現在プラチナゲームズでは、開発力の強化を目的とした「Unreal Engine(※1・以下、UE)セミナー」を開催しています。全13回を計画している同セミナーについて、運営メンバーに展望や狙いを伺いました。

黒岡 まずはセミナーを開催するに至った経緯をお願いします。

山口 弊社では自社エンジンでの開発を主に使用していますが、一方で現在のゲーム業界を見渡した時に、これから弊社がチャレンジすべき多くの開発が「これはUE必須だ」ってなったんです。その状況を開発マネージャー陣で話し合ってる時に、雑談ベースで「セミナーでもしたいね」と。

黒岡 現状UEに不慣れだから、みんなで勉強しようという流れですね。

山口 はい。ただセミナーを開催するだけでなく、せっかくなら運営委員会をつくってより一層会社を盛り上げていきたいなと思い、UEの経験に長けた社員を中心に声をかけてこのメンバーが集まりました。

羽賀 わたしは昨年の秋に初めてUEをさわったばかりだったので、声がかかったときに正直驚きました。けれど、最初のつまずきポイントなどを初心者ならではの視点で教えられると思って、ゲームデザイナー(プランナー)として運営委員会に参加しましたね。

黒岡 業界歴やセクションを超えてさまざまな取り組みに多様なスタッフが参加するのがウチのおもしろいところですよね。今は第4回が終わったばかり(取材時点)ですが、このセミナーを経てプラチナゲームズはこの先どう変わっていくと思いますか?

遠藤 僕が感じるUEの一番の魅力っていうのは、全く1文字もコードを書かずにゲームを動かせるという点です。たとえば自分のようなアーティストだけでもプロトタイピングまでの作業を完結する事だってできてしまう、というのがすごくいいなと。1人での作業ならblender(※2)等も選択肢に入ると思いますが、チームでの制作なら断然UEがいいですね。他の人がつくった背景モジュールなどを使用して、新しいコンセプトのステージをつくったりとか。今回の一連のラーニングを通して、やりたいことを実現する選択肢としてUEも使えるようになっておけば、組織全体として量と質の両方を向上できるんじゃないかと思います。

羽賀 ゲームデザイナーとしてはイメージしたことをテキストだけで伝えるというのはすごく難しくて、それに対してUEで動いているものを見せられるとイメージ共有が一気に捗るんです。

黒岡 特定のセクションやスタッフだけが恩恵を受けるというものではないんですね。

熊谷 そうですね。さらにいうと、今後さまざまな機会をいただいていくなかで、他社さんがUEでやっていることを拝借することもできちゃいます。そのためにも今はしっかり学んで、実践経験を積まないといけないフェーズです。ゆくゆくは我々がつくりたいものにぶつけられるようになりたいですよね。

黒岡 UEのことは開発部じゃなくても興味があれば教えてもらえるんでしょうか?

遠藤 はい、大丈夫ですよ。「超初心者の質問OK」のスタンスです。セクションの壁をつくらずに熱意があれば取り組んでいけるというのは、弊社ならではの強みだなと思います。

熊谷 本当にゲーム開発に熱意を持っている人が多い会社ですよね。このセミナーにもすぐ関心を持って飛びついてくれたりだとか、ものづくりに対して純粋に取り組む姿勢が随所で感じられる会社だなと改めて感じましたね。

黒岡 セミナー内での質疑応答も活発ですよね。経験値の高いベテラン社員でも、疑問点は率先して手を挙げて質問していたり。

熊谷 ウチの前向きさを活かして習熟度を上げつつ、目指すところの一つとしては、属人化しているところを減らしていきたいんです。何か問題が起きたときに、「Aさんじゃないと解決できない」じゃなくて、「BさんやCさんも解決できるよ」となるだけで、開発の安定感が変わってくると思います。ウチにとって今がとても大事なタイミングなんですが、これを面白いと思ってくれる仲間が増えると嬉しいですよね。

※1 Epic Gamesより開発されたゲームエンジン
※2 オープンソースのCGソフトウェア