描くより考える人?

はじめまして!
プラチナゲームズの新人グラフィックデザイナー木村です。

入社してもう1年経ちそうなんですが…早いですねぇ…新人歓迎会が懐かしいです笑
さて、今回私が書くのは…自分のセクション、アートワークに関してです。
配属されてから4~5カ月くらいですが、今やっている仕事について書きたいと思います。

では早速

アートワークセクションとは

ゲームのアートワークといわれると主人公キャラやその敵(ボス・ザコ等)のデザイン画を描いてる人たちね!という印象が強く、それ以上のことは知らない方が実は多いのかなと思っているのですが(就職活動時、周りがそうでした。)、実際のアートワークセクションの仕事は、キャラクターだけではなく、ディレクターから与えられる情報をもとにした、これから作り始めるゲームの背景(ステージ)や武器、アイテム…などのビジュアルのデザインからその質感や構造、ギミック、モーション…などのさらに詳細な設定まで!ゲーム内の殆どのデザインに関わっています。

社内に初めて入った時は、ホワイトボードに貼られた背景や人物のラフ段階のバリエーションなどを見て、ここまでたくさん描くのか!と驚いたものです。(ちなみに今仕事場では自分の席から数メートル先に大きなTVが設置されていて、先輩のアートがスライドショーで流されています。日に日に増えていくその様子を毎日すんげぇ…と眺めてます。笑)

セクション内での担当

そんなにたくさんあるけど、アートワークセクションの一人一人が何から何まで全部描くのー?!と思われるでしょうが、基本的にはセクション内部でキャラクター(アイテム含め)と背景で大きく担当を分けて制作をしています。
キャラクターは、主人公含め登場人物やモンスターのビジュアルから性格、衣服、髪型、持ち物、武器、アイテム…などの様々な要素を担当。
背景は、キャラクターたちが住む世界。ステージ全体の雰囲気・大きな印象からランドマークや地形、建物、宝箱やトラップ、カバーポイントに壺や木箱などの壊れ物、床や壁の装飾…その世界にあるものは何でも担当します。
キャラやモンスターはゲームの遊びに大きく関わります。ステージのレベルデザインも同様に遊びに深く関わりますが、特にキャラクターよりも画面に大きく映し出される背景は世界観の説得力を作ります。(背景の担当範囲は広いので、アートワーク担当が主要なデザイン画を制作した後、エンバイロメント(背景)セクションの人がそのデザインをもとにデザインのない部分を補うことはあります。)
ちなみに今自分は背景アセットを中心に担当しています。

仕事の流れ

冒頭で書いたとおり、ディレクターイメージ文章口頭で伝えてもらうところからデザインは始まります。
手にした情報からアイデアのラフを描き始め、複数の案をプレゼンしたうえで、その中からディレクターの考えにはまるものを選択してもらいデザインの方向性を決めていきます。求められるイメージに当てはまらないこともあるのでこの作業は繰り返し行われます。

制作中は、世界観に合っているのか、ユーザーには意図した印象を与えられるのか、コンセプトに合ってるのか、視認性は?…そんなことばかりをずっと考えながらメモするようにラフを描くことが多いです。絵よりコンセプトが大事なので、描いてるより考えてるほうが多いんです。
こんな画になったらかっこいいだろなぁ!と妄想しつつ描いています。

アートはディレクターとチームにこれから作るゲームの世界観や方向性が説明できるコンセプトを持った絵、いわゆる「設計図」を描くことが目的で、完成された綺麗な一枚のイラストレーションを描くのが目的ではないのです。なので詳細が必要になるまでは、ある程度イメージが伝わる範囲で描きます。
ちなみに設計図ということは、出来るだけ早く絵を作らなければ他のセクションの作業にしわ寄せがいってしまうという立場なのでスケジュールは重要。たとえばエンバイロメント(背景)セクションの人がアートをもとにステージを構築し、そこにビジュアルエフェクト(特殊効果)セクションが現象エフェクトを追加し画面が作られていくという流れがあるのですが、デザイン画が遅れることでそれらの作業を止めてしまうことになります…(仮のものを先に作ることはあります)

3DCGにするために

ゲームにアートそのものは出ませんが、3DCGとして立体化されてゲームにでます。
その際にモデラーがどんな質感や色で、どんな立体構造をしているのか把握できないとスムーズなモデリングが出来ません。
なのである程度のラフの段階でOKがでたら、モデラーがその設計図を見ただけで作れるように三面図や質感の詳細も制作してからモデラーに渡します。
半年間の研修で各セクションの魅力とどんなところに苦労するのか把握したので、詳細画の制作はモデリング作業を考慮しながら描くようにしています。
といっても描写しきれない部分もあるので、わからないところや、立体化において不都合なところは相談しつつ解決していますが。
※他にも必要とあればイメージするモーションやエフェクトがどのようなものかラフを制作することもあります。

開発中のゲームに…

モデラーが仮のモデルを作った後に、開発中のゲームに更新され画面上に現れます!
テンションあがる瞬間です!モーションやエフェクトも追加されているので、「うぉ!ゲームに出すとこんな感じになるのかぁ!」「エフェクト付いたらかっけぇ!」とか思いながらモデルをしばらく眺めてしまいます。笑
…が、喜んでる場合ではなく仮のモデルまで出来てもゴールではないので、そこからは検証と修正です。
大きさやプレイに少し影響がありそうな点があればモデラーや背景など担当セクションと相談して修正をし、そのうえでやっと本モデルとして出来あがっていきます。そして他のデザインも同じような作業を繰り返し、徐々にゲーム上に設置されて画面が出来ていきます…

以上がざっくりとした説明ですが、アートワークの仕事の紹介でした。
ゲームのコアに関わるアートワーク。ゲーム内に自分の考えたものがレイアウトされていく喜びと、その分責任も感じる仕事です!

社内にはキャラクターモデラーや背景モデラーにもアートを描く人はいます。そしてアート内の人は背景やキャラクターのモデラー経験者だったりします。
そんな中3DCGの知識は研修までで、いままでの人生でイラストなどを描いてきたわけでもなく、仕事も始まったばかりの自分…ちゃんとしたこと書けてるのかな?!という不安でいっぱいなんですが笑
そんな新人の記事でもなにかの参考になればうれしいです。

最後までご覧頂きありがとうございました。

空いた時間に練習で描いたスケッチをそっと添えて今回は終わりにしようと思います。では!

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