ICHIでございます。前回に引き続き、今回も新人アーティスト座談会をお届けいたします。

ただし! メンバーは総入れ替えとなっており、エンバイロメントアーティスト2名に、コンセプトアーティスト、UIアーティストを加えた4人にお話を伺ってきましたので、前回とはまた違った視点からの体験談が聞けることでしょう。アーティストを目指している方も、そうでない方も、お楽しみいただける内容になっていると思いますので、ぜひ最後までご覧ください。


渡辺:コンセプトアーティストの渡辺です。よろしくお願いします。

– 出身と、学生時代にどんなことをしていたのか教えていただけますか。

渡辺:出身は新潟県。新潟県から東京の美大に入って、プラチナゲームズに。大学ではデザインを勉強していたんですけど、ゲームに関係するような分野ではまったくなくて。あまり人付き合いもできるほうではなかったから、そういう話をできる人が意外と少なくて、多少寂しい思いをしました。

– “デザイン” というのは、どういったジャンルの?

渡辺:……プロダクトデザイン……話さなきゃいけないですか?

一同:そんなに嫌?(笑)

渡辺:恥ずかしいですもん。美大に入って「プロダクトデザインをやります」って言い始めたころから、実はすでに「向いてないかもしれないな」って思い続けながら学び続けていて、結局プロダクトデザイナーにはなれなくて――。なれなかったというか、本当になりたかったのは元々ゲームクリエイターだったのかもしれないけど、ちょっと後ろめたい気持ちがまだ残る、みたいな。

– では、そのあたりの話は後ほどあらためて(笑)。好きなゲームは?

渡辺:好きなゲームは『エースコンバット』シリーズです。ただ、僕がやりたいのはSFとか、フィクションの世界を作り出す仕事だったので。就職先としては、やっぱり世界観とかがイチから作られたゲームが多いプラチナゲームズが良かった。コンセプトアーティストの仕事も多いみたいでしたし。

小俣:エンバイロメントアーティストの小俣と申します。出身は東京で、大学も東京の美術関係の大学で、4年間、デザイン学科でグラフィックを中心に勉強してました。あまり真面目な学生というわけじゃなくて、1~2年のときに取れるだけの単位を取って、3~4年はほとんど大学に行かないで、『CGWORLD』さんとかが開いていた無料のセミナーとか懇親会みたいなのに入り浸ってるような感じでしたね。

大学では何も考えずにデザイン学科へ入ったんですけど、しばらくするうちに “コンセプトアート” とか “映画業界” のほうに興味を持って。初めは全然、ゲーム業界に入る気はなくて、ずっと「映画業界で何かしたいな」みたいな感じで絵を勉強していたんですけど、だんだん、映画だと “かっこいいルックをひたすらつくっていく” だけっていうのが――。それがやりたいことではあったんですけど、ゲームだとかっこいいルックだけじゃなくて、そこに “遊び” っていう要素を足していったりできる。映画だと “ストーリーがあって、それに沿って” っていう感じなんですけど、ゲームだと「プレーヤー1人1人にいろいろ委ねられているところの “大元” をつくれるのがすごい面白いな」、「ゲームのほうがいろいろ冒険ができそうだな」と思って。

それで大学3年の終わりか大学4年ぐらいに「ゲーム業界を目指そう」と思って、いろいろなところのインターンシップを受けにいったりとか、「ゲームにおける “アート” とは何だ?」みたいなことを考え始めた感じです。

– もともとゲームは結構プレイされてたんですか。

小俣:結構、海外のゲーム、特にNaughty DogとかUbisoftとかのゲームが好きで。『The Last of Us』を初めてやったときに、「うわ、なんだこの映画みたいな――でも映画でもなくて面白いな。こういうのを作りたいな」って思ったのがゲーム業界を目指したきっかけですね。もともと「エンターテインメントに関する職業に就きたいな」というのは高校のころからずっと思っていて。高校から大学2年ぐらいまではずっとバンドをやってました。

秋山:かっこいい。バンドマンから急に。

小俣:別にバンドマン――ミュージシャンになりたいっていう気はなくて、その “ライブ感” みたいな、「演奏してみんなが盛り上がってる、楽しい!」というのがすごい好きで。

– パートは何を?

小俣:ベースをやってました。“陰で支えてる” みたいなのがかっこいいなと思って。

– 仲間に飢えていた渡辺さんとは対照的な(笑)

小俣:でも私はわりと、「グループでチーム組んで何かやろうぜ」っていうよりかは、1人でいろんなところへ勉強しに、個人的に突撃してるタイプでしたね。

渡辺:僕ももっと突撃できたかもな……。

– 渡辺さんは、ゲームはもともとよく遊んでいた?

