キービジュアルはデスクの本。中央のファイルから右側は未読の子たちです。はよ読みきらねば……。

今回のフレッシュマンブログを担当します。喜多です。
(前回のブログ:限界集落から来た男による必勝就職術!!

そろそろ新年度ですね。いかがですか。今年は年始に “Unreal Engineを覚える”という目標を個人的に立てたのですが、もう3ヶ月経ちそうです。おかしい。

余談はさておき、今回はアニメーション担当アーティストとして1年働いてきたなかで、どのように仕事を進めていたのかを紹介していこうかなと思います。また、デベロッパー(開発会社)の一員として仕事をしていて、最初の頃は色々な聞きなれない専門の用語の意味がよくわからなかったりということもあったので、なるべく噛み砕いて書いていければと思います。

○3Dアニメーター(モーションデザイナー)は何をしている人なのか
簡単に言えば、ゲーム内に登場するキャラクター、モノが動くようにする人です。プレイヤーやお店の店員のようなNPC、敵キャラクターなど。他にも背景(エンバイロメント)の方に頼まれてステージギミック(扉の開閉や地形の変化など)のアニメーションを作ることもあります。

僕の主な担当範囲は敵キャラクターの制作なのですが、具体的な流れは以下のような感じ。図では省略していますが、このサイクル自体の最初と最後にゲーム全体を統括しているディレクターによるチェックが入ります。

重要なのは、“必要な要素”“狙った遊び”という部分。コンセプトを元に、どんなキャラでプレイヤーにどのような体験をさせたいのか、必要な要素を見極めて作業をします。

今回は敵作成を例に挙げて説明をします。

 ○キャラ名 :ヒト型ネズミ
  タイプ  :位置取り遊びタイプ
  コンセプト:鬱陶しい攻撃をしてくる、やられ役。悪戯っ子。
        弱点は特にないが、耐久力が低いのですぐ倒せる。
        ※序盤に登場する敵なので、チュートリアルとして
         状態異常攻撃を入れ込みたい。

例えば、ゲームデザイナーの方からこのくらいのオーダーがあった場合、僕は大体「キャラクターの性格」「やってほしいこと」「やってほしくないこと」を追加で確認を取りながら作っていくことが多いです。どんなキャラでプレイヤーにどのような体験をさせたいのか、必要な要素を見極めるために重要なやり取りだと思います。

「鬱陶しい」「悪戯っ子」という部分からキャラクター性を拾い上げたり、「位置取り遊び」「やられ役」「すぐ倒せる」「序盤」あたりの単語からは、鬱陶しいとはいっても脅威度は抑えないといけないな、など、やってほしくないことも拾えたりするので、事前に勘違いの無いようにゲームデザイナーの方とコミュニケーションを図っておきます。

そして、そこで方針が決まったら、あとはどんな行動をさせようか考えていきます。普段は近接戦闘主体だけど、プレイヤーから攻撃を食らったら後ろに逃げさせてみようかな、とか、「位置取り遊び」「鬱陶しい」「状態異常攻撃」あたりの要素を絡めて、小範囲の毒液エリアを発生させる毒液袋を投げさせてみようかな、などとコンセプトに合った表現方法を考えて、重要度の高いものから実装を進めていくことが多いです。

ちなみに僕は過去に安易に足し算で行動を追加したり、自分の首を締めるようなアイデアを出したりして苦労した覚えがあります。単純な足し算をしていては要らない行動を作ってしまうこともありますし、前述の通り「どんなキャラでプレイヤーにどのような体験をさせたいのか、必要な要素を見極めて」いなければ、作るものがぼやっとしてきてしまいます。

特にこの部分のイテレーション(反復)をいかに効果的に進めていけるか?という点において、アニメーターもプログラマーも共に「ゲームデザイナー」としての性質を持って仕事をすることが欠かせず、それだけにバトルに対しての責任意識やこだわりを持って仕事にあたるようにしています。(勿論その性質はキャラクターモデラー、エンバイロメントなどにも!)

「プレイヤーと敵とのバトル」という小さいサイクルを作るときにも、ゲーム全体のコンセプトに沿っているかどうか、遊びのコンセプトに対してはどうか、世界観のコンセプトに対してはどうか、プレイヤーと敵のコアとなる駆け引きはどうかなど、大小様々な見方が存在しており、いつもいつでも悩む部分ではあるのですが、だからこそ他セクションとも連携を取りつつ、ゲーム全体のデザインと、バトルという小さい単位のデザインを見ていく必要があると、実際に働いてみて感じていますね。特にバトルを制作する際にはコンセプトへの理解とともに、必要な要素、柱は何なのかをしっかりと位置づけて作業に当たることが重要だと僕は考えました。

そして行き詰まってきたときにこそ自分で体を動かしてアニメーションを確かめたり、参考になるような資料を見直して方向性を修正したりするなど、どうしたら面白いかな~と試行錯誤するうちに少しずつキャラクター性が際立ってくるのは、アニメーターをやる上での楽しみだったりします。1年間アニメーション担当のアーティストとして過ごしてきたなかで一番身近に進歩の実感を得やすかった部分ですね。

最後に、実はこんな記事よりも参考になる先輩のCEDEC講演の際の記事があるので、アニメーションを作る方や企画する方はご一読いただければと思います。
アクションゲーム・アニメーションの極意! -制作環境とこだわりについて- ※講演資料はこちらから見ることができます(会員登録が必要です)

アニメーターらしい写真がほしいとオーダーを貰ったので、緩急と大胆さをイメージした一枚にしてみました。左に微妙に見えているザバスのプロテインが良いアクセントだと思います。





kita喜多純太 Junta Kita
2017年入社。北海道の利尻島出身アーティスト。主な担当はアニメーション。好物は奈良漬で趣味は多数。マラソンからコミケまで。

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