ども。
稲葉です。
本作『メタルギア ライジング リベンジェンス』では、開発プロデューサーを担当しております。

月日の経つのは早いもんですね。
思い起こせば、昨年12月にロサンゼルスにて開催された『Video Game Awards 2011』の大トリにて初出という、これ以上無い大々的・かつ衝撃的な発表を行った本作ですが、この時に初めて『制作・プラチナゲームズ』だということが世に明らかになりました。もう、賛否両論の嵐嵐嵐。ハリケーン級の衝撃波を伴って、ニュースが世界中を駆け巡りました。


あれから1年経ちましたが、つい昨日の事のようにしか思えません。
本当に本当に、月日の経つのは早いものです。
ゲーム制作やってると毎回のように思う事ではあるのですが、このプロジェクトは特に異常な早さで時間が過ぎ去っていったような気がします。

通常のゲーム制作では、制作終盤の忙しさがハンパではありません。文字通り、一分一秒でも惜しいという状況が続きます。その反面でスタート直後はちょっとゆったりしている事が多いのですが、本作ではそんな悠長な事は言ってはいられませんでした。みじんも。

例えるならば。
『チーム全員が布団から無理矢理引きずり出された直後に寝ぼけまなこで戦闘機に乗せられてカタパルト発進から最高速到達まで数秒』
みたいな始まり方をした(させた?)プロジェクトですかね。

わけもわからず全身に数Gの重力がかかってパニック真っ最中!!…ってな状態のスタッフ達を集めて『Video Game Awardsで初出だから、トレーラー作るんだよ!』と話したときのアノ空気は今でも忘れられませんねぇ。まあ、今となってはスタッフ皆の中でも良い思い出…にはまだなってないと思います。ハイ。
そんなカタパルト急発進前夜のお話し(そもそも小島プロダクションと仕事をする事になったキッカケ)については、いろんなメディアのインタビューでも答えていますし、こちらのインタビュームービーをご覧頂ければと思いますので、省略します。

大抵の事には驚かないウチのスタッフでも、ある日突然に『メタルギアライジングを作るぜ!』と言われた事は衝撃的だったと思いますし『ディレクターやらない?今すぐ返事ちょうだい』と言われたケンジの衝撃も大変なモンだったと思います。

でも、このプロジェクトは僕がどうしてもやりたかったのです。
最初に小島監督にこのお話しを頂いた帰り道に、頭の中では実現に向けて色々と考えていたのを今でも覚えています。メディアのインタビューでは『ワクワクしてしまったから』という答えをしていますが、これは決して刹那的な感情を指しているのではありません。

プラチナゲームズが作り出すゲームコンテンツを、僕なりに端的に表現するならば『プライドと信義』の塊だと考えています。

自分たちが作るから、このレベルまで到達できるんだ!という、プライド。
自分たちが到達すべきレベルを、常に更新し続けたい!という、プライド。
それらを届ける相手であるユーザーに対して裏切らないという信義。
それらの純度を、どこまでも高めていきたい。
それが、プラチナゲームズの旗印です。

このプロジェクトの場合は、小島プロダクション・メタルギアファン両方に対してきちんと応えなければいけないという…大きな大きなモノがそこにさらに加わってきます。
アクションゲームメーカーとして評価をしてもらい、僕たちを頼ってくれた小島プロダクションの期待にキッチリと応える。
そして何よりも、メタルギアファンの気持ちに応え、期待を超えるモノを作り上げる。
その結果として、自分たちが提供できる『遊び』の枠そのものが広がってゆく。
そういう『新たな信義』が、このプロジェクトには存在します。
だから、どうしてもやりたかったんです。どうしても。

でもゲームというのは遊んでナンボのものです。
制作・プラチナゲームズでドーーーーーーン!!…という大々的な発表をやろうとも、作ったモノが面白いか面白くないか。結局それに尽きるんですよね。

VGAでの発表は映像だけでしたが、その後に開催されたE3や東京ゲームショウでは数多くの試遊台が出展され、多くのユーザーの方々にプレイをして頂く事ができました。
その結果、ありがたい事に『面白い!』という声を多数頂く事ができまして…そこでようやく、ホンの少しだけですが前述の『信義』の道を歩けているという実感を得る事ができました。まだ、ホンのホンの少しですが。

僕のブログではだいぶ端折っていますが、発表してからの1年間も恐ろしく密度が濃い、トラブルと涙と笑いと怒号に充ち満ちた日々でした。密度が濃すぎて、開発スタッフ達は3倍くらい歳とったんじゃないですかね。
その辺りの内情は、この後に続くブログでスタッフ達がいろいろ書いてくれる事でしょう。

まだ発売まで少し時間があります。

『あー。この人達、こんな事考えながらライジング作っていたんだー…』

という空気感みたいなものを、この開発ブログから感じ取って頂きつつ、発売をお待ち頂ければと思います。

では、また!