はじめまして。『ベヨネッタ3』でコンポーザーをしておりました亀山 友希です。

自分にとってのデビュー作となる今作では、サイドチャプターの音楽演出をはじめ、本編のステージ曲や一部ボス曲などの作曲を担当しました。今回は新しいプレイアブルキャラクター「ヴィオラ」の戦闘テーマGH()ST”の作曲者として楽曲解説をしていきます。

まず、GH()STはどの曲のことか、ヴィオラのプレイ映像とともにご覧ください!

 


GH()ST


  • ボーカル:Mikaila Delgadoさん
  • 作詞:Cody Matthew Johnsonさん、Gina Kouyoumdjianさん
  • 作曲 : 亀山 友希(PlatinumGames)

“GH()ST”の楽曲コンセプト


楽曲制作にあたって最初に上がったキーワードはパンクロック。

これはヴィオラのキャラクター性やファッションから連想されたもので、はじめはぴったりだと思ったのですが実際に楽曲制作を始めてみると、パンクロックが持つテンポ感が今作のスタイリッシュなハイスピードアクションについていけなかったり、パンク特有の明るい曲調が今作の雰囲気に合っていなかったりと様々な問題が生じ、結局新たにコンセプトを練り直すことに。

最終的には2000年代のエモ/オルタナティブロックという音楽性に着地しました。

様々なリテイクを重ね完成までに約半年かかったこの曲、実は様々な要因により当初はボーカル曲ではなくインスト曲でした。一時はインストバージョンが実装されゲーム上でも鳴っていたのですが、開発が終盤になるにつれてヴィオラというキャラクターの重要度が高まっていったため、ベヨネッタと同じようにヴィオラも戦闘テーマをボーカル入りにすることに。

いきなりインスト曲をボーカル曲にする事になったわけですが、そのアレンジ作業は必要ありませんでした。というのもインスト曲の段階ですでに、アカペラのボーカル素材を切り貼りし新しいメロディを作る「ボーカルチョップ」という手法を用いて、現在のボーカルメロディの原型が存在していたからです。結果スムーズにボーカルレコーディングに移行することができました。

 


ボーカリスト


今回ボーカルを務めてくださったのはオーストラリアのバンドYours TrulyのボーカリストMikaila Delgadoさん。歪んだギターとハイスピードなドラムが鳴り響くバンドサウンドに負けず、むしろ圧倒するほどのパワフルな歌声の持ち主です。

Yours TrulyボーカリストMikaila Delgadoさん

この曲はテンポが速いため歌うのが難しい曲なのですが、ボーカルをプロデュースしてくれたSteve Knightさんとの素晴らしいコンビネーションのもとさらりと歌い上げ、レコーディングはあっという間に終わりました。当日Steveさんのアイデアで2番の「~ unfinished business」という歌詞の部分のメロディを急遽変更したのですが、その結果とてもクールなメロディに変貌を遂げたのが印象的でした。今ではその部分が個人的にこの曲の中で一番気に入っているポイントです。

 


歌詞


作詞をしてくださったのはCody Matthew JohnsonさんとGina Kouyoumdjianさんのお二方。

歌詞の作成に当たってこちらからは、

ヴィオラの「真っ直ぐでエネルギッシュ」な個性と、「未熟さ”ゆえの荒々しさ」を歌詞に込めていただきたいです。

とお伝えしました。

その結果、ベヨネッタとは違い、まだまだ粗削りなヴィオラの心情を見事に表現した素晴らしい歌詞が出来上がったと思います。

せっかくですので、歌詞制作時に頂いたコメントを一部紹介させていただきます。

「今作品の歌詞には、ティーンの子たちが抱きがちな大人や権力者や社会に対する窮屈な想い、怒りや恐れなどを反映しています。

人生経験が浅い故のその考えは、ご存知のとおり時に彼/彼女たちを自ら追い込む様な形にもなり得ます。

そんな腹の底から叫び出す様な悲痛なまでの巨大な想いを歌に載せている様な、それでいて誰かが耳を傾けても誰も理解してくれない、

という諦めにも似た相反する感情を内包する言葉の数々およびフレーズを選んでみました。

特に今作品にはこの世界に何かとんでもない事が起ころうとしているというメッセージも含まれており、

エッジの効いた、ヴィオラの鬱憤や行き場のない想いを表す様に気持ちを込めて作詞しております」

 


ミックスダウン


“GH()ST”のミックスエンジニアはAndrew Schepsさん。

最初に挙がってきた音源を初めて聞いた時の興奮は今でも忘れられません。不要なものはそぎ落とされ、お互いのパートが邪魔をせずそれぞれが主役として成立している。まさに匠の技という感じでした。名だたるアーティストたちと数々の名盤を世に送り出してきたレジェンドの手によって、この作品は完成に至りました。

 


最後に


今回紹介した方々以外にも、たくさんのミュージシャンに支えられながら完成した本楽曲。この記事を読んでから改めて聴き直してみるとまた違った聴こえ方がするかもしれません。今度は音楽に耳を傾けながら、ぜひもう一度『ベヨネッタ3』プレイしてみてください!

 


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亀山友希
Tomoki Kameyama

2020年にミュージックコンポーザーとしてプラチナゲームズに入社。『BAYONETTA 3』ではコンポーザーを担当。本作品が初参加作品。