『NINJA GAIDEN 4』アートディレクターの西井です。

今回はエネミーデザインについて、ラフやデザイン画などと共にご紹介させていただきます。

エネミーはアクションゲームにおいて主人公と同じか、場合によってはそれ以上に重要な要素です。そのデザインともなれば、視覚情報としてある程度は整理されている方が望ましいと考えます。

特に本作のようなとにかくスピードが速く敵の量も多いゲームは、パッと見て瞬時に判断できないとプレイの気持ち悪さに繋がってしまいかねないので、気が抜けません。
既に公開されている3つの敵勢力も、開発初期は厳密に分ける予定ではありませんでしたが、制作の過程でプレイヤーの基本アクションが定まってきてエネミーの量産に入る際、デザイン的にもまとめた方がいいな!と整理に舵を切っています。

 

デザインの話なので結果としてはまあ大体見ての通り……ではあるのですが、せっかくなのでいくつか初出しの画像も持ってきました。

開発当時の社内向け資料を皆さんにお見せできる形に編集したものなので、前回・前々回のアート記事同様に製品版とは差異があるものも多いです。ご了承くださいね。

それではどうぞ!

龍神党はゲームを開始して最初に対峙する敵、且つ本作で初めて登場する陣営です。

敵デザインを分類・整理する前から龍神党尖兵(画像一枚目)がいたので、このデザインをベースにしています。

主人公との対比でキーカラーを白+水色にしたことで、結果的に血が映えて、より凄惨な画を作ることが出来ました。本作が血塗れである、という印象づけに貢献したと思います。こういう、ある角度からの一案で他の問題も解決/改善してしまうパターンはとてもスッキリしますね。

装備やデザインの傾向としては、人間の組織ですので人型共通装備をベースに武器や兵器でバリエーション幅を持たせています。同じ組織である事を示すために白い装甲や金属部は同じ材質を使用、デザインも三角形や直線のパターンを多用。装備を統一する・所属を明らかにする……というのは人間的な発想ですね。統一感が特徴たり得るのかも。

中には図体の大きな者もいますが、比較的異形度は低めです。

個人的には人型エネミーとのスタンダードな戦闘が楽しめる勢力だと思います。こういうのって基本が一番面白かったりしますよね。

妖魔。こちらも本作からの新規勢力ですね。

“一見神聖さ、あるいは愛嬌があるのに容赦なく襲い掛かってくるトリッキーさ”のあるエネミーたちが属しています。ゲームとしても何かしら一芸に秀でたタイプが多い種族ですので、初対面では戸惑う存在かもしれません。

役割としてはいわゆる味変エネミーです。基本のアクションに慣れてきた頃に追加投入される子たちなので、龍神党とは明らかに違う雰囲気や動きで「なんだコイツ」感が出るようにしています。

元々SFメカのみと戦うシリーズでもありません(寧ろシリーズとしては化け物っぽいやつを斬った方が自然)し、せっかく舞台を日本・東京と定めているし、ということで

  • 生物/無機物が入り混じっても違和感がなくバリエーションを出しやすい
  • それなりに受け入れられる土台(知名度)がある
  • 和風と相性が良い

諸々の条件にちょうどよかった“妖怪”をモチーフにしています。

魔神と分けたのは性質や設定的な都合があったためですが、これはまた別の機会に…というか本編を遊んでいただければと思います。あまり喋りすぎてもね……!

魔神はシリーズおなじみの勢力ですが、そこそこの数の新規デザインが必要でした。

要求される役割がある程度定まっており、既存の敵を無理に当てはめてしまうとシリーズを長く愛してくださっているファンの方ほど違和感が出るかも……という判断です。とはいえデザインとして魔神の特徴の攻撃性は失いたくなかったので、妖魔のような愛嬌とか神聖さは控えめ、という方針は最初に決めてデザインしています。

前作からの続投エネミーに関しては、ユーザーの皆さんと同じく『NINJA GAIDEN 2 Black』の存在を知らなかったため(当然ながら機密情報なので)10年前のデザインのアップグレードってどうするんだ!?と頭を抱えました。思い出補正とかもあるし。

最終的に他勢力と特徴が被るのも避けたかったので、魔神全体を鱗や角、爪などで生物としてより強靭にするようなイメージでディティールを上げる方針にしました。他とぶつからないように伸ばす、という点でなかなか上手くハマったのではないかなと思います。

ゲームにおける“ボス”は特別な存在であってほしいものです。

やはり物語的にもテンションの上がりどころですし、作る側視点でも他より手間をかけられて嬉しいエネミーでもある……!