渡辺:僕はゲーム、すごい好きでした。小中学校、ずっとゲームをやってました。ただ、絵を描くようになってからは「絵を描いているとゲームをやる時間ねえな」と。大学4年ぐらいに “いい作品を作るには、ゲームをやる時間を惜しんで作り続けなければいけない” みたいな現実に直面して、「ゲームをやってる暇ねえわ」って。

– 美大に入るときには “ゲーム業界に行こう” っていう気はなかったんですね。

渡辺:そうですね。正直、確かに僕、絵には自信ありましたけど、でも僕より絵がうまい人なんてそれこそ星の数ほどいるし。映画、ゲーム、アニメ、そういったところは何よりも “絵のうまさ”、知識とかよりもとにかく “絵のうまさが重要” で、「僕みたいな、雑学ばかり蓄えているような人間が “絵だけで勝負” みたいなところに行っても相手にされないだろう」と考えて。それで「やっぱプロダクトデザインだよな」って思いながらやってましたね。

小俣:私、その考え、少し違う気がするぞ(笑)

秋山:うちもむしろ反対やと思うな。

小俣:絵がうまいのは、プレゼンのときに有利な武器にはなるけど、やっぱ “どれだけ知識の引き出しを持っているか” のほうが、私は強いと思うな。

渡辺:いや、実際そうなのよ。俺は当時の意識として、「もっと絵うまくないと駄目だよな」って思っていて――でも実際プラチナゲームズに入ってコンセプトアートの仕事をやってみたら、「絵がうまいだけじゃしょうがないよね」っていう(笑)。

– “当時は” そう思っていた、ということですね。

渡辺:そう。「絵がもっとうまくないと、そっちの業界では通用しないぞ」みたいな。

– それで美大ではプロダクトデザインでいこうと思って。

渡辺:そう。

– でも途中でやっぱりゲームのほうに。

渡辺:そう。現実世界を相手に物を作ってもあまり楽しく思えてなかったんで、そんなので面接とか行っても、何もしゃべれないんですよ。「もうプロダクトデザインやっても、たぶんあんまり楽しくないんだろうな」って思いながらプロダクトデザイン系の就活を続けて、結局どこにも行けなくて。

– 本当に就活の途中だったんですね。

渡辺:でも実際、就活に失敗して大学院に行ったんで、就職浪人みたいな感じでしたよね。非常に幸運なことに、親もお金を出してくれたから、そこで時間をもらって考えて。――いや、幸運でしたよ。本当に幸運に恵まれた人生を歩んでます、僕は。親に心の中で毎日、謝りながら生きてるから。「お父さん、お母さん、大学院まで行ってしまってごめんなさい」と。

– それで「やっぱりゲームだな」と。

渡辺:その決断をできてからは僕、結構充実したと思います。

秋山:自分を見つめ直す期間だったんですね。

曽山:良かったね。

小俣:大事、大事。

– 曽山さんは。

曽山:エンバイロメントアーティストの曽山です。出身は鹿児島です。基本的に操作が分かりやすいゲームが本当に好きなんで、『戦国無双』シリーズとかはもうめちゃくちゃ好きです。逆に海外のゲームとかは、もう操作するボタンが多すぎて分からないので、結構大変で。プラチナゲームズに入社したら、洋ゲーを好きな人が多すぎるんで、最近は海外のゲームもするようになりました。

– 面白いのありました?

曽山:最近『アサシン クリード』シリーズを始めて、「暗殺楽しい~」と思いながら(笑)――今までそういうゲームをまったくしてこなかったんで。『戦国無双』シリーズとかは必然的に自分から前に出て戦っていくゲームだったんですけど、『アサシン クリード』シリーズは “隠れないといけない” っていうところに新しい面白さを感じて、最近はそれをひたすらやってます。

– 学生時代はどんなことを。

曽山:学生時代は一応、今と同じくエンバイロメントを。もともとは “キャラクターデザイナー” になりたくて――。でも先生とか周りの話を聞いていると、「キャラクターデザイナーは志望者が多すぎて競争率が高いから、別のところを狙ったほうがいいんじゃないか」って。そういう考えで選ぶのもどうかと思ったんですけど、でも実際に背景制作をやってみたら「 “自分がつくりたい世界を自由につくれる” っていうのがすごくいいな」と思ったので、ゲームのエンバイロメントアーティストの道を選びました。「映像制作でもいいじゃん」という考え方もあるとは思うんですけど、映像は “決まったカットでしか世界をつくれない” ので、そこに縛られたくないと思って、ゲーム会社にしました。

– 学校はどういう学校でした?

