※この記事は一部ネタバレを含みます。

こんにちは。堀田星司です。『ベヨネッタ3』ではコンポーザー、アレンジャー(編曲)、そしてカットシーンの音楽ディレクターを務めました。今回は『ベヨネッタ3』のカットシーンにおける音楽について、紹介させていただきます。

まずは、こちらの動画をご覧ください。

 


カットシーンの音楽コンセプト


『ベヨネッタ3』のカットシーンでは、2つをテーマにコンセプトを組み立てていきました。

  • ベヨネッタ1,2とのつながり
  • メインテーマ『We Are As One』のメロディを活用した、クライマックスへの暗示

 


ベヨネッタ1,2とのつながり


『ベヨネッタ3』では、デザインやゲーム性が大きく刷新され、フレッシュな感覚で楽しんでいただける内容になったと思っています。その分、シリーズを通して遊んできてくれたユーザーに、「懐かしさ」を感じてもらえるような演出を考えました。

EV002-2 It Might As Well Be Routine

 

ここでは初代『ベヨネッタ』のメイン戦闘曲「Theme Of Bayonetta – Mysterious Destiny」のモチーフに、Henry Mancini(『ベヨネッタ2』で使用された「Moon River」の作曲者)風のストリングスアレンジを施したサウンドで、神谷さんのクレジットが出てくるあたりから流しています。1作目からプレイしてきてくださった皆様に、かすかなノスタルジアを感じてもらえたら、というアイデアです。

EV002-5 船上パーティにて

 

『ベヨネッタ2』の戦闘テーマ曲「Theme Of Bayonetta 2 – Tomorrow Is Mine」のモチーフを、サックスソロとストリングスオーケストラでアレンジしています。当初は船上のスピーカーから流れる体の、所謂ダイエジェティック(※1)な演出で音楽を再生する予定でしたが、宮田ディレクターから「ここは音楽押しで」との指示を受け、後半嬉々としてボリュームを上げています。

(※)作品世界の中で鳴っていると解釈される音源。一般的なBGMとは異なり、作中の登場人物にも聞こえているとされるもの。

これら2つの演出は、過去作との繋がりを感じてもらう意味合いだけでなく、ゲーム終盤に発生する「あのイベント」の暗示にもなっています。

 


メインテーマのメロディを引用した
クライマックスへの暗示


開発最初期に制作されたメインテーマ「We Are As One」では、今作だけでなくベヨネッタシリーズ全体の世界観が表現されています。カットシーンの要所要所に、この曲のモチーフをちりばめることで、ラストシーンをより効果的に演出することを目標にしました。

EV002-3 予感 A

 

これから起こる波乱を暗示するために「EV002-3 予感 A」では本作のテーマ曲「We Are As One」のモチーフを引用しています。

EV057-2 ヴィオラとの会話、再び

 

獣人の正体を知ったベヨネッタとヴィオラによるシリアスな会話を、メインテーマ「We Are As One」のメロディを引用して表現しています。

EV084-1 繰り返す別れ

 

βローサとの切なく悲劇的な別れのシーン。「We Are As One」のモチーフを、「Fly Me To The Moon」のコード進行でアレンジしています。曲の最後では、同じく「We Are As One」のイントロ部分を引用することで、闇夜に沈むβローサの姿が、ベヨネッタが迎える結末を暗示するように演出しています。

EV105-2 ルカとの会話 B

 

シンギュラリティ最終決戦前のベヨネッタとルカの会話シーン。ここでも冒頭から「We Are As One」のモチーフを引用しています。また、このカットシーンの終わりからインサートされる「Al Fine」も同じモチーフを引用した楽曲になっているため(※2)、「We Are As One」が流れるクライマックスシーンへの布石になっています。

(※2)詳細は【魔女の解体新書】BAYONETTA 3の音楽③ Al Fine をご覧ください。

 


おまけ


EV002-7 未知なる襲撃 A

 

押し寄せる津波と逃げ惑う人々、またしてもボコボコにされるエンツォの新車…といった阿鼻叫喚のシーンとは対照的な、静かに始まるサスペンス調の曲を作曲しました。ストリングスがメロディを演奏し始めると、「Fughetta」と呼ばれるクラシック曲の様式で曲が進行します。語源であるラテン語「fugere」は「逃走」という意味を持ち、逃げ惑う人々、というシチュエーションを暗示しています。

最初の津波のシーンからテンションの高い曲をあててしまうと、画面やSEと喧嘩してしまい、印象がぼやけてしまいます。なので、ベヨネッタが津波を見上げるカットで一度音楽を完全に引き、そこから少しずつ緊張感を煽っていく手法を取りました。宮田ディレクターから一発OKを頂いたときは嬉しかったですね。

 


最後に


質、量ともにシリーズ最大となった『ベヨネッタ3』のカットシーン。ユーザーの皆様にとって、充実したゲーム体験を得る一翼を担えたなら幸いです。

 

BAYONETTA 3 ORIGINAL SOUNDTRACK

『BAYONETTA 』シリーズ最大規模となる、 CD8枚組、全250曲以上収録の超大作サウンドトラック。

公式HPはこちら(発売中):
https://www.wave-master.com/ent/bayonetta3-ost/

【 商品情報 】
商品名 :BAYONETTA 3 ORIGINAL SOUNDTRACK
発売元 :WAVE MASTER ENTERTAINMENT
権利表記 :© Nintendo © SEGA Published by Nintendo

 

堀田 星司
Seiji Hotta

2010年からフリーランスの作曲家としてTVアニメ、CM、ゲーム等の音楽を手掛ける。2019年にヨーロッパに渡り、Film Scoring Academy of Europeで映画音楽を学ぶ。2020年にプラチナゲームズに入社し、『BABYLON’S FALL』にコンポーザーとして参加。