失敗談

みなさま、ご機嫌いかがですか?
日頃から擬音を独特に表現しがちの新人デザイナー舟橋です。大抵、相手に伝わりません。。。
対象が同じでも、人によってその表現方法は千差万別。面白いなぁと思う反面、仕事をしていく上ではネックになることも、極稀に。
今回のフレッシュマンブログのお題は「失敗談」ですが、今日はそんな「形容の仕方の違い」から生じた私の失敗エピソードをお話しします。


基本的に今の私のお仕事は、デザイン画を基に3Dのキャラクタモデルを起こし、質感やモーション用の関節の調整を、それぞれ関連するセクションの方々と相談しつつ行い、最終的にディレクターのチェックを受け、OKの出るモデルになるまで修正を繰り返す、と言った一連の工程です。その作業の分野は比較的多岐に渡っており、考えなければならない事もたくさんありますが、その反面、修正箇所が発生した場合にどの部分がそれに関連するのか、すべて把握できているというメリットはとても大きいです。
大小ありますが、ディレクターチェックの際には9割を超える確率で修正が発生します。決してこれはネガティブに捉える様な事ではなく、意見を参考に更に手を加えていけば確実にモデルは良くなっていきますし、初めそれぞれが思い描く完成像に違いがあるのは至って自然な事でもあります。肝心なのは修正が発生したときに如何に早く効率的に、そして正確にそれを実現するか。先述の通り、1体のキャラクタの造形を1人のモデラーが一貫して行っている環境では、こうした事態にも迅速に対応できます。
……と、散々それらしい能書きを語って、自らハードルを上げてからの、本題。
去年の秋でした。1体のモデルのチェックを受けていたのですが、リテイクにリテイクを重ね、結局OKをもらえたのは丸一月後の事でした。過去には1年以上に渡って修正が加えられるモデルもあったと聞きます。様々な要因が絡んで、何度も修正を余儀なくされる事もあるのでしょう。
しかし、それとは話が別。
問題なのは、当初私が抱えていた仕事は他にもたくさん控えていた事、そして何よりも言い渡された修正が(後からすれば)それほど大掛かりなものではなかったという事です。にも関わらず1ヶ月を費やしてしまいました。先ほど言っていたメリットなど、露ほども体現できていないのです。これにはとても落ち込んだし、焦りで消耗もしました。
何故、それまでに時間を要してしまったのか?
当時はガムシャラで、訳も分からないまま答えを探すのに必至だったので、悩みはするけれど冷静に考える事などできませんでした。時間の経った今になって思えば、その理由はとても簡単な事で、端的に言えば「目先の情報だけに振り回されていた」のだと考えています。この「目先の情報」というのが「形容の仕方」、単語のチョイスと言い換えても良いかも知れません。
兎に角、自ら証明している様に、モノの形容の仕方なんて人それぞれ。視覚的な情報を無理やり言葉で表現する時などは、それを適切に100%の状態で相手伝える事なんて恐らく不可能です。それでも、そうした誤差を少しでも埋めるために、(特に若手の)デザイナーは何度もディレクターやアートディレクターのもとを訪れ、その意向を掴もうと打ち合わせを重ねるのですね。
例に漏れず私も不器用なりにそうしたやり取りを何度もしました。しかし、そこで私は与えられた単語やアドバイスだけに手放しで飛びつき、言われた通りに実行する事を繰り返してしまいます。それは一見とても理解しやすく、けれども表面的でしかない作業です。
例えば「イスの様にして」と言われた場合、他に一切情報がなければ「そうか、棒状のフレームと板の様な面で構成したデザインか」と捉えてしまいそうなものですが、実は「人間工学を踏まえた、『座る』という目的をもったデザイン」を要求されているのかもしれません。それを単に「イス」と言うか「座れるもの」と形容するかは個人の自由。
この食い違い、仕方のない事に思えるかもしれません。が、実はデザインの方向性、更に言えばゲームそのものが目指すヴィジョンをちゃんと理解していれば未然に回避出来る事もあるのです。
昨年の秋、私は与えられた目先の単語やアドバイスのみを追いかけ、ゲーム全体の世界観やバックボーンについては考えが及んでいなかったのだと思います。極めつけには「作ってもらいたいのは△△△じゃなくて×××なんだよ」と言われた翌週に「これじゃあ、△△△としての機能を果たしてない!」なんてリテイクを受けたりもするのですが、これも同じ様に、様々な情報と併せて考え、果たしてディレクターの言いたい「△△△」の意味とは?と考えていれば多少なりともより正解に近付けた筈なのです。
「初めからそう言ってくれれば分かったのに……」そう思わない事も無くはありません。しかし自分はと言うと、果たして必至に理解しようとしていたのか?そう考えると少し自信がないのです。
結局、スケジュールに無い1ヶ月の作業のために、そのモデルに関係する先輩方を待たせてしまったり、抱えられなくなった他の仕事を後輩(アルバイト)に頼み、彼に負担を掛けてしまったのと同時に悔しい気持ちを味わったり、クオリティアップに掛けたかった時間を失ってしまったりと、様々な損失と引き換えに、「多人数で1つのものを作り上げる」という事を少しだけ理解できました。
まったく割に合わない収穫ですが、損の部分はいつか仕事で取り返しにいくのも、新人のあるべき姿でしょう。反省はしていますが、良い失敗だったなぁとも思っています。
ちなみに新人は皆、業務日報をつけ、教育係りの先輩に見ていただいているのですが、なんだか今回の私のブログの記事はその日報の総集編みたくなってしまいました(笑)なんだか反省文みたいで恥ずかしい。。。
それでは、また次回ッ!!