曽山:専門学校です。音楽とかデザインとか、ゲームと混合してる学校だったんですけど、自分はゲームの学科で、ひたすら背景を毎日作ってて。1年生のときはとにかく土曜日も日曜日も学校に来て作ってたりするぐらい、すごい好きでしたね。

在学中最後の作品。UE4で制作したので歩けます!(曽山)

– じゃあ学校に入ろうとしたときから、ゲーム業界に行こうと。

曽山:――思ってたんですけど、親には言えなかったです。というか、自分がまず “ゲーム禁止家庭” 。

小俣:分かる(笑)

秋山:一緒、一緒! 分かる? 一緒(笑)

曽山:小学校のときに “夜中に布団かぶってゲームしてしまった罪” を背負って(笑)。――それで目が悪くなってしまって、親から「ゲーム禁止!」っていう流れで――「ゲーム会社に行きたい」とは言えなかったです。

– でも、専門学校進学のときには「願書」とか出すわけじゃないですか。

曽山:そうですね(笑)。やっぱ途中から親も、もう気付いてたらしくて。

– 「ゲーム学科」、って書いてあるわけじゃないですか(笑)

一同:(笑)

曽山:そうですよね(笑)。その時点で普通に自分も気付くべきだったんですけど、そのときも何も言われなくて。でもそこはゲーム学科だったんですけど、“イラストも描く学科” で、もともと自分は絵もすごい好きだったので、たぶん親はそれで許してくれてたのかな? と。――でも最近、普通に家で妹がNintendo Switchで遊んでて、「あれ? ゲーム禁止じゃなくなってる」っていう(笑)――そういうことになってたんで、「あ、自分は許されていたんだ」って気付いて、やっと今ここに、堂々と「ゲーム会社に入りました」って親に報告できた、っていう感じです。

– 曽山さんのおかげで解禁されたのかもしれないですね。――秋山さんは。

秋山:ユーザーインターフェース(UI)アーティストをやっています、秋山と申します。出身は岡山県で、大学は京都にある芸大に行っていました。そこから今、大阪に来てます。もともと私が「ゲームクリエイターになりたいな」と思ったのは小学生のときで、イラストを描くことは好きだったけど、そもそも「ゲームクリエイターってどういう仕事をしているんだろう?」ということが高校を卒業するまで結局分かんなくって。じゃあ「なんでもできる学校にいこう」と思って、CGもVFXもやるし、音楽も作るし、映像もやるし、みたいな学科に行って――そこでいろいろ学んだ結果、「自分にはグラフィックが向いてるな」と。

その頃ちょうど大学の先生に「実は “UIデザイン” っていうのがあるんだけど」みたいな話を聞いて興味を持ったのがきっかけで、UIアーティストを志願しました。好きなゲームは、『ファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル』がすごく好きで、もう大好き。

曽山:新作(リマスター)出る!

秋山:うん、そう! めっちゃうれしい(笑)

曽山:やるしかないね。

秋山:やるしかない。――でも親は、ゲームに対して厳しくて。年に3つ買ってもらえたら御の字ぐらい。だから『ポケットモンスター』シリーズと『ファイナルファンタジー』シリーズしかずっとやってこなくて。高校のときはデザイン系で制作に忙しくて、寝る時間もなかったから、大学3回生になるまで6年間まったくゲームに触ってこなかったです。そこで「ゲーム業界を目指すならゲームをやらなきゃ」っていうことに気が付いて(笑)。友達と「あんなゲームあるよ、こんなゲームあるよ、新しいの出たよ」って交換しながらいろいろやりました。

学生時代の制作物。宇宙人ハンドリアンがじゃんけんをするという架空のゲームUIを制作しました。『ホーム』が家ではなくUFOになっているのがポイントです(秋山)

– なるほど。皆さんの学生時代までのお話を伺いましたが、就活ではどんな取り組みをされました?

渡辺:インターンシップとポートフォリオですよね。それが全て。

曽山:インターンシップ、私はほぼ行ったことなかった。

渡辺:いや…… “インターンシップ行かない” とか、舐めプ*か?
*「舐めたプレイ」の略。主に対戦ゲームなどで手を抜くなどして余裕をかますこと。

一同:(笑)

秋山:私の周りでも “企業研究大事” って言われてたけど、何を研究していいのか分からなかったから、「とりあえずインターンシップで企業の人に顔を覚えてもらって仲良くなろう」と思って。

曽山:なるほどね~。

小俣:大事、大事。

– インターンシップはどういったところに?

