「意」を図る

こんにちは。ゲームデザイナーの阿部です。
今日は2年前に僕が行った就職活動についての話をしようかなと思います。

僕がプラチナゲームズにエントリーした当時、プラチナゲームズから提示されたゲームデザイナーの課題は「ゲームの企画書を10点提出する」というものでした。

期限までの時間もあまり無く、闇雲に企画を練っていては企画内容の精度を上げる時間どころか企画書を作成すること自体が間に合いそうにありませんでした。

企画は元となるアイデアが無ければ基本的に始まりません。
ところがこのアイデアって奴はとってもひねくれ者です・・・(だよね?)。
普段の何気ないタイミングでポン!と出てくる癖に、いざアイデアを考えるぞー!と意気込むと、脳の中から中々出てきてくれないことがあります。

そして悩めば悩むほど思考が堂々巡りしてアイデアが出にくくなることもあります。
ですがそんな負のスパイラルにはまっている時間は、前述した通り僕にはありませんでした。

 

▼ アイデアの方向性を決める ▼

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そこで、企画書の元となるアイデアの方向性を決めることにしました。
闇雲にネタを考えてしまうと、ネタに詰まってしまった時に負のスパイラルにはまって、どんどんアイデアが出にくくなってしまうので、まずは狙いを絞ってアイデアを考えることにしました。

次に「じゃあその狙いをどうやって定めるのさ?」となる訳ですが、「そもそも、入りたいゲーム会社に提出する企画書とは一体どんな存在なのか」と考えることで僕なりの答えを見つけることができました。

企画センスをアピールするもの?10個もの企画を作り上げるスケジュール管理をアピールするもの?どれも間違いでは無いと思いましたが、僕はまず第一に「自分がその会社で作っていきたいゲーム」として企画を練ることにしました。

そして「僕が作っていきたいゲーム」という前提が定まったおかげで、練っていくアイデアの方向性も固まり、負のスパイラルに入ることなくアイデアを練り、精査し、ゲーム企画としてまとめていくことができました。

 

▼ 相手に伝える工夫 ▼

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アイデアをゲームの企画として落とし込んだ後は、これを提出用に書類におこしていきます。

当然のことながら、企画書に決まったフォーマットはありません。
僕はどんな企画書にまとめるか考えることにしました。

ゲームの企画書は1回出せばそれで終わり、なんてことは基本的にありません。
企画を練って企画書を作って、それを他の人にプレゼンして、フィードバックをもらって、また企画を練り直して、また企画書を作って…と何回も繰り返していくはずだ、と僕は考えました。

“プラチナゲームズのゲームデザイナーが書く企画書”という設定で考えた場合、今回提出する企画書はその流れの中の「一番最初の企画書」、いわゆる草案ということになるのではないか。
だとしたら、草案として必要な情報こそがプラチナゲームズが僕達の企画書に求めていることなのではないだろうか、と考えました。
そしてその草案に必要な情報とは何なのかを考え抜き、それ以外の要素はこの企画書が承認されてから書く内容であって、今回の企画書に書く内容では無いと僕は判断しました。

方向性を決めた後は、とにかくその草案に必要な情報が相手に確実に伝わるように
本当に必要な情報以外は噛み砕いて文章を削ったり、情報を補完する為に挿絵を作成したりしていきました。
そしてその結果、スケジュールに余裕をもって企画書を仕上げることができました。

 

▼ まとめ ▼

現在、僕の就職活動は無事幕を閉じ、ゲーム作りの日々を忙しく過ごしています。
そしてプラチナゲームズの一員となった今でも方向性や意図をしっかりと定めてから課題に取り組むようにしています。
おかげで効率的に企画立案やステージ調整などを行うことができています。

あとこれは実際にゲーム作りの現場で働き始めてからなのですが、自分が意図をもって課題に取り組むだけではなく、課題に込められた意図を把握することも同じぐらい大切だということを学びました。

例えば、あるシステムの仕様作成を任せられた時などは、
「何故このシステムが存在して、何故必要なのだろう」
と考えることで、そのシステムが達成しなくてはならない目的が明確になり、精度の高い仕様書を作ることができます。

アイデアの打ち合わせをしている時は、相手の意図を把握することで、相手のニーズを把握してより良い代案を提示することもできます。

自分の意図を込めて取り組むことも、相手の意図をくみ取ることも、とても大切なことだと僕は思います。
それらは就活だけではなく実際のゲーム作りの現場においても必ず大きな力になってくれるのだと思います。

まとまりのない文章になってしまったかもしれませんが、
僕の「意図」、少しでも汲み取って頂けたなら幸いです。
それでは。