女豹に口説かれた少年

 
こんにちは、ゲームデザイナーのティナリ アビビです。名前の可愛い響きを裏切るように、私は坊主頭をしたカナダ人の男です。2年目のゲームデザイナーです。今回は、この仕事についてプラチナゲームズに入る前と現在の考え方の違いについて書きたいと思います。

入社前

小学生の時からゲーム雑誌を読んできましたが、ゲーム作りに興味が湧いて本格的に業界に入ろうと思ったのは高校のころでした。最初はどの会社の誰が私の好きなゲームを作っているのか、あまり気にせずにスクリーンショットを見たり新しいキャラクター紹介を読んだりしてゲームの発売日を待っていただけでしたが、ゲーム業界自体に興味が湧いてからは、有名なゲーム会社やクリエイターも意識するようになりました。
ちょうど『ベヨネッタ』が発売される直前です。愛読していたゲーム系ニュースサイトに投稿された神谷ディレクターのインタビューを読みました。記事と、そこに埋め込まれたビデオから印象に残ったポイントが2つありました:

1.ゲームのビジョンを貫く「ゲームデザイナー」の存在。

17歳の私にはゲームを作りたい意思はあったのですが、自分がゲーム会社でどんな仕事ができるのか、具体的にはわかりませんでした。しかし、神谷さんのインタビューを見て、私はゲームのアートを描くアーティストでもなく、コードを組むプログラマーでもなく、ゲームのアイディアを考える仕事がしたいのだとわかりました。
「アイディアなら私はいくらでもある!」私はゲーム会社で自分のできる仕事を見つけた! と思いました。

2.神谷さんの「女豹のポーズ」http://gamevideos.1up.com/video/id/24787 ※女豹のポーズは1:10から)

カナダ国内にゲーム会社がないわけではありません。むしろ、比較的少ない人口を考えると大手会社が非常に多いです。しかし、「カナダのゲーム会社のディレクターは多分インタビュー中に女豹のポーズなんぞしないだろうな」、「あのような雰囲気の会社で働きたい」と思いました。

それで17歳の時プラチナゲームズに入ろう、と決心しました。話を超短縮バージョンで言うと: 日本語を習い、大分県の大学に入り、5年後入社試験を受けました。

しかし、ゲームデザイナーの役割への理解はまだ曖昧でした。「ゲームのコンセプトを考える。それをチームに伝える。最初のアイディアからブレないようにビジョンを貫き、最終的にプレイヤーを喜ばせるゲームにする」という大まかな意識しかなかったです。

今振り返ると恥ずかしいですが、ゲームデザイナーを目指して最初に書いた企画書は全部テキストでした。ゲームプレイが想像できるようなイメージや世界観が分かるような画像が1枚も入っていませんでした。ゲームデザイナーの役割というものが、まだよくわかっていなかったのだと思います。

では、実際に仕事に就き、ゲームデザイナーの役割に対する考え方はどう変わったのでしょうか?

 

入社後

結論から言うと、「間違っていた」というより、入社する前に想像していた「ゲームデザイナーの役割」は小さな一部だけでした。

もちろん企画書の提出やゲームの大きなコンセプトの提案は求められます。ディレクターの経験のあるスタッフだけではなく、ゲームデザイナー全員に企画書の募集があります* 。こんな時に何よりも緊張し、何よりも自分の想像力を認めてもらうチャンスがあります。ただし、私の仕事内容を全体的に見ると、企画書の作成は10%にも及びません。日々のタスクのほとんどは「ゲームの詳細の管理」です。
* 実はこのブログを書いている今も、1週間後に企画書提出の〆が迫ってきています!

「ゲームの詳細の管理」と書くとあまり面白くなさそうに見えるかもしれないですが、実はすごくやり甲斐のある仕事です。 私の場合、今のプロジェクトで担当している「UI」がそれにあたります。

UIというのは「ユーザーインターフェース」のことです。UIはゲームのビジュアルの一部ですが、通常はゲームの世界の中には存在せず、プレイヤーにゲームの状態についての情報を伝えるものです(例: キャラクターの残り体力を知らせるゲージ等)。もちろん実際にUIのデータを作るのはアーティストで、そのデータをゲームに実装するのはプログラマーですが、まずその前にゲームデザイナーの仕様が必要です。

「ゲージを考えるのって何が面白いの?」と思うかもしれませんが、今までワークシートの値だけだったものが、ある日カラフルなゲージに変わり、プレイヤーの動作によって減ったり増えたりするようになるとすごく刺激的ですよ。ちゃんと考えられた仕様だったらそのゲージによってキャラクターの状態が分かりやすくなって、ゲームがより楽しくなるわけです。月曜日にパラメーターの塊だったものが火曜日に「ゲームっぽくなってきた!」時はUI担当としてやはり嬉しいです。

1年間ぐらいこの仕事をやってきましたが、過ちや後悔したことも山ほどありました。現在携わっているプロジェクトで例を挙げると、メニュー表示を複数の操作方法に対応させる……という開発当初に私が決めた方針があるのですが、後からその方針が自分を何時間悩ませたか計りきれないです。

UIを作る時には統一性が非常に大事です。ある画面では「戻る」ボタンが右下にあって、次の画面では右上にあったら混乱しますよね。複数の操作方法に対応した結果、それ以降の全部の画面のレイアウトや各ボタンのデザインに影響を及ぼしました。「そのボタンはきれいですけど、他の操作では対応できませんね……」といった台詞が私の口癖になるぐらい言わなければならなくなりました。

私の日々がこのような小さなタスクに満たされています。「このロード画面、何を表示すればいい?」とか、「このボタンを押せば見た目はどうなってほしい?」とか、問題が出てきては次々と解決していきます。(まるでゲームみたいに!)
ゲーム作りの冒頭にコンセプトを考えるのがゲームデザイナーの最初の仕事だとすると、このようにゲームを全体的に見て、矛盾がないかとか、ちゃんとまとまっているかどうかを確認するのは我々の最後まで続くタスクと言えます。

高校のころにインタビューを見ていた時は、本当に海を渡ってここまで来られるとは思っていませんでした。UIの仕事はその時には想像もつきませんでしたが、今はこうして実際にゲームの完成に貢献することができて嬉しいです。

女豹のポーズに関しては……あれ以来、2度と見たことがありません。現在、神谷ディレクターは『スケイルバウンド』を開発中ですね。次はどんなポーズを期待できるでしょうか!?

 
tinari_neko
手にコントローラ、膝にネコ。何という幸せ。
 


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