『ベヨネッタ2』でクライマックス・シチュエーションのプランニングを担当した佐藤広野です。

今作も前作に負けないくらいド派手なシーンが満載ですが、それが実際どのような過程で作られていったのか、実例を挙げてご説明していきたいと思います。

【その1】お題
『ベヨネッタ2』のクライマックス・シチュエーションの中で、私が初めに取りかかったのが、巨大な竜のような見た目の『グラマー』というボスとの戦いでした。

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※ディレクター橋本が描いた『グラマー』のデザイン画

★このボスを使ってド派手なシチュエーションを組み立てる

というのが、私に与えられた最初のお題だったのです。

【その2】シチュエーションのアイデアを練る
さて、このグラマーのボス戦ですが、実は、私が取りかかる時点で既に2つのテストバージョンが存在していました。

ところが、どちらのバージョンもディレクターの橋本は満足しておらず、ある程度作り直す前提で考えてほしいということでした。

このように開発中はテスト段階でいろいろな問題にぶつかるのですが、私は常に以下のことを踏まえて取り組むようにしています。

★イマイチなものは、ちょっと直すくらいでは良くならない。

★そもそも問題の前提が間違っていることがある。

★作ってくれたスタッフには悪いけれど、つまらないものは潔く作り直す。

さて、このグラマーのテストバージョンの問題点は『スピード感と迫力が足りない』ということでした。
そこで思いついたのが、前作『ベヨネッタ』でも使われていた『サーフィン移動』です。

前作では、巨大なボスとの戦いで水面を移動するのに使われていたサーフィン移動ですが、グラマーを追いかけるシチュエーションでもこれを使用できないかと考えたのです。

ちなみに、ベヨネッタが出会う『謎の少年』が天使に付け狙われている、という設定はこの頃から存在していたので、捕えられた少年を助けるために追いかける、という理由付けは特に問題ありませんでした。

あとは、サーフィンをするために(当たり前ですが)水の上にいる状況を作らなければなりません。最初は渦潮のようなものを考えていたのですが、それは前作でも同じようなシチュエーションがあったので、別のやり方を考える必要がありました。そして、渦潮から連想していくうちに

★グラマーは竜のような見た目だから、水の竜巻を起こせるというのはどうだろう

というアイデアが浮かんだのです。

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※渦潮を想定していた時期にコンセプトアーティストの菅さんに描いてもらったアート

【その3】アイデアを実際のゲームに落とし込む

『水の竜巻』の側面を『サーフィン移動』『グラマーを追いかける』
このようにシチュエーションの骨組みができたら、次は実際のゲームに落とし込む作業です。

ここで大切なポイントは、

★せっかくのアイデアをゲームに落とし込む段階で台無しにしない

ということです。

幸い、アイデアが固まった時点で竜巻の外側でサーフィンする素晴らしいコンセプトアートをデザイナーの菅さんに描いてもらえたので、ゲーム画面のイメージはこれを再現しよう、ということになりました。

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※水の竜巻の側面をサーフィンするコンセプトアート

また、グラマーを追いかけている間は、通常の戦闘をすることはできないので、

★竜巻に巻き上げられた巨大な瓦礫を『避ける』遊びを主軸にする

★ずっと追いかけるだけではストレスが溜まるので、後半にしっかり戦える場を用意する

この2点が決まりました。

【その4】更にもうひとつアイデアを盛り込めないか?
さて、竜巻の側面をサーフィンさせるシチュエーションが決まったあと、最後のクライマックスはどのように戦わせよう?という話になりました。

★竜巻で上空に巻き上げられたのなら、雲海の上はどうか?

雲海というくらいですから、文字通りグラマーが泳ぐようなダイナミックな表現が可能なはずです。

また、相手が逃げているシーンなので、

『ここまで逃げ切られたらもう終わり』というゴール地点

が見える方が緊張感を高めることが出来ます。
そこで、雲海から連想して『天界への扉』を置くことになりました。

ところがスタッフやディレクターから
「ここまで来る間にグラマーは散々見飽きている。
背景が変わったくらいでは誰も驚かない」

という意見が上がりました。

私も薄々とは感じていましたが、

★何かもうひとつ足りない!

という意見も開発中はよく聞かれることで、ここでアイデアをひねり出せるかどうかもプランナーの腕の見せどころです。

このような場合、

★既にあるもので無理にやりくりしない。新しいネタを追加する。

という考え方で、私は乗り切ってきました。

このボス戦の場合は、グラマー単体の表現、つまり既にあるものでやりくりするのではなく、

★グラマーを三つ子にしてしまう

というアイデアを思いついたのです。

巨大なグラマー3体に囲まれながら並走するシチュエーションを作れたことで、敵陣(天界付近)で戦う危機感と迫力が表現できたのではないかと思います。

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※グラマー戦最後のクライマックスをイメージしたコンセプトアート

さて、この『ベヨネッタ2』には、ここまで書かせていただいたようなアイデアや工夫が、シチュエーションごとに目いっぱい詰め込まれています。

ぜひ一度といわず何度もプレイして、じっくり堪能してみて下さい。