こんにちは、『マックスアナーキー』プログラマのSAKATAです。
 
今回はプログラマから見た『マックスアナーキー』ということで話をさせていただきたいと思います。
 
さて、この『マックスアナーキー』というゲーム、見ての通りオンライン対戦格闘ゲームで、しかも複数人入り乱れてのバトルロイヤルがコンセプトのゲームです。
 
最初この企画を聞いたとき、
「まあ、最近は光回線も当たり前になってインターネットの環境もずいぶん良くなったし、ネットゲー作るの初めてだけどなんとかなるだろ・・・」
などと思ったものです。
もちろん簡単だとは思ってなかったですが、
「最近はオンライン主体のゲームも増えてきているし、みんなやってるんだからきっとなにかうまくやる方法があるんだろ」
とも、思っていました。
 

“かかってこい”のポーズ

 
しかし、無知、圧倒的無知!
無知とは怖いものです、確かに日本では光回線も普及して通信環境は超優良なんですけど、海外、特にヨーロッパとかって「光回線? なにそれ美味しいの?」状態で、先進国とはいえネットの通信品質があまり良くない国も多いんですよ。
 
しかも光回線にしたって、「光ファイバーで光の速度で通信だぜ、光は1秒間で30万kmも進むんだぜ」とか思っていたのですが、冷静に考えたらあんまり速くないんですよね、光。
 
一般的にゲームのフレームレート(ゲーム画面を1秒間で何回書き換えるか、以下FPSと表記)というのは60FPSか30FPSが主流で、このゲームは30FPS基準で制作しているんですけど、計算上1/30秒で1回分の絵を作る間に、光の速度だと1万kmしか進めないということになり、地球の反対側と通信対戦しようと思ったら、こちらの情報が向こうに届くのに2フレーム、それを受けて処理するのに1フレーム、処理した情報がこちらに返ってくるのがまた2フレーム、つまり最高の通信環境であっても、通信だけで5フレームの通信遅延が発生する訳です。
 
さらに通信の途中でのいろんな機器を通る時間とか、ゲーム機側で実際データを受けて解析して返す時間とか、そもそも通信環境があまり良くない地域だとか、いろいろ考慮すると、日本-ヨーロッパ間での通信対戦で、通信遅延が往復10フレーム(約0.3秒)とか普通にかかって、もっと悪いときももちろん有る・・・って遅い、超遅いよ・・・
 
失意体前屈

 
この『マックスアナーキー』、攻撃、ガード、投げの3要素で構成されている対戦格闘の構造であり、攻撃に対して相手がガードしているか否かによって、ヒットの正否が変わります。当たり前ですね。でもこの当たり前が、ネットゲームの世界では首を絞めることになるのです。
 
つまり、自分と相手の状態がはっきりしないと結果が出ないというシステムに、通信遅延は致命的なのですよ。
1vs1対戦で国内接続のみとか、ルールと環境を限定すれば、ほぼ気にならないレベルでの攻防が表現できると思うのですが、このゲームは最大16人入り乱れての大乱戦で、かつ世界中のユーザーとの対戦を目指していましたので、通信遅延の問題は避けては通れないのです。
 
もちろんある程度の通信遅延は考慮した上でゲームデザインをしていたのですが、接続地域や乱戦状況によっては想定以上の遅延が発生したり、情報が欠損していたり、そもそも相手からの情報が返ってこなかったりなど、問題に対しての発生の確認と解決に途方もない時間が掛かりました。
 
しかも「昨日までちゃんと動いてたのに、なんか今日になってうまく動かなくなった~」
みたいなことが頻発するのです。
 
で、「また通信がらみのバグか~(泣)」と必死に調べた挙げ句、相手側の通信機器の設定の問題だったり・・・
とにかくまあ、ありとあらゆる不具合とか不具合に見えるけど不具合じゃ無いモノとかが出る。
 
 
ほんと泣きそうでしたね、最初の頃は。
 
こんなんでちゃんと完成するのか?
 
もっとネットワークに向いた作りにすべきじゃないのか?
 
いやいや、殴りっぱなし、撃ちっぱなしの大味な一方通行ゲームなら他にあるだろ。
 
そんなの作りたかった訳じゃないじゃん。
 
とかとか・・・
 
※しばらく風景をお楽しみください

 
で、結局うだうだ考えてても答えは出ないし、これが面白いっていうビジョンは最初から有ったわけで、どうせ作るんだったら面白いものにしたいし、腹くくってやるしか無いか、と思うに至り。
 
そう思えるようになってから以降は、ひたすら問題を洗い出し、修正し、それをチェックしてまたなにか問題が出たら修正し、という作業を理想に向けてひたすら繰り返し、改良と動作チェックをする日々を重ねてまいりました。
 
そして、長い長い期間をそういった作業に費やした結果、ようやく納得のいくレベルのものに仕上げることが出来ました。
 
つまり、通信の問題が気にならないようにしつつ対戦格闘のテイストを保ち、複数のプレイヤーが入り乱れてバトルする、理想のオンライン乱戦格闘ゲームが完成したのです(ババーン)。
 
やったね!

 
最後に。
この『マックスアナーキー』というゲーム、制作は超大変でしたが、おかげで熱い駆け引きと爽快感を併せ持った、他に類を見ないネットワーク対戦ゲームに仕上げられました。
対戦好きの人、アクション好きの人、撃つだけシューティング対戦に飽きた人、ネット対戦に興味がある人、そういった人たちに絶対満足していただける出来になったと自信を持ってオススメできる一品ですので、超よろしくお願いします。