こんにちは!キャラクターモデリングアーティストの松下です。

先日開催した、片桐裕司さんによる特別セミナー(キャラクターモデリングアーティスト向け)が大好評だったため、再びプラチナゲームズにお招きし、アニメーターとコンセプトアーティスト向けの追加講義を行っていただきました!

その様子を再びレポートさせていただきます!!
(>>>前回のレポートはこちら<<<)




キャラクター概論:キャラクター「らしい」ポージングとは?

今回は、『キャラクターの雰囲気の重要性』とはどういうことなのかという講義に加えて、どうすれば『そのキャラクターらしいポージング』になるのか、ということに焦点を当てて講義が進められました。ポージングする上での“流れの方向”や“重心の位置”を意識することの大切さを、片桐さん自身の彫刻を見ながら解説していただき、『ポーズを取っている』ことと『ポーズになっている』ことの違いについて、興味深い話を伺うことができました!




造形デモ

続いては、NSPという特殊造形用粘土を用いて全身を彫刻するデモンストレーションです。即興で造形していただけるということで、参加者みんなでお題となるアイデアを出していきます。

ここから色々削られて、決まったお題は、『アメリカ人男性で主役のヒーロー』になりました。

さて、片桐さんによるデモンストレーションのスタートです!

先ほど学んだ“流れの方向”や“重心の位置”を自分自身の身体を動かして確認しながら、片桐さんの作業を見せていただきます。

受講者からの様々な質問に回答しつつ、筋肉の流れや関節の位置などについても一つ一つ丁寧に解説していただき、すごいスピードでどんどん出来上がっていきます。

そして完成したものがこちら!!

「今日から君も○ベンジャーズだ!!」

作り始めてからわずか1時間でここまで作っていただきました!
細かいディテールや情報がなくても、彼がヒーローであることを説得させるポージングや雰囲気があれば、見る人はそれを補完して見てくれるということですね。どこから見ても主役級のヒーローで、それをまさに実感することができました。

今回は、アニメーターとコンセプトアーティスト向けの内容ということで、どういった内容になるのだろうとキャラクターモデラーとしても楽しみにしていたのですが、キャラクターを作り上げるという点で両職種とは、共通・共感することがあり、より掘り下げたキャラクター造形の話が具体的に聞けて、とても勉強になりました!質疑応答の際も、アニメーターやコンセプトアーティスト特有の質問があり、自分と違う着眼点にハッとさせられるなど、とても有意義な時間だったと思います。片桐さん本当にありがとうございました!!




受講者の感想

人体造形をあのスピードとクォリティで作り上げるのを見られたのは貴重な経験でした。立体をどう意識しているのかが、過程や手先の動きから読み取れて、動画越しや3DCGのチュートリアルなどでは捉えられない感覚だったので、すごく新鮮で絵の勉強になりました。

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元々、アニメーターにもいい勉強になると期待してこの講義を受けたのですが、アニメーターこそ勉強すべきだと感じる、とても内容の濃いものでした。自分の日々の仕事や作業に当てはめて考えたり、感じたり、共感できることが多く、とても勉強になりました。

  • っぽさを出す。ディテールだけじゃなく本質、雰囲気
  • 「見えてる」と「認識する」は別
  • クライアントが求めているものの根本を見出す。言葉の意図、なぜそう言っているのかを考える
  • 雰囲気とは、見ないで思い出せるか

などが、特に「なるほど」と思いました。ディレクターやクライアントが常に完璧にイメージを持っているとも限らないので、そんな時に、寄り添って提案できるデザイナーになることが、デザイナーとしてもう一つ二つステップアップすることなんだと考えさせられました。相手の言うことをしっかりと聞き取り、それだけを形にするのではなく、そこに僅かなのか爆発的になのか、自分の味を足す― 世界のトップレベルの監督やクライアントとやり取りをされている片桐さんを目の当たりにし、それが本当にすごいことなんだと感じました。

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片桐さんの造形デモンストレーションの質の高さは勿論、「キャラクター」とは何なのか、という根本的なところから始まり、身体的特徴、ポーズや背景、雰囲気などのキャラクターへの影響や決定力、また、キャラクターの骨格がどれだけモデリングの時点で重視されるべきものなのかが再認識ができて、とても有意義且つ面白いセミナーでした。参加者から出た質問への返答も非常にフランクに簡潔に答えてくださり、浮いたり、納得がいかないまま終わることもなく、とても満足です。

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流れの方向、重心の動きを意識することで勢いが生まれること、目的を考えて造形することで、説得力のある形になることなど、片桐さんの作品や、実際にその場で過程を見ながら学ぶことができてとても勉強になりました。自分もただかっこよさのあるポーズをつくろうとするのではなく、今にも動きそうな、躍動感や生命力の感じられる造形を目指したいです。




おまけ

腕の角度や身体のひねりで全く違う印象になるということを実際に見せて下さいました!笑


katagiri片桐裕司 Hiroshi Katagiri 
1990年、18歳の時渡米し、19歳からスクリーミング・マッド・ジョージ氏の工房で働きだす。その後フリーランスとなり様々な映画TVのキャラクタークリエーションに携わる。98年に TVシリーズ『Xファイル』のメイクアップの仕事でエミー賞を受賞。 
2000年から2006年まで『ターミネーター』や『エイリアン』『ジュラシックパーク』のキャラクタークリエイションなどで有名な、ハリウッドのトップの工房であるスタンウィンストンスタジオのメインアーティストの一人として活躍。『A.I.』『ジュラシックパーク3』『タイムマシーン』『宇宙戦争』などに携わる。その後、再びフリーランスに。現在は、様々な映画のキャラクタークリエイションに加えて、日米両国各地で彫刻セミナーを開催するなど、後進の育成にも精力的に取り組んでいる。
>>>片桐裕司 彫刻セミナー<<<

katagiri松下 祥風 Yoshikaze Matsushita
大阪芸術大学を卒業後、2014年にプラチナゲームズに入社。最新作『NieR:Automata』では、敵キャラクターのモデリングを担当する傍ら、ディレクター・ヨコオタロウ氏が着用するマスク、通称“エミールヘッド”を制作するなど、モデリングの枠を越えて活躍している。