渡辺:行けるところは全て。一番最初に行ったインターンシップはスマートフォンアプリ制作の会社だったんですけど、そこで僕、プログラマー・プランナー・デザイナーの「3人タッグでゲームを作る」っていうのを初めて体験して、「やっぱ楽しいよな」って。大学でも “みんなで共同して物を作る” っていうのは楽しいよね、っていうのがずっとあったんで。そのときの体験から「ゲーム業界でも通用するんじゃん?」って思って――まあ通用しなくっても、そこからはもう進むしかなかったと思うんですけど――。

それでほかの会社のインターンシップにもバンバン行って。年が明けたころからはコンソールのゲーム会社のインターンシップもぼちぼち始まってきたので、プラチナゲームズも含め、行けるところは全部応募して。で、面接が4月ごろから始まって……という感じでしたね。

イラストはゲーム業界を目指し始めてから本格的に描き始めて、飛行機はその主な題材です(渡辺)

– 他の方は?

秋山:行きました。

曽山:実はプラチナゲームズのインターンシップだけ行きました。

– あ、みんなプラチナゲームズのインターンシップには参加されてた?

小俣:そうです。

– どうでした? プラチナゲームズのインターンシップは。

小俣:ほかのところと違って、すごくワイワイ「うわ、楽しい~!」みたいな感じで行えたインターンシップだったかなと思います。

秋山:ほかの企業は “お客さま接待” 的なところが多かったけど、こっちはむしろフレンドリー感が感じられて、そこで急に好感度がグッ、って上がりました。

小俣:確かに “社員の人と気軽に話せる” っていうのはたぶんこの会社ぐらいだった。

秋山:相談とかをしたときに、真剣に一緒に考えてくれるのはプラチナゲームズしかなかったから。結局ここに決めた。

– 就活作品、ポートフォリオはどうしてました?

秋山:3回生ぐらいからポートフォリオ作ってて、でも見栄えが悪かったんで、中身は変えないまま何回も作り替えながら、「新しく作り替えてきました、どうですか」って見せにいってアドバイスもらってました。

– 作品自体は変えずに、ですか。

秋山:変えてません。

– レイアウトを。

秋山:レイアウトを変えたりページの順番を変えたりだとか、“どうやったら自分の「ユーザーインターフェイスにいきたい!」っていう気持ちが伝わるかな?” ということを考える意味でもいい経験になりました。

– あえてレイアウトだけを変えていたところに、こだわりがあった?

秋山:そうです。作品自体を作り始めると――それはまた “違う” 気がして。学生生活の過程で新しく作ったものは入れていきましたけど、“就活のために作品を作るのは違う” かな、って感じでした。

渡辺:ポートフォリオのレイアウト、構成次第で見た人が受ける印象も変わってくるから。

– “レイアウトが重要だ”というのはどういったところから?

秋山:“情報の伝え方” が大事かなと思ってて―― 作品のタイトルもそうだけど、“どんなツールを使ったのか”、“どの程度時間を掛けたのか” っていうのと、“作品のどんなところを見てほしいのか”。作品を載せるときにたまに制作過程とかを載せてる方がいるんですけど、過程よりも出来上がった作品のほうが見たいし―― “作品と、必要最低限の情報” かな。あと、ページの構成とかも含んだ「ポートフォリオ自体もまた作品」で、それも自分自身を伝える「名刺がさらに詳しくなったバージョン」って思うから、そこを作り込む必要があるな、と思ってやりました。

– 渡辺さん、レイアウトや構成については。

渡辺:そうですね。“何を伝えたいか” とか――業界的にもプロダクトデザインとはちょっと違うところがあったんで、その辺は苦労しました。でも、だいたい同じだと思います。プロダクトデザインのころに、そういうポートフォリオの全体の構成については何回も話を聞いていて。――僕はあんまり有能じゃなかったんで時間かかったんですけど、なんか “作曲するみたいに作る” って言って。

秋山:作曲?

曽山:深いね。

渡辺:ポートフォリオに1個の作品を載せるじゃないですか。その1個の作品をプレゼンテーションするために、その作品をだんだん――説明とか前置きとかで盛り上げていって、最終成果物で、ドン、って一番盛り上がって、それを作品ごとに繰り返す。そんな感じで、本当、プレゼンテーションなんで、「伝わるようにするにはどうすればいいのか」っていうのはたくさん悩みましたね。

– 小俣さんはいかがですか。

小俣:いや、なんか今の渡辺くんの意見にすごい同意で。自分の「もう1個の履歴書」みたいな――。むしろこっちが「本ちゃん(本番)の履歴書」。

秋山:そうだね。

小俣:送ったポートフォリオを見てもらってるときは、自分がその場に居てプレゼンはできないんで、“いかにその1枚の中でその絵をプレゼンしていくか”、とか。あと、応募者も “何千人” みたいな感じでいっぱいいるはずだし、机の上に大量のポートフォリオを適当にパッ、ってページ開いて、それをサーッ、って通って見ながら、「あ、この子いいね、この子いいね、この子いいね」みたいに選ばれると思うんで、そのときに “いかにその人の目に入るか” 、“どのページを見ても目に入るか” みたいなのをすごい考えたりとか。

