ禍が明けたらゲーム業界はどうなる?」ということをちょっと考えてみました。

ゲーム業界は、コロナ禍であったこの1年半くらいの間、けっして沈滞ムードではなく、比較的元気な産業でした。新作ソフトはよく売れたようですし、ある調査では、2020年の世界ゲームコンテンツ市場は前年比約130%だったというデータがあります。自宅に居ながら楽しめるビデオゲームは、むしろリモート生活のなかで人々を支えることができたと自負しています。したがって、「コロナが明けたら反転攻勢」といったようなことではないですね。引き続き元気にやって行くだろうと思います。

しかしユーザーの皆さんには見えないところで、ゲーム業界のこの1年半には苦労があったと感じています。見えない苦労。あくまでも私の観察ですが、その最たるものは社員の外出自粛生活によるリアル体験の減少です。2020年春の新入社員と2021年春の新入社員は入社するなり在宅勤務(時期によってはローテーション勤務の組み合わせ)という状況ですから、いろんな「実物」を見る機会が減っています。従来であれば、海外に取材旅行に行くこともありましたし、国内外のゲームショウの視察ではユーザーの「熱」を持ち帰ってきていました。また、直接的な仕事でなくとも、スポーツでも演劇でも、実物を観る機会。これが減少しています。「コロナが明けたら」、まずは社員をリアル体験に駆り出して、ゲーム作りに活かせるようにしたいですね。

屋外型の娯楽施設は、「コロナが明けたら反転攻勢」の産業でしょう。テーマパークやスポーツ観戦。これらは、外出自粛の状況下では営業の縮小を余儀なくされたわけですが、コロナの心配がなくなれば活況が戻ること間違いないでしょう。そしてこうした動きが、インドアのゲーム産業にとってマイナス要因となるという見方もあります。「お客さんを取られてしまう」というわけです。確かに短期的にはその傾向はあるかもしれませんが、スポーツが盛り上がればスポーツのビデオゲームも人気が出るし、テーマパークでゲームがモチーフのアトラクションを体験したらゲームもやりたくなる、元来そのような構造にありますので、相乗効果で盛り上がると思ったほうがいいでしょう。そもそもゲームの開発者にも、こういった屋外型娯楽は大好きな人が多いですしね。

コロナ禍の間に初めてゲーム機を買った人も多いかもしれません。また、初めてオンラインゲームを体験した人、初めてゲームのダウンロード購入をやってみた人もたくさんいるような気がします(あくまでポジティブ・シンキングの続きです)。つまりゲーム人口と体験機会が増えています。こうなると市場拡大してゲームソフトがたくさん売れるようになるはずですが、従来ならゲームをする習慣がなかった人まで参加したということになると、いろんな属性の人が増えたと言ってよいですから、あらたなゲームカテゴリーが誕生する可能性があります。これもまた楽しみです。

ポジティブ・シンキングは止まりません。

こうした「コロナが明けたら・・・」は現時点では想像ですが、すぐそこに来ているような気もします。頭の中ではポジティブに、でも当面は油断しないで感染対策をして頑張っていきましょう。

ではまた。

佐藤賢一

佐藤 賢一
代表取締役社長

1962年 東京都生まれ。
1986年に株式会社伊勢丹に入社後、1996年にゲーム業界に転身。株式会社セガ・エンタープライゼス(現:株式会社セガ)にて、ドリームキャストのマーケティング業務に携わったのち、2000年に株式会社キャビア(現:株式会社マーベラス)の設立メンバーとして招聘され、会社運営全般の業務に携わる。2006年に有限会社ODD(現:プラチナゲームズ株式会社)を設立。取締役/管理本部長として、経営部門全般の責任者を務め、2016年4月代表取締役に就任。