前述の各勢力のデザインラインに則りつつ記憶に残る特徴を持つ強敵、というデザイン難易度を一段上乗せした仕事になりましたが、なかなかユニークなデザインが揃ったと思います。ボス、月虹の女狐(げっこうのめぎつね)。月光じゃなくて月虹なところがポイントらしいです。

するん、と滑らか・しなやかな動きの美しい妖魔で、それまで戦っていた龍神党兵のスタンダードな動きとは異なるリズム感が特徴のボスです。

彼女(?)はユニークデザインボスとして初期に制作されたエネミーですね。且つ序盤のボスである事も決まっていたので、チュートリアルではなくとも『NINJA GAIDEN 4』におけるボス戦とは、の試金石でもありました。

制作初期はこのチームではどうやってエネミーを作っていくべきか、も手探りです。全くのゼロからではないですが、チームによって毎回微妙に変わります。ゲーム制作における「使い回し/流用」って、思われているほど万能ではないんですよね……大抵使えない……。

ボスのデザインは全体的に雑魚エネミーと比べて行動も多彩ですし、HPを半分削られてからの本気状態もありますので、ビジュアル・ギミック共に更にひとネタ入れることを意識しています。

どのボスも忍者vs〇〇の図をイメージしているので、それぞれモチーフが上手く伝われば嬉しいです。

ボスデザインもう一体、龍神党の将カガチです。

隻腕で背には巨大な太刀を背負っています。本作は顔が全面ハッキリと出ているデザインが少ないので、貴重な(素直に)人間デザインのキャラクターです。

彼に関しては、龍神党という組織立った人型エネミーの頂点はやはり“侍”だというチーム内の共通認識と、忍者vs侍はなんぼあってもいい、という声からデザインが始まっています。忍者と侍、黒赤と白青、若さと熟練、正義と悪あるいはその逆……と、リュウとはまた少し違う角度でヤクモと対の要素を詰め込みました。

スタンダード/ストレートであるがゆえに、どういった捻りを加えるかという点は少し悩みましたが、どんなボスになったのか是非戦ってお確かめください!

おまけ。色々な場所にいる謎の生物です。かわいいと言えないこともなくもない……??

ゲーム中では近づいて捕獲することが出来ます。収集している者もいるようですね。

捕獲時のヤクモの一言がイイので、探して聞いてみてほしいです。

ついに発売月となりました。そわそわしちゃうな~。

今回ご紹介した彼らと剣を交えるまでもう少し。超忍の皆さんがボコボコにするのかされるのか……いろんな意味で楽しみです。

ちなみに私は妖魔の提灯の子が苦手で未だにボコボコにされています。もう数年単位の付き合いなのに。

引き続き『NINJA GAIDEN 4』をよろしくお願いいたします。

※前回同様にブログ用のお絵かきです。かっこいいUI素材があるとイイカンジに配置できて有難いですね。


西井 智子 (Tomoko Nishii)
2011年にプラチナゲームズ入社。エンバイロメントアーティストとして『The Wonderful 101』の制作に携わった後、コンセプトアーティストとして複数のタイトルに参加。『NieR:Automata』では絵本パートの一部原画を担当し、『ベヨネッタ オリジンズ:セレッサと迷子の悪魔』ではアートディレクターとしてキャラクターデザインおよびビジュアル全体の監修を務める。最新作『NINJA GAIDEN 4』ではアートディレクターとして一部キャラクターデザインとビジュアル監修を担当する。