――あとは、めくっていくときに、“どこに一番自分の自信があるものを持っていくか”、とか、“飽きさせないポートフォリオはどうしたらいいのか”、みたいなのはすごい気を使って作ってた……んですけど、私このプラチナゲームズ向けのポートフォリオ、全然間に合わなくて、すごい雑なものを送ったんで(笑)

一同:(笑)

曽山:ぜひとも見たいな(笑)

秋山:でもこの場にいるっていうことは、作品に力があったから――。

曽山:そうそう(笑)。そこはね。

渡辺:「どのページを見ても目に付くように」とかいうのをマジに受け取ると、本当、全てのページにみっちりと詰め込みたくなるんだけど、でもそうすると結局、ちょっとおしゃれじゃなくなっちゃって、魅力がなくなるから。結局、作品そのもののクオリティを上げることが大事で。作品のクオリティが高ければ、今言ったように「あ、こいつ絵うまいじゃん」みたいに目に留まるから。やっぱり作品のクオリティが大事。

– レイアウトは起承転結を付けていく上で大事だけど、“どこを開いても目に入る” というのは作品自体のクオリティが大事だと。

渡辺:そうですね。結局、作品がうまければ目に留まるし、それが一番だと思います。“本当に自分の自信のあるものだけを載せる” ことで、それはできるんじゃないかと。

– 小俣さんは、送る会社に合わせてポートフォリオを作っていたんですか。

小俣:そうです。結構、会社に合わせて「こういうの好きだろ」みたいな(笑)対応とか。ちなみに私がよく言われたのは、「君、本っ当、これ好きなんだね」みたいな感じで――もう自分がとにかく好きなもの、「私はこれが好きだ、これが描きたいんだ!」みたいなものを詰めて送ってた、っていう感じです。――で、何回か見てもらってる会社には、自分が好きなものも入れておくんですけど、「いや、こういうのも描けますよ?」みたいなのもちょっと添える、みたいな(笑)

一同:(笑)

曽山:あるある。あるわ~(笑)

秋山:味を変える(笑)

曽山:確かに。

– それを相手の会社のカラーに合わせてチョイスしたり。

小俣:ちょっとチョイスしたりとか。でも基本的には “自分が一番好きなものを一番濃く” してましたね。

– ちなみにプラチナゲームズに対してはどういうコンセプトで?

小俣:インターンシップとか、そのあとの作品アドバイス会でもいろいろ見てもらったりしていたので、なるべく “一番直近で描いた自信のある作品” を数点送った、っていう感じでしたね。

– すでに何度か見てもらってるから、最新のアップデートを見てもらおうと。

小俣:そうですね。

学生時代に描いて、ポートフォリオにも収録したアート。描いている絵の雰囲気にあった音楽をかけながら作業してます。特に、ポスト・クラシカルが熱いです(小俣)

– 曽山さんはいかがですか。

曽山:自分も結構、小俣さんと一緒で、“好きなものを詰め込む” みたいな。作品も “クオリティを見られる” っていうのもあるとは思うんですけど―― “自分が何が好きで、何を作りたいのか” すら分からなくて、そこで落ちる人が結構いて、いくらうまくても「何に対して情熱を持ってやってくれるのか、分からない」とかで採ってもらえない人も多い、ってよく聞いてたので。作品のクオリティうんぬんはもう “自信あるものを載っけるんだから当たり前” で、それプラス、自分の「ここ好きだぜ」をぎゅっとポートフォリオに詰めて。それで結構、「君、ここが好きで、すげえ楽しく作ったでしょ」みたいなことを言われることが多かったんで、自分はそういう作り方をしてました。

– こだわっている部分は、やっぱり “自分の好きなものをいかに伝えるか” っていうことですか。

曽山:そうですね。もちろんそれでレイアウトの工夫とかも必要だな、と思います。いくら作品がうまくても、「レイアウトが見づらい」とか「いつの時代だ」みたいな感じだと見てもらえないのかなと。

– ありがとうございます。それで志望する会社ですが、皆さんどうやって選んでいました?

