こんにちは。背景担当の大西です。
今回の『ベヨネッタ2』の舞台の中心となる水の都「ノアトゥ-ン」を制作するにあたり、水の都に行って実際に目で見て、肌で感じ、何より思った以上の知識を得ることが出来ました。今回のブログは、取材のロケーションであるベルギーとイタリアの北部について書いたので、短い間ですがお付き合い下さい。
関西国際空港から約12時間でベルギーのブリュッセル国際空港に到着。ベルギーでは水の都『ブルージュ』や『聖母大聖堂』などをロケしたのですが、たまたまベルギー王宮が一般公開されてるのを知り、急きょロケーションを決行しました。
ベルギー王宮で撮影
ゲーム画面
ゲーム中に煌びやかな屋敷のシーンがあり、打って付けのロケーションでした。撮影禁止の場所が多い中、王宮はストロボさえ焚かなければ撮影OK、幸先の良いスタートが切れて良かったです。実際に制作した屋敷は、予定より少しハデになりましたが、良い出来だと思います。インパクトのある場所なので、変化を楽しんで下さい。
右の写真の床にステンドグラスの色が投影されているのが、わかるでしょうか。アンティークグラスは、透明度が高く、太陽光が当たると壁や床まで、色が投影されます。これは、ブルージュの聖母教会で撮影しました。この現象は光が強すぎると白く投影され、光が弱いと投影された光がぼけて色が分かりません。適量の光の強さでないと色が見えないのです。今回のロケで、数多くの教会を見ましたが、この現象が見れたのは、この一回きりでした。この美しさをゲームで表現しようと試みた教会があります。本編の教会は、社内で一番人気の高い場所でした。ゲーム中では、いつでも見れるのが良いですね。聖母教会で撮影
ベルギーからイタリアに移動しました。今回のイタリアロケでは、個人的に重点をおいているポイントが2つありました。
その1つ目が石畳です。下の写真はフィレンツェで撮影した物ですが、厚みのある石で出来ており、水が端に流れるように、道の中央がもりあがってるのが分かると思います。歩道が無い小道だと中央がくぼんでいて、水が中央を流れるようになっています。
『ベヨネッタ2』でも、石畳の路地が数か所出てきます。アクションゲームは戦闘しやすいように見下ろすカメラになるため、地面の画面を占める割合が高くなり、このような石の重厚感やアジのある形状が、非常に重要になってきます。実際に戦闘したら、つまずいたり、ベヨのヒールが石の間に挟まりそうですね。
左:フィレンツェで撮影
右:ゲーム画面
2つ目が屋根瓦です。イタリアの屋根といえば、オレンジ色の瓦ですが、古くなると白くなったり、黒くなったりします。新しく修復されている瓦だけが、オレンジ色なのです。あまり修復がされていない家の屋根は真っ白でした。遠目で見ると、平均化されてオレンジ屋根が並ぶ綺麗な街並みに見えるのです。ヴェネチアのホテルは窓を開けるとすぐ前が屋根で、手で瓦を触る事が出来ました。かなり古い物だと思うのですが、固くしっかりしていました。日本でも石畳風だったりわざと色ムラを付けている洋風瓦がありますが、日本にいると本物の良さが分からなくなり麻痺してしまいそうで、非常に怖いことですね。
イタリアの街は花が多く、建物のテラス部分にも、多くの花が見られます。これは観光地なので、わざとしてるのかと聞いてみた所、花の種類はゼラニウムといって、水やりや手入れをほとんどしなくても、勝手に育つらしいです。だから、みんな植えるらしいです。たしかに、早朝から夜まで街の撮影をしていましたが、水やりをしている人は一度も見かけませんでした。日本に帰って、ゼラニウムを購入して本当かどうか試してみました。気候が暖かい時期は良かったのですが、冬に全滅してしまいました。日本には向かないのかもしれませんね。
ヴェネチアで、おもしろい物を見つけました。扉の取っ手が中央に付いてるのが、分かると思います。聞いてみると古い扉は鍵と取っ手が一体化しておらず、端は鍵がついているので取っ手が付けづらいのだということでした。この2枚の扉だけがそうなのではなく、ヴェネチアのほとんどの扉がそうでした。見るからに開けにくそうですね。
ヴェネチアで撮影
今回、難しかったのは、市民の生活感と川や海との密接な関係を背景で表現することでした。ヴェネチアでは、車が走るような道路がなく、船が車の代わりです。どこからでも船に乗れるように、川沿いには柵がありません。生活に必要な冷蔵庫や洗濯機などの重い物も近くの川まで小型ボートで運んで、そこから台車に乗せて運びます。今回もホテルまでボートで取材の機材やスーツケースを運びましたが、船からの積み下ろしは、実に不便で、陸も小さな段差や石畳で、スーツケースもうまく転がせませんでした。ヴェネチアは、一見優雅に感じられますが、実際に住んでみると不便で生活しにくいかも知れませんね。背景制作においては、いびつな段差や道は味が出しやすく、絵的には、おもしろい絵が制作できたと思います。生活感も実際にヴェネチアで生活している人々を見てゲーム中に表現している所が多々あるので、そういった所も楽しみながらゲームをして頂けるとうれしいです。
取材に行くと知識や情報を得ることが出来るし、色んな物を見ることで表現力の幅も広がります。個人的には毎年、海外に行くようにしています。勉強になりますからね。アジア圏の取材は行ったことがないので、機会があれば行ってみたいですね。
最後まで読んで頂き有難う御座いました。