青春時代

滝沢です。

 

みなさんはMIDIFlickというWindows用の作曲ツールをご存知でしょうか?   
8年ほど前に、個人のWEBサイトで配布されていたフリーウェアです。

 

MIDIFlickの仕組みは、とてもシンプルでした。   
テキスト形式で半角アルファベットの文字列を入力すると    
そのアルファベットに対応した音階の音が鳴るというものです。

 

例えば『ねこふんじゃった』の譜面は、MIDIFlick上ではこうなります。

 

 

 

DB/-G/G/DB/-G/G/-DB/-G-/-G-/-F/F/DB/-F/F/DB/-F/F/DB/-F-/-F-/-G/G/   
  –k/k/—-k/k/—–k-/-k-/-l/l/—-l/l/—-l/l/—-l-/-l-/-k/k/    
  g-/—–g-/——g-/-d-/-b-/—–b-/—–b-/—–b-/-d-/-g-/—

 

 

 

アルファベットと音階とは、「a=ド」「b=ド♯」「c=レ」 「d=レ♯」「e=ミ」   
……「l=シ」「A=ド(オクターブ上)」 という風に対応しています。    
また、「-」は発音を伸ばすか、無音のままやり過ごすための空白の記号で    
発音は「/」によって止めることができます。    
「acefhjlA-/」と書いて再生すると「ドレミファソラシド~ッ」と発音されます。    
このルールに基づき、3行に組み合わせて書いたのが『ねこふんじゃった』    
の譜面です。

 

ちなみに、少し音楽的な話をすると、「G」と「k」が縦に並んでいる箇所では   
「ソ♭」と「シ♭」が同時に発音されることで、メジャー(協和)の響きになり    
「F」と「l」の箇所では「ファ」と「シ」のディミニッシュ(不協和)になります。

 

1行ごとに音量や音程(オクターブの上下)や音色(ピアノやギターなど)を   
決めたり、全体的な曲のテンポを変えたりすることができますが    
基本的には、ただ文字列を打ち込むだけのタイピング作業によって音楽を    
作っていきます。    
MIDIFlickの仕組みがどれだけシンプルか、お分かりいただけましたか?

 

 

 

わたくしは中学生の頃、MIDIFlickと出会いました。   
当時は、楽器を練習したり、コードネームなんてものを学んだりする気もなく    
不器用に聴こえたままの音を探り、好きな曲を耳コピして満足していました。

 

ところが間もなく、音階を模倣するだけでは楽しめないようになりました。   
いったい何と何の音を組み合わせれば、目当ての音色を再現できるのか    
どんなエフェクトをかければ、原曲のような聴こえ方になるのかを突き詰める    
ようになり、いつしかMIDIFlickで出来る表現の限界を探り始めました。    
そして、気がつくと自身のオリジナル曲を作るのが趣味になっていたのです。

 

あるときは自分の曲を昼休みの校内放送で流し、またあるときは、恋人に   
自分の曲を押し付けがましくプレゼントしました。もう時効ですので、ええ。

 

高校を卒業するまでの約5年間、わたくしはMIDIFlickを愛用し続けましたが   
専門学校に通い出すと、別のツールを覚えて、それを手放せなくなりました。    
現在、会社ではCubase5という高性能のツールを使用しています。

 

しかしながら、MIDIFlickと過ごした青春時代の経験と、手探りで学んだ   
音づくりの感性は、今でも僕の中に息づいています。    
時折、ニコニコ動画で「MIDIFlick」というタグの付いた映像などを見つけると    
昔の自分が懐かしく思えて、胸がきゅんとします。

 

淡い思い出を胸に秘めながら、それでも、決して振り返ることはありません。   
もはやMIDIFlick.exeをダブルクリックする機会は今後一切ないでしょう。    
なぜなら、MIDIFlickとはわたくしの過去だからです。    
例えるなら、元カノです。要するに、そういうことなのです、ええ。ええ。

One thought on “青春時代

  1. 文字を打つだけで音楽を作れるなんて簡単ですね!
    まぁ楽譜も読めないようじゃ問題外だと思いますけど・・・
    思い出のツールがあるっていいですね。

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