渡辺:SFができる会社。本当、“全部自分で作れる会社”、みたいな。

– “全部” というのは。

渡辺:世界観からそこに登場するアセットやら何やら全部自分らで考えて、“現実から何も持ってくるものがない作品” を作ってる会社がいいな、って思って。あと、アクションゲームが好きで。SFでもファンタジーでも、とりあえずアクションゲームを作っていて「僕が好きなものを作れそうだから、プラチナゲームズに来た」っていう感じです。

– 「やれることがいっぱいありそうだぞ」と。

渡辺:そうそう。

小俣:私はまず、あまりスマートフォンのゲームが好きではないので、「コンソール向けのゲームを作ってる会社がいい」っていうのと、あとはいわゆる日本の “萌えキャラ” みたいなのがあんまり――見るのは好きなんですけど、それを仕事にして絵を描いたりだとか、何か作るっていうのは嫌だったんで――その(萌えではない)中間か、完全にもうフォトリアルなものを作ってる会社がいい、っていうのと。

あと一番大きかったのは、“チャレンジをさせてくれる会社” 。やっぱり大きい会社になってきたりすると、「いろいろリスクがあるから――」みたいな感じでいろんなことをやらせてもらえなかったりとかすると思うんですけど、私は「新しいことをやったりとか、若手でもガツガツいけるような会社が絶対いいな」と。“会社の歯車の1個としてひたすら同じものを生産” みたいなことはしたくないな、って思ったので、そうじゃない会社をいろいろ探して受けてましたね。

曽山:会社、特になんも考えてなかったなぁ……。意図してたわけではないんですけど、自分のアートスタイルが “ちょっとリアル寄り” になってたので、「自分のアートスタイルはこの会社の作風と合うかな?」という視点で選んでました。プラチナゲームズは第一印象が結構、「普通の会社だとコレ許されないだろう」っていうことを平然とやってる(笑)、“その企画を許してくれる会社だ”、っていうのがゲームとかを見てて、すごい感じ取れたので、「そういうとこ、すごい好きだな」っていうのが一番の理由だったんですけど。

秋山:私は自己紹介で言ったように『ファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル』が大好きで、その好きな作品を “超えたい” と思って。それで、新人の言い分にも理解を示して色々やらせてもらえるような、さっき小俣さんが言ったような「 “若手でもガツガツいける会社“ ってどこだろう」と考えたら、プラチナゲームズだな、って。

– そのときのプラチナゲームズに対する印象は。

秋山:フェチに対するこだわりがすごい(笑)

– フェチ。

秋山:そこもすごい好感度が高くて。ベヨネッタのあのお尻のラインだとか、2Bのお尻も大好きだし。「あ、分かる、このフェチポイント分かる~!」っていうところがすごく多かったのも印象的でした。

曽山:お尻の話しかしてない(笑)

小俣:プラチナゲームズ作品ってニッチな部分が多くて、それも日本的でニッチな部分が結構、世界でも受け入れられて、「すごい」って言われてて。「ちゃんとこういうニッチなものも伝わるんだ、受け入れてもらえるんだ。そういうものを作れるこの会社、すごいな」って、『NieR:Automata』が出たときに、すごく(笑)

秋山:「プラチナゲームズに決まったよ~」って友達に報告したら、「え、お尻の会社!?」って言われて(笑)。印象が。

– 否定できない(笑)。渡辺さん、そのときのプラチナゲームズの印象は。

渡辺:「大きさのわりに立派なもん作ってんじゃん」って感じで。

小俣&曽山&秋山:上から~(笑)

渡辺:正直な話、コンセプトアーティストになりたくて、「このぐらいの大きさの会社だったら僕でもなれるんじゃ?」っていうのが、決してなかったわけじゃあない。それにあんまり大会社だと「僕、ここでやっていけるのかな」とか思わないこともなかっただろうし。――基本的に僕は「まだまだダメだな」と思ってやってるんですけどね。

– この規模感ならいろいろやらせてもらえる。

渡辺:そう、この規模感なら。いや、さすがに僕もちょっと言うのが非常に憚られる言葉使いますけど、いい踏み台になりそうだなって。

秋山:……なんて言った?

曽山:もう1回どうぞ。

秋山:聞いてなかった。

渡辺:「いい踏み台になる。」

一同:(笑)

渡辺:――これちょっと掲載できないね。これちょっと、校正入りますね、この言葉。

曽山:逆に踏まれるほうになるよ(笑)。次の新人の踏み台になる。

渡辺:あ、僕が踏み台になったらどうしよう。来年、僕よりやばいやつが入ってきたら、うれしいけど、つらいと思う……。

– 大型新人が入ってきたら(笑)

渡辺:大型新人が入ってくるのは、僕はすごくうれしい。「あ、こんなやついるんだ」って思えるし。僕、才能は好きなんで。でもつらいことになるでしょうね(笑)

– 曽山さんは、いかがでしたか。プラチナゲームズを知った当初の印象は。

曽山:もう本当に、すごい “暗い会社” だなって。

– “暗い” ?

曽山:作ってるゲームもなんか暗いイメージ。

秋山:あ、“ダークファンタジー” 的な意味で?

曽山:あ、そうそう。

秋山:(笑)。びっくりした。なんかネガティブ、陰キャ的なものかと。

曽山:作風がダーク寄り……血みどろとかじゃないですけど、そういう意味で、最初は「自分には合わないな」と思ってましたね。SFとかも多かったけど、自分はそこまでSF好きでもなかったんで。でもそのあとに『NieR:Automata』とかが発表されて。ファンタジー寄りの作品も作れるんだったら、ちょこっとSFとかもやってみたい気持ちはあったので、「どっちも作れるんだったら、もうこの会社に行くしかない」っていうことで、自分は決めました。そこでちゃんと印象が変わりました。

– ほかの皆さんもインターンシップや会社説明会に参加して、プラチナゲームズの印象は変わりました?

秋山:むしろ “インターンシップに行って、やっとプラチナゲームズの名前を知った” っていう感じでした。

曽山:確かに。

秋山:『ベヨネッタ』は前から知ってたんですけど――ショートヘア*のベヨが、担任の先生にそっくりだったんで(笑)
*『ベヨネッタ2』登場時。

渡辺:担任の先生すごいな!(笑)

秋山:体型もベヨで、本当に。

小俣:めっちゃセクシー(笑)

秋山:それで「プラチナゲームズって何作ってるんだろう――ああ、ベヨの開発やってたんだ」っていうことで知って、インターンシップに行って、「あ、いい人ばっかりじゃん」って好感度が上がって。

曽山:全体的なゲーム会社の印象として、“そこまで作品とか見てくれてない” というか――以前も見せたんだけど、「初めて見る作品だね」みたいなことを(笑)言われる会社も普通にあったんですけど、プラチナゲームズだけは本当に、学校へ来てくださったときに作品を見せて、「へえ、いいね」みたいな会話をして、その後インターンシップに行ったときにも新しいの見せたら、「あ、新しいの入ってるじゃん」みたいな感じで “覚えててくれた” っていうのが――。そこで「すごくいい会社だな」っていう印象に変わりました。

小俣:私も秋山さんと一緒で、プラチナゲームズの作ってるゲームは知ってたんですけど、“パブリッシャー側の作ったゲーム” だとずっと思ってて。本当にゲーム業界の知識とかなかったんで、「パブリッシャーとデベロッパーって何?*」みたいなところも(笑)
*パブリッシャーはゲームの開発資金を出して、流通や宣伝を行い、デベロッパーはパブリッシャーからゲームの開発を請け負う。パブリッシャーがデベロッパーを兼ねた自社開発の作品も多く、また開発をデベロッパーに委託していてもデベロッパーの名前があまり表に出ない作品も多いため、一般には開発元がどこであるかまでは認識されにくい。ちなみにプラチナゲームズはデベロッパー。

– 『ベヨネッタ』はセガだし、『NieR:Automata』はスクウェア・エニックスだし――。

小俣:――そう思ってたんですけど、インターンシップに行って「あ、この会社が! そういうことだったんだ~」みたいな感じでプラチナゲームズを知りましたね。大きく印象が変わったことは特になくて、“すごい楽しい会社”(笑)。上司の人ともコミュニケーションがすごく取りやすくて、わりとセクション間を越えたりだとか、プロジェクトを越えて気軽に質問しにいけたりとか、他愛のない話とか――意外とそこから得られる情報って大きかったりするんで(笑)――いい雰囲気で、話しやすいです。

– 渡辺さんは。

渡辺:あまりよく覚えていないですけど、インターンシップで交通費を出してくれたのはうれしかったですね。出してくれないところとかも、あったんで。

秋山:そこ?(笑)。

曽山:いや、でも結構あるよ。出してくれないところ。

渡辺:あと、最近まで信じられなかったけど、『VANQUISH』、『METAL GEAR RISING REVENGEANCE』……いろんなゲーム作ってますけど、「本当にこんな小さい会社があれを作ったのか?」みたいな。

秋山:渡辺くんさっきからいろいろけなしまくるよね(笑)

渡辺:でも正直な話、まったく信じられなかった。僕が『METAL GEAR RISING REVENGEANCE』を初めてプレイしたときは「プラチナゲームズ、そんな大層にロゴを載っけるほど何かやってんの?」みたいな感じだったけど、「本当に、本当に作ってたんだ、この会社が――!」って(笑)

– ちなみにプラチナゲームズを受験して、なにか印象に残ったことはありますか?

小俣:1次面接のとき、結構ほかの会社だと「では自己紹介をどうぞ」とか履歴書見ながら言われて、ガチガチだったんですけど、プラチナゲームズでは普通に「最近調子どう?」という感じで(笑)本当すごい。インターンシップとかで何回かお会いする機会があったんで、そのおかげかもしれないんですけど、フランクな感じで “リラックスして話せた” っていうのが、「この会社、珍しいな」と。

渡辺:インターンシップでゲームエンジンに触らせてもらえたのはうれしかったですね。あれは結構大きかった。

秋山:確かに。感動した。

渡辺:ほかの会社でもエンジンを触らせてくれたところはありましたけどね。でもこれはうれしかった。

小俣:確かに、1日であそこまでいろいろ触らせてもらえるの、なかなかなかったですね。1日だとやっぱり座学みたいな感じで――最後にポートフォリオを見せ合う、みたいな流れがだいたいどこの会社でも多かったので。1日であれだけアーティスト系全部のセクション、実際に触らせてもらって、作って、実機に出して、「おお~、楽しい!」みたいなのは、この会社ぐらいだった感じです。

秋山:面接に行ったときに、入室したら「よろしくお願いします」って言うじゃないですか。私の場合、「あ、お久しぶりです」っていう言葉から始まったんで、そこでもう心はしっかりつかまれて(笑)。後半も20分ぐらい時間が余って、「ラーメンどこ行きました?」みたいな話をしたりとか――めっちゃフランクな面接だったな、っていう印象です。

– 入社してからはどうでした? 大阪に来てみて。

渡辺:いや、大阪は非常に住みよいと思います。非常に住みよい。ただ、展示会が東京に比べて非常に少ないのは……でも京都は近いから……。

曽山:分かる。分かる。

渡辺:来週も京都に行きますよ。

曽山:いいね。

渡辺:1人で早朝に行って、お寺の境内に入って、ひたすら歩いて、正午には帰る、みたいな。先週から始めた習慣なんですけど。

秋山:まだ習慣じゃない(笑)。3カ月続いてから言ってよ。

– 先週。――まだ1回しか行っていない。

一同:(笑)

小俣:これで三日坊主だったら笑う(笑)

渡辺:いや、違う違う。今週末は本当に――先週、この日曜日に行ったときは、7時ぐらいに家を出て正午に帰ってきた感じだったけど、「これは素晴らしい」と。雨上がりの木漏れ日差し込む山の中をひたすら歩いて、高山寺に行ったんですけど。

小俣:いいぞ(拍手)

渡辺:ありがとう。高山寺に行って、まあ台風の被害*で奥には行けなかったんだけど――でもずっとひたすら歩いて――写真もたくさん撮って。
*この座談会が実施されたのは2018年秋。

– 京都に行きやすいのがいい。

渡辺:そう。京都に行きやすくて、淀川もあって、梅田も便利だし、いろいろあるし。

小俣:新人とか学生とかお金のあんまりない人には、すごい住みやすい。ご飯も高くないのにおいしいお店がいっぱいあったりして、いいな、って思ったんですけど――やっぱだんだん、“展示会が少ない” とか、勉強会とか、東京だと「クリエイター同士で集まりましょうよ」みたいなの、結構頻繁にやってるんですけど、関西はあんまりないな、みたいな。そこは最近、少し不満点(笑)

渡辺:ビッグサイトも遠い……やっぱり東京に住むしかないのかな、と思ってしまうこともないこともない。

小俣:京都が近くて500円ぐらいで行けるのは強い。

渡辺:そう。京都に行かなければ、大阪に住んでる意味の――多少は失われている。

– 多少は(笑)。ありがとうございます。曽山さんはいかがです?

曽山:いや、逆に2人とも「わがままかよ~!」って思うぐらい――九州在住の人にとっては、まずビッグサイトなんて夢のまた夢だから(笑)。イベント全然ないっていうけど、こっち来てすごい毎日のようにイベントとかあって、逆に自分はすごい幸せです。

梅田スカイビルの広場では、四季折々のイベントも。

秋山:私は京都にいたときから月1回ぐらいのペースで大阪に来てたんですけど、来てみたら、京都よりも交通の便がすごく良くて、隣の県に行こうと思えば簡単に高速道路もあるし、電車もあるし、バスもあるし、いろんな手段であちこち行けるのはすごく便利だなと思います。あとさっき言ってたように、近くのグランフロント大阪なんかでたまにイベントもあるし、ゲームの勉強会みたいなのも――たまにですけど、歩いて10分もしないところにあるんだ、っていうのはすごく大きいなと思います。

小俣:確かに車がなくても全然生活しやすいっていうのはすごくいいなと思いました。自転車さえあればどこへでも行ける、みたいな。

(後編につづく)


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